マテとお買い物
途中からスマホで書いたので帰宅次第、空白など修正します
ーーーーーーーーマテーーーーーーーー
事あるごとに突っかかってきて本当に鬱陶しくて堪らない。ツェーリというまるで森の精霊のような美しい女性に私は辟易としていた。
元はといえば難癖つけてきた彼女が悪いのだけど……そりゃまあ、ムシの居所が悪くて首を突っ込んだのは私なんだけど!
それにしても、彼女にはうんざりさせられる。
「お金って何ですか?」
「あー、そこからか……」
浮遊城の住人は想像以上に世間知らずだった。それでどうやって冒険者になろうと思い至ったのか。私たちがいなかったらそのまま受付で門前払いにされていたに違いない。そもそもどうやって王都に侵入したんだろう。
最悪なのが、二人には宿がなく、報告も兼ねて王宮に泊まらせるという流れが出来たことだ。完全に信用できたわけじゃないから、お目付役を誰かがしないといけないのはわかっていたけど、まさかこんな形になろうとは……自分の軽はずみな行動を呪うしかない。だけど、私は悪くない。そこだけは譲れない。
とにかく二人の相手は面倒見のいいゼフとテューンに任せて、私は新しい服選びに集中することにする。
普段着じゃなくて戦う時用の服なので華やかさはないけど、やっぱり少しでもお洒落にはこだわりたい。テューンとトモエちゃんはそのへんはぞんざいで、機能を果たせばそれでいいという考えだ。まったくもって信じられない。
リョウタはなんでも可愛いというので人形と話しかけているのと変わらない。まあ、それでも可愛いと言ってくれるのは嬉しいから毎回聞くのだけどね。
ラフィカは……。
その顔を思い浮かべて、私は思考を切り替えた。いつまで引きずるべきじゃないのはわかってる。でも、仲良くしていた人と突然引き離されるのは辛いものだ。いや、引き離されたんじゃない。ラフィカが自分で選んだんだ。そんなこと、わかってるはずなのに。
「防具ってどこで買おうとしても色合いが地味だよね……」
「奇抜な服のほうがいいのか?鳥人間みたいな」
「そーゆーわけじゃないけど、リョウタくんに話を振った私がバカだったよ」
「なんだかいわれのない中傷を受けた気分だゾ」
冒険者ギルドの真向かいにある冒険者向けの武器や防具、各種便利グッズを取り揃えている店舗に私たちは買い物にきた。元は冒険者ギルド直売店だったが、各国の介入の末に今の管轄は商人ギルドに譲渡されている。
この商人ギルドが私からすれば得体の知れないもので、冒険者ギルドから権力を分散させた影の立役者はこいつらなんじゃないかと私は睨んでいる。なにせ、今や冒険者ギルドと並ぶほどの政治的発言を彼らは有している。
といっても、いち冒険者の私には遠いところの話だ。
丈の短いダークブラウンのジャケットに胸元に黒いリボンがついたベージュのシャツ、ズボンはカーキ色だ。
動きやすい服装で頑丈なものは品揃えが少ない。冒険者の装備は魔力を込めたものがそれなりにある。金属の部分がより効果的に込められるため、魔力が通してある布は供給が少ないし、そのうえ高い。
「え、リョウタくん、それいつもの装備より軽すぎない?」
リョウタくんは前まで胸に鉄のプレートを着用したり、肘当てや手甲もしていた。ゼフのように重装備じゃなかったけど、それなりにガードをかためた装備をしていたはずだ。だけど、今のリョウタくんは私に匹敵するぐらい最低限の装備だ。
「保護する必要がなくなったからね」
言われてみれば確かにそうだ。かくゆう私も体の骨という骨をごりごりに粉砕されても翌日には普通の生活を送れるまでになった。それは人間として異常なことで、吸血鬼になって一日しか経っていないのにそれを受け入れてる私たちは、オーステアという人格に精神が侵されつつあるのではないか、という危惧さえ芽生えた。
まあ、私はみんながそれでもいいなら全然構わないけどね。
それにしても、リョウタくんの服装はダサい。着られればそれでいいという感覚が露骨にでている。上から下まで茶色一色。師匠から譲り受けた魔鉄剣も空間収納スキルで仕舞ってあるからさらに見すぼらしさが際立っている。
「リョウタ、さすがにそれは私から見てもひどい服装だと思う」
「そうですか?」
「控えめに言ってもうんこだな」
「それはひどいですね」
「私の空間収納から一着仕立てやる。どの道竜体化に耐えられる服はここにはないからな」
「えー、ズルい! ていうか、師匠ものすごく強いのに裁縫も出来るんですか? 女の子スペックも高いとか……なんだか負けた気分になりますね」
「無駄に年はとっていないだけのことだ」
めちゃめちゃ艶のある白い肌でそのセリフを言われると違和感しかなかった。
師匠は自分の服のスペアも空間収納していた。なんで最初からそれを着なかったのか尋ねると、この世界の衣服も着てみたかったからと返された。
私としては完璧超人より、ちょっとお茶目な部分があったほうが共感できるので、師匠のそういうところをもっと見てみたい。
「なんなら、マテの分も作ってもいい」
「え! いいの? やったー!」
「あ、私もいいですか?」
「構わんよ」
「出来れば私は普段着のほうでお願いしたいんですが……」
「む、そうだな。トモエはそっちに気を使うのか。だが、乗りかかった舟だ。時間はかかるが、両方作らせてもらう。マテにも平等に普段着を作るからな」
異世界の素材で作る服。どんなものが仕上がるか楽しみで仕方ない。ズボラなリョウタくんに感謝しなきゃいけない。きっかけを作ってくれてありがとうってね!
「しかし、機嫌が直って何よりだ」
「え?」
師匠の言葉にハッとする。そうだった。私は今機嫌が悪いんだった。買い物が楽しすぎて忘れてしまっていた。でも、致し方ないことである。だって、買い物は楽しいものだからだ。
そして、私の機嫌が悪かった原因の一つであるツェーリのほうに目を向けた。彼女は商店の一角に設けてある待合室でゼフとテューンの講義を受けてる。
にもかかわらず、私とがっちり目があった。まるでずっとこっちを見ていたかのように。
え、なに、こわいこわいこわい。
あまりの恐ろしさに私はこわいを連呼してしまった。




