天空城
空白をあけてない部分はお盆明けに直します
――――――――テューン――――――――
冒険者になるのが子供のころからの夢だ。
その夢を叶えるために私は幼い頃から冒険者になるための特訓を毎日欠かさずやっていた。
「冒険者をやってるとな。つらいことや、かなしいことがたっくさんある。たのしいことなんてほんのこれっぽっちさ」
村を訪れた冒険者に私は、なぜ冒険者になったのか、と子供ながらに素朴な質問をした。女の冒険者は少し考えからそう答えた。
「だけど、かつて誰も踏み入れたことのない大地を、ダンジョンのさらに奥を、誰も手にしたことのない秘宝を。そういうものを見つけた時の興奮は、なにものにも代えがたいものなんだ。私たちはそういうものに憧れてるんだ」
熱弁をふるう冒険者の話を耳にしながら、まだ見ぬ世界にキラキラと瞳を光らせる。村のことしか知らない私には何もかもが新鮮で眩しく感じられた。
私もなれるかな?
「なれるさ。だけど、その前に強くならないとな。じゃないとこんな可愛い子すぐに魔獣に食べられちゃうぞ!がうがう!」
魔獣の真似をした冒険者に脇をこちょこちょとくすぐられる。加減を知らない彼女は私が力つきるまでそれをやめないのだ。
もっと大きくなって、男の子にも負けないぐらい強くなって、この冒険者と肩を並べて歩けたらいいな。その時に昔話をして盛り上がるのもいい。だから、私は強くならないといけない。
それが私の……。
「よお、おはようさん。みなさん元気そうでなにより」
「元気そうじゃない!なんの用だ、エルドリッチ」
夜よりも暗い闇が晴れて、王宮を後にしようとした私たちに、ウルリカ王女は宿がわりに王宮の一室を貸し与えてくれた。日差しの関係上、あまりノリ気にはなれなかったが、せっかくの王女様のご厚意を無下にするわけにもいかず、渋々泊まることになった。特にひどかったのはリョウタだが、ズタズタになった服の代わりも繕ってくれた。エリニエスは何事もそつなくこなしてくれた。
そこまでは、まあ良しとしよう。だが、寝て三時間もしないうちにエリニエスが鍋とオタマを持って叩き起こしにきたのはいかんともしがたい。
「アニキが一度やってみたかったって言ってました!」
悪びれた様子もなく言うもんだから怒るタイミングを逸してしまった。このやり場のない怒りをエルドリッチにぶつけたわけだ。
「別に嫌がらせしたわけじゃねえんだ。そうカッカすんな。笑った顔のほうが美人だよ、たぶんな」
「ふざけるな。なにが、たぶんな、だ。くだらん要件だったら許さないからな!」
「なんか機嫌わりーみたいだけど……」
口をだらりと開けたままエルドリッチは師匠のほうを一瞥する。
「エルドリッチ、その後に続く言葉を口にしたらさすがに擁護できんぞ」
「やっぱり?まあ、いいや。実は報告とお願いと強要したいことあんだけど何から聞きてえ?」
「なんだか穏やかじゃないな」
威嚇する視線をエルドリッチに送るゼフ。それを涼しい顔で流すエルドリッチ。不穏な空気で場が張り詰めた。
「あー、エルドリッチ殿。とりあえず場を和ませるために景気のいいやつがあるならそれをお願いできるか?」
「そいじゃ、みんな外見てくれるか?光、目に入れた瞬間潰れるとかないよな?」
「多少なら大丈夫だ」
外は日が昇ってすっかり明るくなっていた。
あの長い夜から初めて眺める青空が、仲間がいるとはいえこんな気分で迎えるものになるとは、これを最悪と言わずして何なのだろうか。 だが、そんな想いも外にあるものを目にした瞬間に吹き飛んだ。
そこには、空を飛ぶ巨大な城があった。




