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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第二章 天空城の住人と王家のダンジョン
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ドロテアの焦り

ーーーーーーーーテューンーーーーーーーー


 「これが私の魔導の真髄だぁ!」


 フリージアの飛行はツェーリのような優雅さこそなかったが、獲物に肉迫するその速度は圧倒的に上回っていた。敵を掻き分け、瞬く間に人面鳥を射程範囲に捉えた。

 そして、フリージアは拳を突きだした。

 咄嗟のことなのに人面鳥は魔物の背中から跳躍し、フリージアの魔力を帯びた一撃は魔物の頭を爆ぜさせるだけに終わった。

 まさか、そんな……!


 「ぐえー!」


 人面鳥が哄笑するような鳴き声をあげた。

 だが、フリージアは諦めてなかった。身体を大きくひねって、あの無茶な体勢から回し蹴りに繋げた。そして、彼女の右足は見事に敵に命中する。

 新たな鳴き声を上げる間も無く、人面鳥は血の代わりに体のありとあらゆる部品をあたり一面にぶち撒けた。そして、次の瞬間ひときわ甲高い鳴き声を響かせ、魔物たちはダンジョン内を飛び回った。もはや私たちに向けられた敵意はない。耳の奥まで揺さぶるような絶叫に思わず私は膝をついた。

 しばらく経つと、あれほど猛っていた魔物たちが嘘のように居なくなっていた。静けさを取り戻した空間の中、敵を倒せたことを確かめながらゆっくりと立ち上がった。


 「感慨にふけるのはまだ早いよ、テューン。このノリのままドロテアを叩くよ!」

 「ああ……そうだな!」


 ディランが別れ際にあれほどフリージアを信頼していた気持ちが私にも分かってきた。彼女は成し遂げられる人間だ。彼女が何かをする度に私の心が震えてやまない。

 もしゼフを無理矢理連れ出さなかったら、彼女と冒険できていなら、そんな無責任な仮定が頭をよぎるほど彼女は魅力的なのだ。

 そして同時に、ゼフが提案したパーティーの解散を私は到底受け入れることができないことを再認識した。



ーーーーーーーーー佐倉涼太ーーーーーーーー



 衰えるどころか一撃一撃を凌ぐたびに安定していくゼフの戦闘センスには脱帽させられる。強烈な一撃は相変わらずゼフの体勢を大きく崩させるが、次の一撃がくる前に必ずゼフは持ち直した。

 だが、依然光明を見出すことは叶わない。

 竜化の影響で灼熱を纏った刀身も、生身でない抜け殻の人形相手には相性が悪いらしい。刺し貫くこともできず、俺の斬撃は容易に弾かれた。

 危機的状況じゃなければどうしていいか分からず、茫然と立ち尽くしていたことだろう。篠塚のことが気になるが、ここでゼフを一人にするのはリスクが高すぎる。結局、ここを押さえなければ被害は甚大なものになる。それをわかっているからこそ、俺はここでのことに考えを集中させているのだ。

 ふとドロテアに注意を向けるとその表情が苦々しいものに変化していた。

 右手にぶら下げた両手で抱えられるほどの大きさの白く曇った半透明の丸い容器から最初にはなかった三つの光が漂っている。ドロテアはそれを睨みつけていた。


 「どうした、ドロテア。気分が優れないのか?」


 俺は自分の腕の未熟さを包み隠して、ドロテアから情報を引き出すことを優先させた。


 「……おまえたち二人がじわじわと嬲られていくサマを見るのも悪くないが、後がつかえているのでな。そろそろ決着をつけさせてもらうとしよう」


 容器を地面に粗雑に置くと、ドロテアは代わりに突然地面から出現した二本の槍を手にした。

なるほど、襲われてもいいように武器を隠し持っていたわけだ。運良く鎧の騎士の攻撃をかわせていたとしてもアレにやられていた可能性はなきにしもあらずだ。

 それだけに収まらなかった。ケンタウロスを彷彿とさせるあの四本足の化け物がドロテアのもとに駆け寄った。胴体と頭部を中心に返り血を浴びているところからすでに誰かが犠牲となってしまったようだ。

 その化け物にドロテアは片方の槍を投げ渡し、馬の背にあたる部分に飛び乗った。

 どうやら戦闘準備が整ってしまったらしい。


 「ゼフ、俺はあっちをやる!」

 「すぐにやられるなよ!」

 「善処するよ!」


 倒せるとは思ってないが、もっと気の利いた言葉をかけてもらいたいものだ。まあ、吸血鬼になる前までは一番俺が足を引っ張っていたんだから文句は言えない。


 「リョウタ!ぶちのめしてやれ!」


 ゼフの続く言葉にやる気が湧いてきた。やることは変わらない。だけど、仲間から信頼されているというのはやはり大きい。

 理由は判明してないが、焦っているのはドロテアのほうだ。ドロテアを待ち構え、冷静さを損なわないように敵の動きに注意を払う。

 そして、ドロテアが仕掛けてきた。



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