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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第二章 天空城の住人と王家のダンジョン
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休憩

――――――――佐倉涼太――――――――


 探索を続けてどれほどの時間が経っただろうか。ダンジョンの中にいる間の時間感覚というのは慣れないものだ。自分でも気づかないうちにいつのまにか身体が疲弊していて二進も三進もいかなくなる可能性だってある。


 「ダンジョンに入ってから大体二時間経ったね。万全を期して一旦休憩しよう!」

 「時計持ってるんですか!」


 フリージアの手元では懐中時計がカチカチと音を鳴らしていた。この世界に来て初めて時間という概念を形にしたアイテムに出会えて少しだけ興奮する。

 その様子に気をよくしたフリージアはこれ見よがしに懐中時計を見せつけてきた。


 「さすが異世界からきただけあるね! こんな便利なもの、持ち出さないわけないよ! うちのメンツはこの時計の尊さをまったく理解しなくてね。私は今もーれつに感動してるよ!」


 色めき立ったフリージアをよそに、黙々と休憩する準備に取り掛かる三人。いつものことなのかその動作には一切の迷いがなかった。

 相手にされなくても勢いが衰えることがないフリージア節を延々と聞かされ続けた。

 見張りはゼフとテューンが引き受け、俺たちはフリージアの懐中時計に従って正確な時間の休憩をとる。時間にルーズな生活を送っていたから精神的に少し負担だったが懐かしくもあった。長期的に見たら時間をきっちり管理していたほうがメリハリがついて身体も切り替えしやすくなる。懐中時計はゲルシュに齎された恩恵の中でも特にフリージアのお気に入りみたいだ。いい加減そうに見えて意外ときっちりしてる彼女らしい趣向だ。


 「さて、どう捉える?オーステア」

 「試されているとみて間違いない。敵は私たちを振るいにかけたいんだろう」


 断続的に繰り返される襲撃に対して、師匠はそう結論付けた。

 知能はともかく奴らの動きは王宮ダンジョンの時とは異なり、統制がとれていた。つまり、なんらかの意思が働いている。それらを難なく殲滅できたことからも相手がまだ本気をだしていないことが推測された。


 「目標地点までどのぐらい?」

 「普通なら日帰りで採掘できるような距離だが、こう襲われるとなっちゃ行くだけで1日かかるな」


 ジョルジュはしかめっ面をしたまま答えた。


 「敵はおそらく消耗しても痛手にならない最低戦力で私たちを突いてるね。フィジカルを常に万全にしておきたいから強行軍では行かないつもりよ。食料の備蓄は?」

「現地での調査を含めた四日分だ。慎重を期すならギリギリの物資だな」


 食料のストックをディランが報告する。彼はボケ担当というだけじゃなく、パーティーの雑務をそつなくこなす有能な男だった。


 「ところでー、あれはなんとかしなくていいの?」

 「ん? ああ、触れると余計にこじれるから今はあのままにしておいてほしい」

 「そう? 探索に支障がでないならいいんだけどね!」


 二人の視線の先には険悪な雰囲気を遠慮なく醸し出してる例の二人の姿があった。ツェーリはヤンと話している間もちらちらとマテのほうを見ているが、マテは不機嫌そうに武器の手入れをしている。

 あの状況を放置するのはよろしくないことなんだろうけど、何をしてやればいいかこれといって思い浮かばない。


 「トモエ、特訓の続きしよ」


 ソフィアは短くそう誘うと、篠塚の服の袖を人差し指と親指だけで引っ張った。結構奥手なあの篠塚がこの短期間に向こうから声をかけてくれるほど仲良くなったということに感心する。

 だが、肝心の篠塚の様子がおかしかった。びくびくと肩を震わせ、辛うじて浮かべたであろう笑顔が引きつっていた。そして、ガナードが近づいてきてからはまるで捨てられた猫のような潤んだ瞳で俺に何かを訴えてきた。


 「全体の士気にかかわる問題だ。私が壁役を務めよう。誰だって休憩中にげんなりしたくないだろう?」


 妙な役を買ってでたテューンにソフィアが、「それもそうね」と同意する。

 一体何が繰り広げられるというんだ。

 泣きそうな顔をさらに悲しげに篠塚は連れ去られていってしまった。すまない、篠塚。ソフィアとガナードだけなら強引にでも止めたが、身内であるテューンにも名乗り出られたら俺も空気を読まねばならない。

 引きずられるように隊の端っこに連れていかれ、篠塚があれほど嫌がった特訓が開始されたのだった。

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