第28話
「景様、大変です!ウィリス商会のクロム・ウィリス様がお見えになっています。....って、シーナ!?それにセリナも!景様、こ、これは、どうなって」
かなり焦った様子で、ドアを開けて飛び出してきて、さらにシーナにセリナを発見して軽いパニックになっているガンゾ。
というか、こいつ今、ウィリス商会のクロムといったか?
おいおい、一体全体どういう事なんだ。今ちょうど序列3位と会ってきたばかりなんだがな。今度は序列4位、白金級最高位商会の商会長とは。今日は大物ばかりじゃないか。
「すまない、ガンゾ、詳しい話は後でするが、ひとまず、マクベス商会で、サキア人5000人を買った。それでクロムは、今どこにいる?」
「二階の応接室にお通して、夕食がまだという事でしたので、お料理をお出ししました。レストラン用の材料はなかったので、メニューとは違うものですが。おそらくはもうそろそろお食事も終わる頃だと思います」
なるほど。俺もいつ帰るか分からなかったからな。俺たち用の材料でその場で料理を出したのか。半端なものを出したらヤバイだろうが、ガンゾならきっと何とかしているだろう。そこは問題ない。良くやってくれた。
「助かった。ありがとう。それと、彼らも知ってはいるが、お前も俺たちの目的を一応説明しておいてくれ。彼らは明日からお前の店でウエイターとして働くことになる」
「わかりました。簡単に仕事の説明もしておきます」
さて、情報のおさらいだ。
確かウィリス商会は、主なのは倉庫業で、確か序列7位のホイール商会と提携していて、特に食品の流通などを仕切っていたはずだ。
とすると、おそらくはアイテムボックスか。
ホイール商会と、ウィリス商会にはいずれ向かうつもりだったのだが、そっちから来るとは。
まぁこちらとしては都合がいいが。
しかし、それだけなら、商会長本人が来るのは少々おかしいか。なら何か他にも目的があると思った方が良さそうだ。
もし、オーラが白ならそこまで警戒する必要もないだろうが、まだ心眼の力も自分のものとなって日が浅い、それにまだまだ第一段階。完璧とはいかないだろう。気は抜けない。
応接室のドアをノックして中に入る。
奥の椅子に座っていたその男は、汚れ、シワひとつない白い服を身に纏い、俺が入ってきたのを見て、にこりと笑って言う。
「待っていましたよ。佐々木景殿。しかし、いや、実にガンゾくんの料理は美味しいですね。今日のレストランの繁盛ぶりも頷けると言うものです。まるで、未来の料理を食べているような格の違いでした。これでは他のお店では話にならないでしょう。さすがは天才と謳われたサキア元宮廷料理長といったところですね」
な、こいつ、今、ガンゾの事を、サキア元宮廷料理長、と言った。
な、なんで知っている。ガンゾは冒険者ギルド以外では人間時の顔すら晒していないんだぞ。いくら宣伝で宮廷料理人といったとはいえ、サキアとは一言も言ってない。ギルド関係者でもせいぜいサザリアさんくらいしか知らないはずだ。
くそ、ガンゾの知名度はここまで広かったのか?迂闊だった。ソーマは亜人差別がある。ガンゾが亜人だとバレれば店の運営にも関わってくるかもしれない。今それをされたら、5,000人買うのに使った白金貨50枚なんて到底払えない。それにガンゾは亜人の姿でゲーテルの前に飛び出した所を多くの人間に見られている。俺たちの目的がバレる恐れもある。
まずいな。だが、幸いなことにオーラは白だ。
とにかくここは焦らず、相手の出方を伺おう。
「どうもありがとうございます。クロム様にそう言ってもらえるとは、ガンゾも光栄でしょう。我々もウィリス商会様にはこちらからご挨拶をと思っておったのですが、まさか、クロム様が直々に我々のような新米商会にお越しくださるとは。それで、本日はどんなご用でしょうか?」
「なに、難しい話ではないのです、ただ私達の仲間になって欲しいと言いに来たんですよ。正確にいうなら金級に上がった際に私達の派閥に入って頂きたい。もちろん入って下さるというなら、相応のメリットはお約束します」
派閥、か。なるほど、そんなものがあるのか。金級、という事はおそらくギルド長決め絡みか。調べておくべきだった。やはり圧倒的に情報が足りなすぎる。
「なるほど、そういうことですか。しかし、相応のメリットとは、一体どんなメリットをくださると?」
「アイテムボックス大とやらを定期的にそれもかなりの数うちとホイールで買うことを約束しましょう。他の商品に関しても私のコネがきく商会には全て口利きいたします。もちろんアイテムボックスも含めて。そしてさらに、白金貨25枚、これを無利子でお貸ししましょう。これはうちの商会ではなく、派閥の長、ディズリーレからにはなりますが。これはあなた方の目的にもかなりの手助けになるのでは?」
俺達の目的だと?まさか、ガンゾからばれたっていうのか?ありえない、さすがに早すぎる。ハッタリだ。
くそ。クロムが何をどれくらい掴んでるのか全くわからないから下手な事は言えない。
「確かに、我々の目標、王国全土への店舗進出には近づきますね。しかしそこまでの好条件、さすがにこちらにメリットがありすぎるように感じますが」
「はは。すごい。ガンゾくんの正体、さらに君たちの狙いがばれているかもしれないと内心焦っているのに、全く表に出さないどころか、私を分析しようとしている。ここまでメリットを提示する理由ですか?簡単ですよ。今いったこともそうですが、全く名前も聞いたことのない新米商会で、貴族の子息というわけでもないのに、短期間でこれだけのレストランの繁盛具合に洗濯機、食洗機、アイテムボックスといった、革新的な商品を発明している。さらに年齢は私の半分ほどに見えるというのに、一級の経営手腕、交渉術を持っていると思われる。明らかにあなたは異常だ。敵に回せば必ず痛い目に合うでしょう」
な...俺の焦りを読んだ?
いや、これはハッタリだ。俺は焦りを顔には絶対出してない。相手も全てを掴みかねているんだ。
「申し訳ありません、狙いというのが何の話かは存じ上げませんが、
そこまで、私を買ってくださっているとは本当に光栄です。しかし、小さいながらも私も商会長、派閥入りという大きな決断をすぐ下す事は出来ません。少しお時間をいただけますか?」
しかし、そこから、クロムの雰囲気が変わった。
「ふ。合格です。私でなければ、あるいは騙し通せていたかもしれませんね。あなたなら、真に私達の仲間、いや救世主、神の迷い他人となってくれるかもしれない」
何の話だ?
「ど、どういう」
俺はそう聞くが、クロムは続ける
「あなた達の目的はサキア人全員の解放でしょう。私達の目的に協力してください。サキア人の全解放もそこに繋がります。先ほどまでのはあなたへのテストも兼ねていましたが、言った事は全て本当です。もちろん白金貨25枚の話もね」
なるほど、言い切った。完全に確証があるのか。しかしこうなってくると、おそらく本当に目的は俺を派閥に入れる事が目的で間違いなさそうだ。それなら、彼らのことは信用しても良さそうか?
しかし、これだけは聞いておかなければ。
「クロム様達の目的とは一体何なんでしょうか?」
「聞いたなら、あなたには選択肢はありません。必ず私達と共に来てもらいます。先に言っておきますが、危険も伴います」
白金貨25枚の援助に方々への口利き、さらにこの情報力に話力。サキアの事を知った上で、目的も一致していると言われたら、敵に回す理由がない。そもそも、弱みを握られているという状況で敵に回せない。
俺は頷く。
しかし、この選択から俺の人生は大きく変わっていくことになる。
「私達の目的はこの国の革命。言い換えるなら、現国王、ゲーデル・ソーマの排斥です」
クロムははっきりとそう言った....




