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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第二章 天空城の住人と王家のダンジョン
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魔鉄の斬撃

ーーーーーーーーテューンーーーーーーーー


 空間収納スキルでガラクタになった剣を引き出す。そして、『鉄』の部分だけを抽出する。剣とは呼べなくなった残骸は地面に転がり、その役目に終わりを告げた。

 抽出した『鉄』を私は全て体内に吸収する。不慣れなためか激痛が走る。だが、血に刻まれた師匠の記憶が正しさを証明している。だから、迷いはない。

 『魔鉄錬成』。正真正銘師匠のオリジナルスキルだ。リョウタが師匠から譲り受けた剣も魔鉄を素材にしているが、私はこの時すでに確信していた。リョウタが両断出来なかったあの鎧を私なら両断することができる。

 全身を駆けめぐった『鉄』が私の右手に一気に集まる。そして、私の体内から排出された『鉄』は禍々しい黒に染まっていた。

 剣のイメージはリョウタのものを参考にした。叩き斬るのではなく、あくまで斬ることを重視するなら刀身が反ったあの剣は良い見本になった。

 だが、技術が未熟なために私の剣は少々歪な形をしてた。

 問題ない。足りないものは『原子操作』による強化と私の腕が補う。


 「マテ! 下がれ!」


 こちらを一瞥もせずマテはまるで事前に打ち合わせていたかのように即座に身を引いた。鎧の騎士もマテを追おうとはしない。危険を察知したかのように低く唸り、そして雄叫びをあげて突っ込んできた。


 「もうおまえが私のイメージから逸れることはない」


 感覚を研ぎ澄ませ、呼吸を合わせる。

 頭の中で描いた軌道と寸分違わぬ斬撃。その斬撃が鎧の騎士の右腕を切断した。バランスを崩した鎧の騎士は大剣の切っ先を地面に埋もれさせた。大剣を捨て、左腕だけで私に応戦しようとする。だが、もう遅い。

 私の二撃目が鎧の騎士の胴体を袈裟に切り裂いた。深くまで達したその斬撃が、ついに鎧の騎士の動きを停止させた。


 「ドロテア! おまえの切り札はねじ伏せたぞ!」


 昂ぶる気持ちをそのままに私は叫んだ。ドロテアは明らかな動揺の色を見せた。他の作品が破れ去るよりも遥かに鎧の騎士が特別な代物であることが伝わってくる。


 「なぜだ? おまえは取るに足らない存在だったはずだ。さっきまでの健闘には驚かされたが、王の魂を脅かすほどじゃなかった。なのに、なぜだ? どこからそれほどの力を得た!?」


 徐々に語気が強まるドロテア。攻撃の手は完全に止まっていた。

 仲間を殺されたとはいえ、無防備な相手に攻撃を仕掛ける気はフリージアにはさらさらないらしい。警戒を緩めず一定の距離を保っている。


 「おまえ自身が言ったことだ。異世界人の力だよ」

 「あり得ない。この世界の人間に力を与えることは不可能なはずだ!」


 その言葉にフリージアがぴくりと反応する。

 異世界人はこの世界で子孫を残すことができない。フリージアが前に言った言葉と今のドロテアの発言が私の中でも結びつく。

 ドロテア、彼女は師匠の知りたいことのほんの一部でも知っているのでは?

  

 「聞きたいことができたよ、ドロテア。どうしてドロテアはそこまで人間を憎むの? 私にはどうしてもドロテアが狂っているように見えない。むしろ極めて理性的でさえあるという印象を受けたよ。トリュンで語り継がれてる昔話には語られてない真実が、もしくは時代とともに都合よく改変された何かがあるんじゃないかな?」

 「……今更何も変わらない。変えられないんだ。おまえたち人間を一人残らず殺す。私はそのためだけに生きてきた!」

 「ドロテア! さっき戦った時のドロテアの顔は冒険者のものだったよ。あんな顔が出来るんだったら……」

 「神は! 神に言われたんだ。私たち魔族は出来損ないだと! いずれ魔王が誕生し侵略を企て、人間に滅ぼされる運命にあるゴミだと! 私たちも神によって造られたはずなのに、神は私たちを踏み付けにしたんだ……! ならば、滅ぼすしかない。滅ぼされる前に殺し尽くすしかない。魔族が生き残るにはもう……それしか方法がないじゃないか! 人間とは……何かを分かち合うようなことはもう二度とない……」


 救いを求めるような悲痛な叫び。絶望に打ちひしがれそうになりながらも、自らの種族のために孤独な道を選んだ彼女の覚悟はどれほどのものなのだろうか。

 だけど、私たち人間だってむざむざと殺されるわけにはいかない。それに、ドロテアからは聞き出さないといけないことが山ほどある。情報が足りなさすぎる。ドロテアの言葉が意味するところも、これだけじゃ正確に汲み取ることはできない。


 「フリージア、こいつは生かしたまま捕らえる」

 「……異論はないよ」


 勝負はついている。もはやドロテアに勝ち目はない。それでも、彼女は最後まで抗うつもりでいる。彼女の前に示された道には、共存という二文字は存在しないからだ。

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