第18話
これからの方針を決めた俺たちは自分達の本拠地を購入しようと商業ギルドに来ていた。商業ギルドは冒険者ギルドとは打って変わって王都の中心に位置している。
レストランも冒険者メイン、メゴールも冒険者として活動するので冒険者ギルドの近くを探していたら、丁度冒険者ギルドの前の建物が誰も住まないままあるというのだ。実際に行って見てきたのだが、かなりいいものだった。そこで俺たちはそこを買おうとしたのだが、少し問題があった。
驚くほど安かったのだ。金貨5枚。もちろん金額だけ言われれば普通と思うかもしれない。
しかし佐々木グループの総裁として数々の豪邸を見てきた俺が見てもかなり大きいし、国の中でも相当力のあるだろう冒険者ギルド本拠地の前に立っていても引けを取らないほどの洋館。見た目も綺麗で4階建て。中は人が住んでいない事もあって若干埃やらで汚れていたが、家具やなんかもそのままだった。クリーンを使えばだだで家具も手に入るし、一石二鳥すぎる。
レストランなので、見た目や大きさも重要と思って奮発する気でいたのだが、正直拍子抜けだった。
もちろん中心部から離れているのは大きいだろう。しかし、それでも安すぎる。
なにかおかしいと思って係りの人間に聞いてみると、なんとその洋館で昔貴族家の惨殺事件があり、それから夜になるとその貴族の霊が出るとかなんとかで、まぁ簡単に言うなら幽霊屋敷だそうだ。
なるほど納得だ。これにしよう。最高の立地に最高の大きさ、最高の値段だ。幽霊が理由なら機能に問題はないしな。幽霊話があるとはいえ、売れ残ってたのは奇跡だ。
俺は購入のサインと金貨5枚を係りに渡し、俺たちは晴れて本拠地を手に入れた。
が、それにしては盛り上がりがない。あんなに良い物件を金貨5枚で手に入れたのに二人とも驚くほど静かだ。そう思って後ろを見ると、顔面蒼白で震える賢者と筋肉むきむきのおっさんがいた....
え、まさか、二人ともお化け、怖いの?
いやいや、片方賢者にもう片方は50近いマッチョのおっさんだぞ。そんなまさか。
俺は恐る恐る聞く
「もしかして君たち、幽霊、怖いの?」
二人とも、こっちに顔を向けないままコクリと小さく頷く。
ま、まじか。まぁ、確かにこの世界は文化レベルも低いファンタジー要素満載な世界だ、神や悪魔やらを怖がる人間が多いのはわかる。多分そうでなかったらこの洋館はもっと早く買い手がついていただろうしな。
けどさ、お前達。特にメゴール。俺馬車の中で科学とか話したよね?理解してたじゃん。
しかしまぁ、こういうのは理屈とかではどうしようもなかったりするからなぁ。どうしようか。洋館も買ってしまったし、かなりいい条件だ。ここ以外は考えられない。除霊の真似事でもやればまだマシになるかな。それでもダメならあとはもう本当に慣れさせるしかない。
「わかった。だが二人とも、安心してくれ!俺が責任を持って今夜除霊してくる。今日のところは二人とも宿屋に泊まっていてくれ」
本当は宿代を少しでも浮かしておきたかったので今日から三人でこの洋館に泊まるつもりだったのに。
「き、危険です、景様。もし貴方が帰って来なければサ、サキアも王女も我々では..」
ガンゾが出会ってから一番深刻な真剣な顔で言う。
「その通りです、景様。幽霊に効く魔法などは存在しません。奴らは無敵なのです。ここは思い留まってくだされ」
メゴールもなかなかの焦りようだ。
いや、うん。多分二人とも真剣なんだろうけど、やばい。笑っちゃいそう。
「大丈夫だ。俺はこう見えても地球でも数々の幽霊を打ち倒してきたのだ。お前らが心配するような事態には決してならん」
よし、なんとか笑わずに言い切ったぞ。
そして俺なんかゴーストバスターズみたいになっちゃったな。
あ、というか、幽霊退治の仕事も始めようかな。詐欺にかなり近いけど、この世界なら儲かりそうだ。片手間にやってみるか?
そんなくだらない事を考えながら俺はメゴールとガンゾと別れ一人本拠地に向かった。
もうすでにあたりは暗い。
うん。やはりこの洋館、何度見ても本当に立派だ。が、それだけ大きいのに人の気配が全くしないのは、確かに夜見てみると若干不気味ではある。特にお向かいの冒険者ギルドが24時間明るい上にこの時間でも冒険者が騒いでいるのでその不気味さが増す。
まぁそれでも本当に霊がいるわけはないんだが。
とりあえず、メゴールとガンゾに除霊された風に見せる必要はあるから、この不気味な感じをどうにかしたいな。
とりあえずはこの建物にクリーンを付与。壊れていたり古くなっているところを生活魔法のリペアで修復。
ふぅ。かなり疲れた。いや実際は手間はかかっていないんだが、恐らく魔力を使いすぎたという事だろう。これだけ大きいものにクリーンを付与したのは初めてだしな。
そういえば自分の魔力ってどうやって測るんだ。メゴールがたしか心眼は自分の事は見れないって言ってたしなぁ。まぁそもそもオーラ以外は人の事を心眼の対象にした事はまだないんだが。いくらなんでもプライバシーの侵害になりそうで。
まぁ、今度メゴールに聞いておかなきゃな。付与魔法の商品は絶対量産したいし。
うーん。屋敷は綺麗になったし、だいぶマシにはなったんだがまだ若干不気味なんだよなぁ。やっぱり明るさが欲しいなぁ。
歩く時は生活魔法のライトを使っているが、ライトは使うたびに魔力を消費しなければならない付与魔法との相性はあんまり良くない。その場で魔力を供給しなければ消えるてしまうのだ。
さて、どうするか。
しかし、そんなことを考えていた時だった。
俺は噂の幽霊とやらと対峙する事になる。