イナヅマvs吸血鬼
ーーーーーーーーマテーーーーーーーー
何も装着していなかったリュウガの両腕に金属製のグローブがはめられる。エルドリッチと同じだ。武具の召喚、それが彼らの特性なんだ。そして、召喚された武具には特殊な力が備わっている。リュウガの手甲も相違ないはずだ。
私の推測は正しかった。
リュウガの腕が黒いイカヅチを纏う。リュウガを決して傷つけず、敵にだけ牙を剥く異質の雷撃。その一撃の矢面にテューンが立つ。
「オトコギがあるねえ、ネエチャンヨォ!」
リュウガの拳が最短でテューンに到達する。魔鉄に精製した棒でテューンは対抗した。電流が迸るが構わず魔鉄を握り続ける。
「えっ?マジィ……?」
どうやら一撃必殺。防がれてもイカヅチで仕留める二段構えだったようだ。だけど、電流を全身に浴びて無事ならその前提は崩れたも同然だ。
カウンターとして、テューンはもう片方の腕を使い、腰に帯びた剣で鞘に収めたままリュウガの喉元を突いた。
「がぐっ!がっ……!」
結構長い距離弾き飛ばされたリュウガは、粋のいい川魚のようにのたうち回った。
あまりの呆気なさにツェーリは弓をひいた手をどうすればいいか迷っていた。私も短剣を出したはいいが、矛の向け先を失ってしまった。
しばらく待機していると呼吸を整えたリュウガがばっと急に立ち上がった。
「ナ、ナンデ! ナンデライゲキ、ツウジナイノ!」
「いや? 痛かったけど我慢しただけだぞ」
「我慢? ガマン!? ガマンで済むの!? 反則だ、それ! ハンソク! ハンソクだって! チート、チート! チートだよ、それ! もう……はぁ……? もう……もー! もうやだぁ! クソゲーだ、クソゲー! チートまじやめろよぉ、チートよぉ……もー! やめろよ、そういうの!」
なんか急に子供じみた駄々をこねはじめた。屈強な男が泣きべそかく光景はあまりにシュールすぎて現実に直面すると非常に困惑させられる。
一体この男は何がしたいのか?
騒ぎを聞きつけ、村人たちがざわざわと集まりだした。穏便にすませようと手を回そうとしていた村長は手遅れだと言わんばかりに両手を頭の上にのせていた。
「一体何の騒ぎですか、リュウガ。またろくでもないことをしでかしたのですか?」
私たちはハッと息を呑んだ。
リュウガに声をかけた女性らしき人物。女性らしき、というのはその人物が黒い衣装を纏っていて、顔もフードとマスクで隠しているからだ。ある人物の特徴に一致している。
「ア、アネゴォ!」
「その呼び方はやめてくださいと言ったはずですが……」
困ったようにぼやく女性。リュウガが一方的にアネゴと言って慕っているようだ。
それにしても、なんというか……肌をほとんど露出していないにもかかわらず、その落ち着いた立ち振る舞いと声質だけで恐ろしいほど蠱惑的に映った。まるで彼女を見るだけで魔力に当てられているかのように。
「もしや、ジークリットか?」
「……いかにも、私がジークリットです」
少しの間があっただけで、他に何の躊躇もなくその人物はジークリットと名乗った。
庶民から愛される正義の味方、レナート卿が追っている義賊、魔族であるという疑惑の主。そして……ゼフの復讐の相手。




