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100円から始める異世界グループ経営  作者: ゆーぽん
第1章
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第33話

はぁ。やっちまった。

振り下ろされたナイフに反応して護身術をお見舞いしてしまった。

完全に気絶してるよ。

まぁ、予定とは大幅に違うが、とにかく話も聞きたいし、本拠地に連れて帰ろう。


なんか、気絶している子を運ぶって、幼女誘拐みたいで嫌だな。しかし、起きられてここで暴れられたらそれはそれで面倒くさいしな。


そう思って何気なく抱き上げ、ついでに心眼で彼女を見た。


…….この子、もしかすると、相当な掘り出し物かもしれない。


マチリアセリーヌ 7歳 女 天職:”歌手”


メゴールの録音魔法が完成したら、新たな魔道具としてCD制作を始めようと思っていたんだが、これで芸能にも手を広げられる。

 


俺がマチリアを抱えて急いで本拠地に戻ると、レストランはもうオープンしていた。


ガンゾ、ランチも始めたのか。お弁当もあるのに。

客も当然のように列ができるほど入っていて、オーナーとしては素晴らしい、の一言だが、これはあんまり働き過ぎて体を壊さないように注意しないといけないかもな。


というか、この館こんなに大きいのに裏口がないんだった。

今度また依頼しないとな。

気絶した幼女を抱えてこの行列の中を通ったら絶対怪しいやつだが、、背に腹はかえられないか。


列をかき分けてなんとか子供を抱えたまま入り口から入る。店内は忙しそうに動き回る従業員と客の話し声で賑っていた。


当然店の中に入ると、従業員数人と目が合い、子供に対しての疑問の視線を向けられるが、彼らも忙しさからか何か言ってくる様子はない。

俺は素早く厨房に逃げ込む。


「おい、ガンゾ、忙しいところ悪いが、ちょっとセリナを借りても平気か?」

マチリアが起きた時俺がいて、また騒がれると大変だからな

天職的に、マチリアを任せるならセリナだろう。


「ええ、構いませんよ、おかげさまで人は足りてます。それにしてもそうしたんですか、そんなに慌てて。って、景様、なんですかその子供は!」


「実は拾ったんだ」


「いや、拾ったって、そんな犬猫みたいに。親はどうしたんですか」


「孤児みたいだ。しかも、親をゲーデルに連れて行かれていたと言っていた。それで、ナイフを持って、お金を出せと言ってきてな」


「それでうちで面倒を見ようと」


「ああ。すまないな。勝手なことをして。」


「ここのボスはあなたですから。どうなろうと我々はあなたについていきますよ。それに、こんな小さな子供を見捨てる人でなしについてきた覚えもありません」

ガンゾは少し笑ってそう言う


「じゃあ、セリナを借りるぞ。この子が起きた時に俺だけよりは女の人がいた方がいいだろうから」


「ええ。どうぞ。しかし、なぜ、その子寝ているんですか?」


うっ。ナイフを向けられて、つい少女を本気でのしたとは言えない。

そんなのまんま人でなしじゃないか


「いや、うん。た、多分しばらく何も食べてなかったから疲れて倒れたんじゃないか?」


「それは大変だ!なら、その子の分のご飯も作っておきますね。しばらく何も食べていないのなら、普通のものは良くないでしょうし」

よかった、なんとか誤魔化せたようだ。


「あ、ああ。助かるよ。しかし、平気なのか?忙しだろう。この客の量は」

ウエイターはまだ足りているだろうが、シェフはガンゾ一人だ。この人数の料理を一人で作るのは相当大変なはず。


「昼はメニューを4種に絞っていますから、そこまでですね。慣れれば楽なもんですよ」

そう言いながら、ガンゾは肉を焼きつつ、野菜を炒めながら、魚を焼き、同時にチャーハンも作っている。


….慣れって何だろう

「へ、へぇ。すごいな。そのお前の後ろにあるのは何なんだ?」


「あ。これは、夜の分の下準備です。もうほとんど終わりましたけど。今日はいい食材が入りましたから、気合い入りましたよ」

一体そんなものいつ作ったんだ。というかよくみると皿洗いもやっている。どうしたら一人でそんな事が出来るんだ。

いや、もうガンゾに突っ込むのはやめよう。こういう天然の天才な奴には突っ込むだけ無駄なんだ。



俺は一旦マチリアを厨房の椅子に座らせて、セリナを呼んだ

「何のご用でしょうか?」

相変わらずの無愛想でそう言われる。


「今日はもう仕事を抜けていい。他に任せたいことがある」


俺はセリナにガンゾに話したのと同じようにマチリアの事を説明した。


「わかりました。つまり彼女が起きたら景様がお帰りになられるまで面倒を見ておけばよろしいのですね?」


「ああ。上の階の部屋を使って構わないから、寝かせておいていい。ただもしかしたら起きたら最初暴れるかもしれないから、一応長い時間目を離さないように気をつけてな」


「なぜですか?」


「いや、ほら、お腹が空いて倒れたわけだし、、い、いきなりで混乱するかもしれないだろ?」


「でも、ここで面倒みるとは話したんですよね?」


「う、うん、まぁ、うちで雇うみたいな話はしたよ?ただ完全な合意に至ったわけじゃないというか、、、」


「まさか、強引に連れてきたんですか?」


「いや、致し方なかったと言いますか、その、彼女がナイフを振り回してまして、危ないなぁなんて思って、ちょっと身を守ったと言うか、、」


「で、殴って気絶させたと?」


「いや、下手に避けても彼女も危なくなるかなって」


「何歳相手だと思ってるんですか。反省してください。子供を殴るなんて人で無しですか」


「ご、ごめんなさい」

先生だ。この人先生だよ。

悪いことしても見透かされてる感じ。小学校の先生を思い出して逆らえる気がしない。

天職ってすごい。


「私に言ってどうするんですか。あとでちゃんとこの子に謝ってください」

でも、こうしてると、無表情なのに、態度とか声音から優しさが伝わってくると言うか、根が良い人なのがわかるな。


「わ、わかりました」


マチリアをセリナに任せ、その分空いたセリナの分の穴をフォローしようとしたのだが、天職が接客系の人間の集まりだけあって、1日目にして完全に連携ができ上がっていて、俺が入ることで逆にそれを乱すことになってしまい、ものの十数分で御役御免に。


このままここにいても仕方ないし、マクベス商会に手付け金と500人を回収しに行くか。


はぁ。それにしてもあそこまで足手まといだと落ち込むな。いや、自信があったとかそう言うわけではないんだが、それなりには使い物になると思っていたのに。


そもそも回転率が異様なんだ。客の大半が冒険者で、そもそもの食べるスピードも早い上に、昼だから、パッっとかき込んで仕事に出ようって感じの人間が多い。ガンゾもそれに合わせてすごいスピードで作るので、客が平均で15分くらいほどしか店に留まらないのだ。それなのに店の外の列は一向に短くならないので、テーブルのセットに料理の配膳、片付けで全く休みがない。


いや、経営的な観点から言えば、まさに理想とまで言えるが、これはちょっとオーバー気味な稼働率だ。

これはあいつらの給料も弾まないといけないな。


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