第24話
ついに、昼を迎え、レストランSASAKIがオープン。朝よりも人が集まり、当初の予想の斜め上をいく人気だった。
朝の騒ぎもそうだが、本当にレストランの人気が高まっていて、俺がウエイターとして入っても人が全く足りない。
これは到底ガンゾ一人で切り盛りさせるのは無理だ。
すぐにでも人を二、三人雇わなければ。
完全に俺の計算ミスだ。
こうなったのには二つ理由があった。
まず一つは単純にガンゾの料理が美味しすぎること。俺が中世の文化レベルの所に現代の食をぶつけた時の衝撃を甘く見ていた。
もう一つはアイテムボックスによる冒険者の生存率、以来成功率の上昇だ。冒険者がアイテムや、予備の武器などもろもろをほぼ無限といえるくらいに持ち込めるようになったおかげで、怪我をすることなく、かつ依頼を完璧に素早くこなすようになり、余ったお金を食などに回せるようになっていたのだ。
この二つのせい、というか、おかげで、200人は余裕入るはずのレストランのテーブルは埋め尽くされ、外にはさらに同じくらいの量が長蛇の列をなすという異常事態に。
その異常事態にまたもやサザリアさんが応援に駆けつけてくれ、さらに、その他にもギルドスタッフを集めてくれてなんとか回ったが、1日が終わった時には1週間分を見越して買い込んだはずの食材が底をついた。
客が一度夕方に切れ、同時に食材もほぼ切れていたので、早めに店を閉めて、俺はとにかくウエイター探しと、食材探しに奔走した。サザリアさん含むギルドのスタッフは明日もお手伝いしますと言ってくれたが、流石に報酬がまかないだけで他のとこの社員を何日も働かせたら悪すぎる。
そうして俺は奴隷商館の前にやって来ていた。商業ギルドでも斡旋しているらしいが、サキア人の事もあるし、明日からもなるとこちらしか無い。さらに給料制よりも、一回買ってしまえば生活環境さえ整えればいい奴隷の方が安く済む。もちろん佐々木グループの一員となるわけだから、本当の奴隷のように扱うことは絶対にしないが。
しかし、この奴隷商館、マクベス商会というのだが実はこの商会が国に3つしかない黒級商会の一つなのだ。商業ギルドには級とさらに順位というものがありそれによるとマクベス商会は3位。つまりは黒級では最下位に当たる訳なのだが、それでも4位の商会と比べると大きな差がある。
なんで俺がそんな事を知っているかというと、この数日間売り込みと付与魔法の生産の他に黒級を含め上位の商会の情報を収集していたのだ。1年でマクベス商会も含めて黒級を超えなければいけない訳だからな。
しかし、このマクベス商会、一般に奴隷を販売するだけでなく戦争に傭兵の斡旋のような事をしていて、黒い噂が絶えない。今のところ大した情報は得られていがあのサキア征服戦争も1位の商会とマクベス商会が噛んでいるという話もある。実際、戦争でサキアの人間は多くが奴隷となってしまった訳だし、傭兵業にも利益があっただろう。
そんな訳で今回は探りをいれるという意味合いもある。
俺は若干緊張しつつ建物に入る。さすがの広さだ。うちの洋館と同じか少し大きいくらいはある。
入るとすぐに受付があって、番号札を渡された。どうやら部屋で担当者に欲しい奴隷の概要を伝えて、その条件にあったものを紹介されるという形式のようだ。
そうこうしてるうちに俺も部屋に案内される。そして中には担当者らしき男が立っていた。清潔感のある服装にメガネをつけていて英国の老紳士というイメージがピッタリの男だ。
「どうも、こんばんは。本日は当商会にお越しいただきありがとうございます。まずはおかけください。」
男の笑顔に促されるまま俺は椅子に座る。が、次の瞬間、俺はその笑顔の裏に気付いた。とても物腰柔らかく接してくる男に一瞬油断しかけたが、男のまとうオーラは紛れもなく黒だった。
「私、この商会の商会主をしておりますマクベス・マドールと申します」
なるほど、こいつが、序列第3位黒級のマクベス・マドールその人だった訳か。しかしこのオーラ、やはり噂は確かだったということか。
にしてもとんだ狸だ。見た目も話し方も紳士的、心眼がなければ一瞬で見抜くのは難しかっただろう。こういう人間が一番タチが悪い。
しかし黒級のオーナーが直々に対応してくるとは予想外だったな。
「どうも。まさか、マクベス様ご本人が担当してくださるとは、驚きです。今日は明日からでも働ける奴隷を探していまして、できれば、接客業用の奴隷をお願いしたいのですが」
「それはもちろん。噂の冒険者に大人気のレストランSASAKIのオーナー、さらにアイテムボックス、洗濯機、食洗機など、画期的な商品を開発された新進気鋭の佐々木様が来られたとなれば、私が出る他ありませんでしょう?」
マクベスはニコニコと言う。
な、なめていた。予想以上に耳が早い。
流石に今黒級に目をつけられるのはまずいな。
余計な詮索は今日の所はやめておくか。
「私には少し過大評価すぎる気がいたしますが、マクベス様にそう言っていただけるとは光栄ですね。それにしてもまだ数日しか経っていないのにさすがの耳の速さだ」
「いえいえ、私の商会は黒級といってもその中では最下位。耳の速さくらいが取り柄なんですよ。それと、接客業ができる奴隷でしたね。何名か見繕ってお持ちしますよ」
そういって、マクベスは部屋から出て行き、戻って来た時には8人の女の奴隷を連れていた。
「接客ができるであろう人間の中から優秀でかつ美人なものを選んでおきました。冒険者相手となれば特に容姿は重要かと思いまして。しかもこの中には元王宮仕えだったものもおりますよ。先の戦争でサキア人の奴隷が増えましたので」
きた。サキア人やはりいたか。聞く手間が省けたな
「なるほど。ちなみにこの商会にはどれくらいサキア人奴隷がいるのでしょうか?」
「佐々木様、サキア人に興味がおありでしたか。そうですね、王国全土合わせると5000人ほどの在庫でしょうか。この王都では535名おりますよ。何名か買われますか?リストをご用意いたしますよ」
5000。だいたい全奴隷の四分の1しかいないじゃないか。
他はもう売られたのか?バラバラに売られていたら解放は一気に難しくなるぞ。とにかく残りは全部買うか。
いや、全部買うといったら流石に怪しまれるか?
あれだけ耳が早いんだ、目的がバレてしまうかも知れない。俺の取引したとこともコネがあるんだろう。敵にまわれば潰される可能性だってある。目立つのは避けるのが最善か?
目をつぶって悩む。
思い出すのは少女の後ろ姿
どうするかなんて決まってるな….
目の前に救える5000人がいるんだ。
今度こそ手を伸ばさずにどうするって言うんだ。
「その5000人すべてください」
俺は意を決してそう言った。




