第20話
今日はメゴールがいないのもあってギルドに入っても昨日程騒がれたりはしなかったが、多少噂にはなっているようだった。
メゴールの名前を出してお弁当とアイテムボックスの宣伝をするいい機会かなと思ったのだが、昨日の優秀な受付嬢もとい、サザリアさんが受付の横から手招きしていたのでそれに従った。
サザリアさんについていくと三階の応接室と書かれた部屋に案内された。
中に入ると中々立派な椅子とテーブルが置いてあり、奥の椅子に一人の男性が座っていた。
俺はサザリアさんに促されて対面に座った。
「どうも、はじめまして。冒険者ギルド、ギルドマスターを務める、バルバレだ。君は景君だったかな。あのメゴールの主人だと聞いて驚いたよ。私もメゴールとは古い付き合いでね。何度となく冒険者ギルドに残ってもらおうと試したんだが、上手くいかなくてね。どうやって陥落させたのか教えてもらいたいものだよ」
冒険者ギルドのギルドマスター。つまりはトップか。王国北部のみとはいえ、商業ギルドと並んで国の双璧をなしているわけだからな。国でも力はある方なんだろうな。しかも冒険者のトップだけあって腕っ節もかなり立ちそうだ。まさに柔道家みたいな体つきだ。それに首がかなり太い、俺の絞め技とかできないかもしれないな。
しかしゲーデルとはうって変わってオーラは真っ白だ。とても良い人なんだろう。出来るだけいい関係を築きたいな。
「こちらこそ、どうもはじめまして。メゴールの陥落方法はシンプルですが、逆に言えばとても難しいですよ。今日持って来たこのお弁当を作ったガンゾの料理で落としたんです」
「料理で落としたのか!?なるほど。食欲には勝てなかったというわけか。冒険者の時からなかなか食にはうるさかったからな。なるほど、納得だ。しかし、それならそのお弁当も中々すごいものなんだろうね。この後試食させてもらうよ。もちろん販売の話は好きにしてくれて構わないよ。」
バルバレはメゴールのエピソードをあいつらしいと言った感じで笑った。
しかし、一拍置いて、真剣な顔つきになる。
「まぁしかし、そんな話は置いておいてそろそろ本題に入ろうか。サザリアから話は聞いている。来たということは試作品を持って来てくれたんだろう?そのアイテムボックスとやらを。」
やはりメゴールの主人というのが大きかったか。アイテムボックスの話、かなり期待されていると見て間違いない。
「ええ。もちろん。これです」
そう言って俺は革袋をバルバレに渡す。
「魔力を込めて見てください。そうすると革袋の中に空間魔法が発生します。そこに物を入れて空間魔法を閉じれば収納され、出す時もまた空間魔法を発動して取り出すだけです」
「ほ、本当だ。これはすごい。これは世紀の大発明だ。本当に素晴らしい。容量はどうなっているのかな?しかもこれはメゴールが開発した付与魔法を使っているね?」
お、ばれた。なるほど。さすがギルドマスター。腕っ節だけではないというところか。
「その通りです。革袋に空間魔法を付与しました。容量は付与したときに込める魔力によって変わり、販売時には容量は大中小の3サイズに分けるつもりです。小ならば、冒険者のバッグ1つ分ほどの容量。中はその5倍。大はバッグ30倍にしようと思っています。ただ注意点がひとつあって、このアイテムボックスなんですが、一年以上使用すると耐久性が怪しいです」
「なるほどな、物なわけだからいずれは壊れる事もあるか。まあ、それに関してはこちらで売る際にしっかり注意を促すようにすればそこまで問題にはならないだろう。で、値段はどうする。こちらの道具屋に卸してくれという事ならば、まとめて売りで値段交渉はこちらとするわけだろう。これだけ画期的な商品だ。ふっかけられても文句は言わん」
最初は相当ふっかける事も考えた。しかし、目標の一年なら冒険者から継続的に買ってもらって卸し続けた方が利益は上がるだろう。それに冒険者がアイテムボックスを手に取り生存率が上がればガンゾのレストランの利益にも間接的につながるはすだ。なによりバルバレとは出来るだけ関係を持っておきたい。
まぁ、それでも冒険者の稼ぎは一般と比べれはかなり多い。さらに一流になればなるほど生きる為の準備も怠らないと聞く。売れるギリギリのところまでは釣り上げるか。
「小、銀貨40枚、中、金貨1枚、大、金貨5枚、で考えています。どうでしょう」
「その程度でいいのか!?こっちの手数料を引いても相当な破格だ。空間魔法なら荷物の重さも感じず、持っていけるものも格段に増える。これはもう爆発的に売れるぞ。王都だけではなく他の支部からも要請が来るだろう」
「構いません。そのかわり、これは冒険者の生存率をすこしでも上げるためにとの思いがあってのことです。もちろんそちらの利益というのはあるでしょうが、できる事なら近い値段で提供していただきたい」
「もちろんだ!景君にここまでしてもらって我々が自分達の利益を取ったら、冒険者ギルドは何のためにあるのか。安心して欲しい」
冒険者の為に、というスタンスにしたが普通に要求を通す為の嘘以外の何物でもない。
正直魔力量には余裕があるし、そもそも作るのに必要なのは革袋だけなのだから破格でも何でもないし。
ものすごく真剣なバルバレを見ると良心が若干痛むが、利益のためだ。その程度の事をいちいち気にしてはいられない。この国の全ての商会も必要なら潰して登りつめると誓ったんだから。
「それで景君これはどれくらい作れるのかな。最初は小、中、それぞれ100個、大50個を数週間試して売れ行きに応じて、次からは大体1ヶ月くらいで補充という形をとりたいんだが、その程度のペースで量産はできるか?もし可能なら、明日にでも持ってこれるだけ持ってきてもらえないか?」
恐らく余裕だろうな。1日に50個くらいずつなら量産できる。もちろんそれぞれで使う魔力量は違うが、一日全サイズ合わせて150個までなら無理なくこなせるはずだ。
が今日はもう昼だ。時間的に余裕がない。昨日のクリーンでの魔力消耗も若干残って入るのもある。一番の売れ筋にしたい中だけは50揃えてあとは無理なくにしよう。
「もちろん可能です。明日中なら、小30、中50、大10程度ならお渡しできます。それとついでに革袋も仕入れたいのですが、換金所でいただける革袋をまとめて購入できませんか?」
「そんなにもう在庫があるのか。わかった。それに革袋か。なるほどこれは換金所のものだったのか。しかしその話断るよ」
な。それはまずいな。簡単に作れる事を露呈するのはあまり良くないだろうから勘違いは正したくないが、在庫はない。あの革袋がなければ代わりのものを探すのに明日中ではきつい。タダでくれるようなものだし、普通に売ってくれると踏んでいたんだが。
読み違えたか。
「なぜでしょうか。もちろん対価はアイテムボックスの代金から引いてくださって構いませんよ?」
「いや、そういう事ではないんだ。私は君の商人でありながら自分の利益ではなく冒険者の生存率を上げたいという言葉に感動したんだ。この革袋は換金の際に無料で渡せるほど安価なもので、モンスターからも作れたりするので大量に在庫がある。私は君の気持ちに応えたい。革袋は必要な分だけいくらでもいつでも補充していってくれ。換金所には伝えておく」
なんて事だ。予想を大きく上回り材料費がゼロになった。嬉しい読み違いだ。
俺は短期的な利益よりも冒険者の生存率を上げた方が長期的な利益につながるだろうと思っただけなんだが、まあ、バルバレに好印象を与えたい思惑があったのも否定はしないが。ここまで評価されるとは、バルバレ想像以上に良い人だな。
付与魔法は誰も使えない。つまりはシェア100%だ。さらに材料費が必要ない。
冒険者ギルドだけでなく流通に関わってる上位の商会と契約すればそれだけでも一大事業になる。
冒険者ギルドの道具屋でアイテムボックスの知名度が上がってきたら一気に勝負だ。
権力のある商会から搾れるだけ搾り取ってやるさ。
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