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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第二章 天空城の住人と王家のダンジョン
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テューンの配慮

 ――――――――佐倉涼太――――――――


 陰鬱な気分も吹っ飛んでノリノリで買い物してたマテが急にそわそわしだした。なにやら怯えている節もある。と、様子を窺っているとマテが俺の後ろに回り込んできた。


 「どうした?」

 「ちょっとここで視線遮らせて!めっちゃガン見してるやついるから!」

 「ガン見……って、うお!」


 ツェーリがこちらをガン見してた。俺に見られたからかさすがに視線をテーブルに戻したが、それまでずっとこちらを凝視していたのだろうか。

 ゼフもテューンも注意してくれればいいのにな。

 そう考えていると、テューンだけが席を立ち、こちらに歩み寄ってきた。


 「二人はどうでした?」


 篠塚の問いにテューンが溜め息をつく。


 「箱入り娘よりも世間知らずだ。一から十まで教えないといけない。まったく先が思いやられるよ。まあ、戦闘に関しては相当自信を持っているみたいだから足を引っ張ることはないと思う」


 テューンが箱入り娘についてどういう認識でいるかによって差異があると思うけど、そう表現したくなるほど無知だということは伝わってきた。


 「そんな状態でよくこの世界の言葉喋れてますね。私たちかなり苦労したのに」

 「む、確かに不思議だな。機会があれば聞いておくか。今から伝書烏を飛ばそうと思ってな」

 「もしかして村にですか?」

 「そうだ。何も音沙汰もなしにいつ出られるかわからないダンジョンに潜るのは、さすがに気が引ける。せめて無事だけでも伝えておいたほうがいいだろう」

 「伝書烏……そういえばそんなものもあったなあ……」


 うちの元パーティーのメンバーは補助系や強化系などといった魔術を多用するので、目に見えて魔術だ、と堪能できる機会が少ない。この世界に来てからの不便さにもう慣れてしまっていたので、この世界の便利なことに目がいってなかった。

 この世界の魔術と呼ばれるものは大きく分けて、錬金術、魔術、治癒魔術、に分けられる。

 錬金術は魔力を保有していて、道具さえあれば誰でも扱うことのできる学問的要素が強い術だ。魔術は魔力が保有している人間でも特に才能がある人間が学ぶ術だ。別に、魔力を身に宿していれば学ぶこともできるが人生を棒に。そして、治癒魔術は生まれながらに適正がある人間しか使えない。

 魔術でも錬金術でも、治癒魔術の真似事はできるが、本物には遠く及ばない。冒険者の中でも治癒系統の魔術を有している者は結構いるが、それは治癒魔術のカテゴリーではなく単なる魔術によるものだ。だから、篠塚は割かし貴重な存在だったりする。まあ、この世界に転移してまだ半年だから、今はまだその単なる魔術による治癒よりも劣ってさえいるんだけど。将来性はかなり有望だ。

 ちなみに、伝書烏は魔術の領域だ。それ専門に店を営んでいる魔術師がいて、おぞましい数のカラスとネコを飼育している。それほど壮絶な光景を一度は脳裏に焼き付けてたのに、伝書烏の存在をすっかり忘れていた。


 「じゃ、行ってくるよ。先に帰っていてくれても構わない。ゼフにもそう言ってある」


 踵を返すテューンの背中はなぜか俺に言いようのない寂しさを感じさせた。

 なぜそう感じたのか分からない。別にいつものテューンだ。俺たちの気づかないことに一早く気を回す。パーティーの母親役のような存在。そうだな、なんだか少しだけ声に覇気が感じられなかった。そんな気がしただけかもしれない。





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