第10話
さて賢者が仲間になり、今はあのハ○ルチックな賢者の家の中にいる。賢者の準備もあるらしいので、とりあえず、今日はここに泊まって、明日の朝に王都に向けて出発することになった。
そういえば、メゴールには当面の目標を伝えていなかったので、俺とガンゾの約束の話、そのために、博識なメゴールの力を貸して欲しいと言うことを伝えると、快諾してくれた。そもそもメゴールはサキアに関して、再三ソーマ王に忠告していたそうなのだが、ソーマ王はそれを聞かずにサキアを強引に滅ぼしてしまって、それがずっと心残りだったそうだ。
「やはり、あの狸、サキアの民を不当に。あれほど忠告したというのに。ガンゾ殿本当に申し訳ない」
メゴールは深々とガンゾに頭を下げる。
「賢者様、やめてください。全てはソーマ王の悪業。あなたに悪い点など無いのです」
ガンゾもこう言うが、なかなかメゴールは頭をあげない。
「ガンゾも含めサキアの民は誰もお前が悪いなどとは思っていないだろう。ならば謝罪などしても意味はない。それにお前がなにもしなかろうと必ず俺が救う。サキアのために何かしたいと思うのであれば、佐々木グループの一員として、俺についてこい」
「そうですね...こんな老いぼれですが、サキアの為に、そして佐々木グループのために全力を尽くしましょう」
全員が同じ目標を共有するのは企業ではマストだ。これがなければ、会社は前には進まない。
しかし、メゴールがサキアの事をこんなに思っていたとは。
研究以外に興味の無いタイプかと思っていたのだが、ガンゾから聞いた話で判断しただけで、直接接したわけでは無いからな。細かい人柄までは把握できていなかったか。
まぁ、なんにせよ、これで新佐々木グループとして、全員が同じ目標を掲げられたので結果オーライか。
それにしても驚くのはメゴールの家だ。見た目小さいのに、家の中はかなりの量の本に溢れていて、その博識さが伺えた。メゴール曰く、研究中の数冊を除いて全部読んで覚えているので必要はないらしいが。
お、この本なんかすごい貴重そうだ。俺の目の一流センサーが反応してる。
って、そういえば文字読めないんだった。旅の途中に魔法やこの世界の知識と同時にメゴールに教えてもらおうか。
「お、景様。その本を手に取られるとはお目が高い。それは付与魔法。私がまだ、会得できていない魔法の一つです。必要暗唱呪文数は10万語。今のところ5年かけて、9万語まで暗唱できるようになりまして。なかなか大変な代物です。
その代わりそれは凄いですよ。物に魔法を付与することができるのです。例えば、鍋に生活水魔法の"クリエイトホットウォーター"を付与しますと、呪文を覚えてない人間でもその鍋に魔力を込めるだけでお湯が出るようになるのです」
なんだそれ、かなり凄いな。というかそれそもそも魔法の呪文を覚える意味すらなくなってくるじゃねーか。そもそも賢者が使えないって誰が作ったんだその魔法。
「それもはや、魔法師の存在すら危うくするんじゃないか?呪文の暗唱いらなくなるってことだろ?」
「いやいや、流石にそんな高度の魔法の付与はできません。付与する器の方が耐えられず、壊れてしまうので。できてもいずれ消耗して壊れます」
「なるほどな。まぁ生活魔法とかだけでも十分凄いか。そんな凄いもの誰が考えたんだ?使えないってことはメゴールじゃないんだろ?」
「いや、私ですよ。呪文を組むだけなら理論上の話だけで可能なので、魔法を作ることはそんなに難しくないですが、暗唱となってくると時間がかかってしまって」
「いやいやいや、景様。そんな事ありませんよ。魔法を作るなんていう偉業というのはこの100年賢者様しかなされていません。それ以外は太古からある、神が作ったとされるものなのです」ガンゾの訂正が入る。
まじか。やっぱり賢者と言われるだけの器だ。かなり頼もしい部下を得られたな。これで、いきなり出てきた盗賊やらに魔法で殺されるみたいな事はなくなるだろう。
「あんな美味な料理を作られるガンゾ殿にお褒めいただけるとは光栄ですな。しかし、私にしてみれば、あなたの料理の腕のが立派ですがね。魔法は食べれませんしね」
ガンゾの料理を食べてからメゴールはガンゾにかなり激甘い。というか、尊敬できる人みたいになっている。まぁ部下同士の仲がいいのはとても良いことではあるが。
というか、この賢者ついにぶっちゃけたな。魔法は食べれませんしね、ってなんだ。まったく。