自白
ーーーーーーーー佐倉涼太ーーーーーーーー
村に到着する頃には太陽が一番高くに昇っていた。
テューン、マテ、ツェーリがここにいないことはすでにわかっている。だけど、情報が必要だった。村に向かったはずの仲間が村よりさらに北上している。その理由を知らなければいけない。
「三人が村を離れた理由、世界樹からの知識ってので知ることはできないのか?」
「一度戻らないと最新の情報は得られませんね。担い手に直接触れられることでしか僕たちは知識を与えてもらえないんです」
ゼフの質問にヤンが答える。
世界樹から遠くにいても情報を更新しつづけられるならそれはチートだ。ヤンの上司である『世界樹の担い手』がそれに該当する可能性があるわけだけど、収集できる知識には何か条件があるはずだ。じゃなければ、ダンジョンに潜る前からドロテアのことは事前に察知できていた。
ヤンはツェーリに危険が及ぶことは絶対にしない。情報の隠匿はその危険性がある。彼女の安全を確保するために現状協力関係にある俺たちに危機的状況に陥るような情報の提供は惜しまないはずである。
「ゼフさん!すまない!」
駆け足で寄ってきた村長の第一声は謝罪だった。
「まさかこんなことになるなんて思ってもみなかったんだ……」
「落ち着いてください。何があったんですか?順を追って説明していただけますか?」
「あ、ああ……昨晩、村に突然の来客があったんだ。金は払うから食料と薬を分けてほしいとな。二十人ばかりの大所帯だった。申し訳ないがあんたらのために用意してあった蓄えを使わせてもらった」
「それは構わない。腐らせるよりはいい。そいつらは何者なんだ?何をしにこの村まで?」
「実はよくわからないんだ。しかし、彼女らの大半は衰弱していて、このまま突き放して野宿なんてさせたら後味が悪くなる。一夜限りと割り切ってワシの家を貸したんだ。ああ、こんなことになるなんて……」
ただでさえ年老いた村長の顔がさらに老けてみえる。よっぽど精神的に堪えたんだろう。住人たちも不安そうな面持ちで遠くからこちらの様子を窺っている。
「村長、別に責めるつもりはないけど、あんた何か隠し事をしてないか?」
突拍子もないことをラフィカが言う。
まさか村長がそんなことするはすがない。なんて疑いをかけてるんだ。
と、村長のほうに目をやると、わかりやすく動揺していた。
「あ、いや、ワシは」
「村長、安直な考えはよしてくれ!仲間が三人攫われてるんだ!」
ゼフの苛立った声にびくりと肩を震わせる。ゴリラ顔のゼフに迫られたら俺だってちびる。観念した村長がうなだれて告白するのにそう時間はかからなかった。
「……一人だけ名前を名乗っていた。ジークリットとな。他のやつらが何者なのかは分からん」
その名前を耳にした途端、ゼフが一人で北へ向かって歩き出した。誰が見ても明らかだ。俺たちがついていかなくても単身で乗り込むつもりである。
「ゼフ、待つんだ!」
師匠の制止すら振り切ろうとしたが、最終的にゼフはこちらに振り返らず足をとめた。ひやひやさせられたけど、まだ理性的であるみたいだ。
「君の目的は理解している。だけど、冷静さを失うな。ジークリットは私たち六人で追う。一人ではない」
「……ああ、わかった」
まだ情報が足りない。衰弱していたという人々の正体。エルドリッチと似た能力を持つ人物。そして、ジークリット自身がどれほどの力量を持ち合わせているか。
ここから北を目指すとゲルシュとの国境が間近になる。険しい山々がそびえ立つ山岳地帯だ。国境をまたぐことにならなければよいのだけれど。




