第23話
扉が開くのを今か今かと待っていた冒険者達が雪崩のように飛び込んできて、あっという間にレストランの入り口は冒険者でいっぱいになった。
さらに俺たちが持つお弁当を見つけるやいなや争奪戦が勃発。
結局人だかりがさらに人を呼んでギルドに持って行く前に店の入り口で完売。
なんとか、まだ開店準備ができていない事を伝えて、店から人を追い出す出すことに成功したが、本当に朝からどっと疲れが出た。
サザリアさんも相当疲れている。
しかし、一番の問題は、ドアを開け放った張本人が、馬車の時間があるので、とか言って、短距離転移で逃げた事だ。
メゴールは優秀だが、基本は研究家肌なので、接客業などには向いていない。さらに俺と話したりするときは普通だが、そもそもが社交的なタイプではない。絶対対応が嫌で逃げただけだ。
帰ってきたら覚えてとけよ。
とにかくなんとか冒険者を捌き終えた俺はサザリアさんが取りに来たアイテムボックスの在庫を渡した。本来ならこれだけで済むはずだったのに。朝でもうすでに1日分の仕事をした気分だ。
しかしまぁ、頑張って作りためていた甲斐もあってこの前と同じ量を渡す事ができた。しかも少し経って売れ行きが落ち着くことも考慮した上で、相当大きな変化がない限り、大体10日に一回この量をという事で正式に決まった。こちらとしてはありがたいものの、こちらにいい条件過ぎる。リスクはギルド側が全部背負う形だ。サザリアさん曰く、ギルドマスターの冒険者の為にできるだけいつでも手に取れるようにしたい、という意向からこうなったらしい。
相当感動してくれたらしい。
いい人過ぎて流石に罪悪感を感じる。
うん。サキア人を解放したら、絶対何かしらで冒険者の為に貢献しよう。
しかし、今の所、定期的に利益が出るのはこのアイテムボックスのみだ。現段階でも洗濯機もかなり収入源にはなっているが、毎月決まった額が入るのとは安定感が違う。商業ギルドの査定にもおそらくは影響してくるだろう。
今の所は全て完璧に行ってるな。
というか、今日こそはガンゾにサキア人の事を聞かなければ。奴隷であるならお金でなんとかなるとは思うが、具体的にどれくらいかがわからない。そもそも人口すら聞いてない。もちろん何万人だろうと必ず救ってみせるが。
昨日までに納品用の付与魔法は全て済ませてある、さっきの事もあるし、ガンゾも初日は相当忙しくなるだろう。店を手伝いながら話すか。
厨房に行くと、ガンゾが忙しそうに料理の下準備をしていた。料理に関しては俺が出る幕はほとんどないので、その他の開店準備をしていると、サザリアさんが冒険者の騒ぎのお詫びと言って手伝いに戻っきてくれた。そのおかげで昼前には余裕で全ての準備が終了。
しかし、毎日下準備に加えてこの準備をガンゾ一人でやるのは不可能ではないだろうが、正直負担もあるだろうし、非効率だ。このレストランの人気も早朝であれなら相当なものになるだろう。少なくともウエイターを一人か二人雇わないといけないかもしれないな。
そんな事を考えていると、ガンゾの下準備も終わり、厨房から出てくる。そして、その手には高級店にも全く引けを取らないだろう豪華さのステーキ。
「景様もサザリアさんもわざわざお手伝いさせてしまって申し訳ありません、これはお礼として。お客様第一号記念のスペシャルステーキです」
どうやらガンゾは忙しい中わざわざ俺たちにお昼を別に作ってくれたようだ。俺はともかく、サザリアさんは店には直接的に関係しないのに手伝ってくれたわけだ。お礼をするのは当然だろうが、こういう気配りが当然のようにしっかり出来るのが一流の証拠だろう。腕だけじゃない、やはり宮廷料理人は伊達じゃないな。
ステーキを一口、口に入れた瞬間肉の味が口一杯に広がる。肉もかなりの柔らかさだ。これは毎日でも食べられるな。
....本来ならこのままステーキを味わう事に集中したいところだが、開店まで時間もない。
サキアの話をしないとな。
俺は食べる手をやむなく一旦止め
「ガンゾ、俺はお前にまだ聞いてないことがあった。サキアの事だ。だいたいこれまでのお前の口ぶりでソーマほど大きい国ではないのはわかった。が、実際どれくらいの人間が奴隷として捕まっているんだ?おそらくだが、お前のように逃げた人間もいるんだろう?」
「いえ、それが私も詳しくはわかってないのが現状なのです。そもそも、ソーマが突如宣戦布告を行って、王はもうその時に国の滅亡を悟られておりました。しかし、自国の民を少しでも逃がすために、軍を率い、最後まで戦われて、戦争で囚われの身に。王妃や王子、王女など、王族の方々は自身達が残ればソーマ軍の気をこちらに引け、国民が逃げる手助けになるだろうと王宮に残られ、王宮が攻め落とされた時に捕らえられました。
そして国民の多くが当初、王族の方々が王宮に残られると聞いて自分達も残ろうと致しました。しかし、王の軍が突破されたとの報告があった時、王の犠牲を無駄にするなとの王妃様からの国民全員へのお達しがあり、そこから全員が泣く泣く国外へ。私もその時に逃亡致しました。
が、それでも王族と共に死のうという国民もおりましたし、私も含め多くがギリギリに脱出を図ったので国民の半数以上が奴隷になってしまったのではと」
王族全員が国民の為に命を張るか。本当に王の器だな。あんなに幼い王女があんなにも立派だったのも納得だ。
「なるほどな。本当に立派な王族達だ。惜しい人間をなくしたな...しかし、せめても彼らが命をかけてでも守ろうとした国民は必ず救おう。
それと、サキア人は元々どれくらいいるんだ?」
「はい!必ず。サキアは元々亜人と人間が半分半分でそれぞれ二万人ほどいました。そして、亜人の多くはその身体能力から軍に所属していて、国民の割には軍の人間が多く、一万人ほど。そして恐らくは一番多く捕らえられているのはこの軍人だと思われます」
なるほど。だいたい奴隷は二万人ほど、そしてそのうちの半数ほどを軍人が占めている。という感じか。軍人ならば肉体労働系の奴隷という括りだろうな。
奴隷商館と、あとは、建設関係の商館あたりも回れば見つかるかもしれないな。
そんな時、横からサザリアさんがドッとテーブルを叩いて立ち上がった。
その目には涙目が浮かんでいる。
予想以上にサキアの話は彼女の心に響いたらしい
彼女は聡明だ。亜人に対する差別ももちろんないし、戦争に対しても客観的に見ているだろうと、協力を仰げる可能性を考えてあえてガンゾと二人きりではなくこの場で話した。
しかし、まさか泣くほどとは。
サザリアさんはサキアの王族の行動に感激し、自身も微力ながら協力させて欲しいと言ってきたのだった。さらに、ギルドマスターのバルバレもあの戦争については疑問を感じていて、国からギルドへの冒険者の戦争参加の依頼を断っていたらしい。サザリアさんがいうには、これをギルドマスターに話せばきっとギルドして協力してくれるとの事だった。
やはり、どの時代にも物事の良し悪しを図れる人間はいるものだな。さらに、それが国の二大ギルドの1つのトップとは。俺達にとってはかなりラッキーだ。
もし本当に協力を仰げるなら、一気にサキア人解放は現実に近づく。
現実では正義が勝つのはなかなか無いものだと思っていたが、こちらの世界に来てから本当に天がこちらの味方をしているように物事がトントンとうまくいく。良い流れはさらに良い流れを呼ぶからな。
このままもこの勢いを止めずに行けるかが一年で黒級にあがる鍵になってくるだろう。
より一層気を引き締めていかなければ。




