第13話
そして俺は自分が地球というこことは違う世界から、ある日目が覚めたらこの世界に来ていたという事、そして地球の事や佐々木グループの事をかいつまんで説明した。
一か八かで説明してみたのだが、メゴールの反応は何かを知っていそうなものだった。ガンゾはポカンとしていたが。
「なるほど、景様は、神の迷い人でしたか。なるほどそれで合点がいきました」
「神の迷い人?」
「たまに古い伝承に載っている、神が世界を良い方向へと変えるべく、他の世界より連れてくる人間の事ですね。そして、総じて彼らはこの世界に来る時、特殊な能力を授かると言われております。景様の場合はその記憶力ではないでしょうか」
神が世界を変えるべく?だって?なんだその神の使徒みたいなのは。モーセみたいだな。そもそも神託とか全く受け取ってないぞ!もし俺が神の迷い人だったとしたら、神ずいぶんテキトーじゃないか。大丈夫なのか?
それに特殊能力なんてのも貰ってない。記憶力は元からのもだしな。
あ、いや、待てよ、水を掬った時や果物を触った時のあの感じあれは普通じゃなかった。
「水や果物に触った時、それの細かい情報が頭に伝わって来たんだ。水の成分や、木の種類まで、本当に細く。あれは目利きとかそういった次元の物ではなかった。俺がメゴールのいう神の迷い人ならおそらくそれが俺が授かった力だろう」
でも果物以降感じた事はないんだけど。
「ふむ。それはもしかすると、"心眼" かもしれませんな。」
「心眼?」
「ええ。世には鑑定魔法というものがあるのですが、心眼は鑑定魔法とは違い魔力を必要とせず、鑑定魔法より細かく幅広くものを見られる力で、極めると人の心さえも読むと言われています。しかし、生まれ持っての異能とされ、通常の人間が会得する事は不可能。
さらに持つものは国に一人、といったレベルで大変貴重なものなのです」
「すごいじゃないか。もしそうならとんだ掘り出しものかもな。
でも、俺はお前達の心とか読めないぞ」
人柄を把握して行動予測くらいはできるかもしれないが。
「えぇ。凄まじいものです。しかし、心眼にも問題が一つあるのです。心眼は生まれ持たなければ得ることができない異能。しかし、強化ができるのです。逆に言えば、生まれ持った才能に気づかずに強化を怠れば鑑定魔法にも劣ってしまう」
「なるほどな。なら、せっかくもらった力だ。強化していこうか。でも具体的に強化ってどうすればいいんだ?」
「だいたい、三段階あると言われています。まずは自身の力を自覚すること。自覚し意識して使うことによって、力が定着されます。これが第一段階。第二段階、第三段階に関しては各々に強化のトリガーがあるとされ、具体的に分かっておりません」
自覚か。もともと俺は目は良かったからな。それがさらに高次元になったと思えばいいのか。
うーん。意外に難しいな。
「まぁ、そう焦らずとも良いでしょう。とりあえずご飯の準備に取り掛かりましょう。腹が減っては何も始まりませんからな。それに王都までの道のりはまだまだこれからですから」
メゴールが食材をガンゾに渡す。
すごいな。本当に何もないところから出て来る。空間魔法。
心眼と共に王都までに必ず覚えよう。
「はい。本日は、メゴール様よりいただいた野菜とキノコの炒め物に、川で釣った焼き魚にいたしました」
すごいな。どうしてこれだけの食材と少しの調味料でこうも美味しくできるんだろう。地球の料理からしたら、確実に文化レベル的な差があるはずなのにそれを全く感じない。ガンゾが一級の食材と調味料、地球の料理知識を駆使して料理作ったら地球でも余裕で天下取れるな。
ご飯を食べ終わると、暗くなって来たので今日はここで野宿になった。今日はだいたい一つ目の街までの半分くらいは進んだかな。昼に出てるし、明日には余裕で街につけるだろう。
というか、心眼の話で盛り上がって、帰る方法を聞くの忘れたな。まぁあの感じなら具体的な方法を知ってるって事はないだろう。
サキア人の事もある。とりあえず帰る方法を探すのは後回しにするか。
佐々木グループは部下を信じよう。あいつらなら俺がいない間でも必ずグループを守ってくれるはすだ。