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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第二章 天空城の住人と王家のダンジョン
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ダンジョンの危険性

――――――――テューン――――――――


 「私はかつて冒険者だったことがある。君のように自発的に目指したわけではないが。私をドン底から救い出してくれた人が冒険者で、その恩に報いたいと始めたことだった。そして、最終的にはその名を知らぬ者なしと大陸全土に轟かせた。その点においてだけ言えば、私は幸運だった。人の世は残酷なものだ。その実力を備えていても、一人では成し遂げられない。必ずしも同じ志と認識を共感しあえる仲間と巡り合えるわけではない。君は恵まれている。各々が抱えるいくつかの問題を除けば、私がいなくても充分に頂点に登り詰めることができる逸材が揃っている」

 「そのいくつかの問題が深刻な事態を引き起こしてても?」


 ゼフのことだけじゃない。マテもラフィカも問題を抱えている。表面上は二人とも免責を受けて晴れて自由の身だが、根本的なことは解決していないように見えた。悩み事はたくさんある。そして、それを叩き割るようにゼフがパーティーを解散すると言い出した。

 ああ、そうだ。私は怒っているんだ。どれに対してなのかは分からない。あるいは全てにかもしれない。


 「そんなのはよくあることだ。私のパーティーもろくなやつがいなかった。一人は戦争で成り上がろうと山奥から下山してきた礼も弁えぬ野人だったし、一人はシスターだったのに布教先で出会った魔術師にそそのかされて破門された挙句に死刑宣告までされていた。リーダーも貴族の三男坊で本来守るべき民衆を虐げていた父親を叩き斬って家を飛び出した親不孝者だ。何度も何度も飽きるほど喧嘩した。だが、少なくとも仲間だと思ってたから手を差し伸べた。後から語れば美談か笑い話だが、騒動の渦中はそうではない」


 オーステア様は続けた。


 「テューン、君は過去を恐れるあまりパーティーに対して控えめな態度でしか接していない。別に悪いことではない。しかし、ゼフに対して負い目があろうと、昔のように自分がどうしたいのか主張するべきだ。君は史上最高の冒険者になりたいんだろう? それ以外はありえない。そして、そうなるときはあの五人とがいい。そう考えているなら、ここで途方に暮れてる場合ではない」


 正直に言えば、私はオーステア様に対しても怒っていた。恨んでさえいる。ゼフを復讐の道へと誘導させたのは紛れもなく師匠だ。それがゼフの本当に望んでいたことでも、せっかくゼフが前を向いて歩けるようになってきたというのにこれじゃ逆戻りだ。だが、私にはそれを指摘する資格がない。

 それを口にしようとすると私の打算が働いて、自分のやましい部分に自己嫌悪してしまう。

 その反面、オーステア様の助言は至極真っ当だと思った。私は彼らにまるで接待しているかのようにご機嫌取りをしてきた。彼らを不快にさせる言動を慎み、自分を殺して仲間に接してきた。今回のことだって私は出かかった言葉の全てを飲み込み、理解ある仲間を演じ、どうにか解散しないでいい方法を模索している。彼らに一言も本音を漏らさないように、だ。

 その結果、途方に暮れていたわけだ。


 「そうだな……一度話し合ってみるのもいいかもしれない。今は輪を乱したくない。ダンジョンから無事帰還することができたら、私の気持ちを打ち明けてみる。ここでぐずぐずしていても要領を得ないな」

 「ああ、そうだな」

 「……オーステア様、一つ言っておきたいことがある。私は自ら望んで貴方の下についた。だけど、正直ゼフやリョウタのように貴方を信用してない。貴方からすれば私は不逞の輩と変わらない」

 「ほう、良い調子だな。その調子でみんなにも打ち明けるといい」


 無礼なことを言ったにもかかわらず、オーステア様は嫌な顔一つもせずにやりと笑った。そこでふと最初に出会った頃の彼女の言葉が頭をよぎる。

 きっと彼女は私たちが大きく道を外すことがあっても見捨てない。真摯に向き合ってくれている。

 煮え切らない感情の矛先を向けても慈しんでくれる。だからこそ、私も逃げずに向き合わなければならない。


 「それで、今回のダンジョン。オーステア様はどうお考えで? サージェス絡みというがサージェス本人はすでに転移で逃げた。それほど警戒する必要はないと思うけど」

 「あの王女は自分で決着をつけたかったはずだ。この国の情勢からしてそれは不可能だ。私たちに頼るのは致し方ないことだ。だが、あまりにも行動が早すぎる。王女は全てを把握しているわけではないにしろ、ダンジョンで何が起こっているかはある程度予測できているんだろう」


 オーステア様は続けた。


 「エルドリッチの同伴なしで私もまともに動けない状態だ。おそらくかなり危険を有する探索になる。誰も死なないように立ち回るが、全滅する可能性も充分にある」


 その眼はとても冗談を言っているようには見えなかった。



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