第22話
ガンゾのお弁当を販売し始めて3日。初日に売ってからギルド内でお弁当がかなりの評判になり、今日からは150食販売予定だ。
工事も問題なく進んでいて明後日くらいにはレストランが完成する予定になっている。
そしてメゴールの方は最近四階にある大部屋を研究室として改造し、食事以外は基本そこにこもって頼んだ魔法研究をしてくれている。ただそのせいか会いに行かないと本拠地でもメゴールを全く見る事がなかった。本人曰くこの3日間で一度依頼の交渉の為に冒険者ギルドには足を運んだらしいのだが、全く気づかなかった。
逆に俺はこの3日で王都でも一流とされるお店や病院、商会を訪ね、洗濯機、食洗機の契約を取り付けて来た。完全に肉体労働感が強い営業職だ。まぁしかしこれは適材適所。交渉は俺の仕事だ。
その肉体労働が功を奏して、王都の大手銀級以上レストラン30店舗との契約を結ぶ事ができた。王都の国立病院や、薬院、清掃業にもアポはとってある。最初に大手レストランを回ったのは商品ついでに敵情視察も兼ねていたからだ。
まぁ、しかし見た感じガンゾと現代料理の最強タッグに勝てそうな所は見つからなかった。王都はなかなかに広い。まだ全部まわれたわけではないが、まぁ充分通用するだろう。
しかし大変なのは食洗機、洗濯機の生産だ。
業務用をそれぞれ、65台、35台。機能を試作品で見せるとどこの店もすぐにでも欲しいと言いだして、1週間で納品しなければならない。まぁその代わり値段はふっかけはしたが。業務用の食洗機が一台銀貨70枚、洗濯機は一台銀貨50枚。しめて63金貨。しかも前払い。
頑張るしかないな。
結局、レストランオープン前日までひたすら業務用食洗機と洗濯機を作っていた。なんとか全て作り終えたが、おかげで魔力の使いすぎで体がかなりだるい。
正直すぐにでも寝たかったが、改装終了後すぐにお店をオープンするというのもあって引き渡し等のもろもろ作業があるのだ。
もちろんほとんどはガンゾに一任してあるのだが、流石にオーナーとして出来たものを見たいのもあるし、立ち会っておくべきだろう。
そう思って一階に行くと、まぁ当然といえば当然なのだが立派なレストランだった。この巨大な洋館の一階を丸々使って作られているだけあってかなりのキャパがある。
二階に通じる2つの階段は1つはカウンターに、もう1つは厨房につながる形になっていた。
そしてちょうどその厨房でガンゾと業者を発見。俺を待っていてくれたらしく、引き渡しも無事にすぐすんだ。
改装の費用はこの洋館と同じくらい。この仕事ならなかなかのお値打ち価格と言えるだろう。
しかし、ガンゾは引き渡しが終わったらすぐさま明日の仕込みを始めていた。そういえばこれからは早朝にお弁当を作ってギルドに渡して、昼から夜はレストラン営業。終わったら次の日の仕込み。
相当なハードワークだな。休む暇あるのか?
というか、こんなにガンゾも頑張っているんだ、俺もへばっているわけにはいかない。
売り込み用に洗濯機と食洗機もう少し作っておくか。
魔力切れまで作り続け、その日は倒れるように寝た。
が、その次の日。俺はドアをドンドンと叩く騒音で目を覚ました。初日以来だ。今度はいったい誰なんだ。
そうして門の外を見ると、そこにはおそらく50名ほどはいるだろう冒険者が並んでいた。
ただならぬ光景に俺は急いで飛び起き一階のレストランに向かった。レストランの入り口にはサザリアさんとお弁当150食を携えたガンゾが何か話していて、後ろには冒険者風な格好をしているメゴールがいた。
「三人とも、この騒ぎはなんなんだ。説明してくれ」
俺がそう聞くとサザリアさんが説明してくれる。
「今日までのお弁当販売で冒険者ギルド内ではガンゾさんの料理はかなり評判になっていまして、正直、その人気がこちらでも制御できないほどになってきているのです。そしてちょうど昨日今日がレストランオープン日だというのを告知したので開店前からこの状態で」
す、すごいな。しかし、開店は一応昼前を予定していたはずだが。
まだ、朝だよな。
「まだ朝だろ?いくらなんでもオープンもできないだろうし、これどうするんだ?」
「とりあえずはこの150食を先に来ていただいた方に優先で販売して、あとはできる限り早く開店しようとは思っていますが..」
ガンゾ自身もこの人気は予想外だったようだ。
「わかった。じゃあ、今からすぐ準備に取り掛かれ。冒険者の方は俺達でなんとかしよう」
しかし、俺が冒険者の方に向かおうとするとサザリアさんに呼び止められる
「待ってください!佐々木様!本日私がここにいるのは別の用件があっての事なのです。
ギルドのアイテムボックスが大5個を除きほぼ全て完売してしまって、至急追加を卸していただきたいのです」
「もう売れたんですか!?まだ1週間もたっていないのに、どうしてそんなに?とりあえず、在庫は全て出します。足りない分は今日中に」
想定外すぎる。確かにアイテムボックスは我ながらすごい物だろう。しかし普及が早すぎる。知名度が全くない状態だったんだぞ。
「景様。その件に関しては私メゴールが、微力ながらお力添えさせていただきました。
ちょうど今ギルドの白金や、黒級の中には私の弟子や、かつて共に仕事をしたものなどがおりますので、彼等にアイテムボックスを見せて、他の冒険者にも紹介するように頼んだのです。報告が遅れてしまい申し訳ありません。私も研究と、依頼の準備をしておりましてなかなか時間が取れず..」
メゴールの影響力ってほんとに半端ないな。
マジですごいんだな、メゴールって。
「それと、これからガリア大森林に白金級パーティに混ざって行ってまいります。おそらく3、4日で帰ってくるとは思いますが、研究の方もしっかりと進めておきますのでご安心ください」
あぁ、なるほど。それでその格好なのか。
「わかった。くれぐれも無茶はしないように無事に帰って来てくれ」
俺がそういうとメゴールは頷き、ドアを開け放った。
そう。メゴールは忘れていたのだ。そのドアの前に誰がいたのかを。




