無事を祝う
――――――――佐倉涼太――――――――
「ゼフ、君がいなければ活路を見出せなかった。もちろん、リョウタ、君にも感謝している。だが、あまり無茶はしないでくれよ?私はこれから何度君の身体が千切れ飛んでいくのを見ないといけないかと思うと気が滅入る」
「さすがに懲りましたよ。もう二度としません」
「私の経験上、君のような輩はまたやるよ」
「ははっ、まさか」
ウリエル王女に引き続き、扉からエリニエスと篠塚が顔をだした。その後ろからロニーとリカルドが続く。篠塚は真っ先に俺たちに駆け寄ってきた。エリニエスはエルドリッチのもとへ、ロニーとリカルドは待機した。おそらくエルドリッチかウルリカ王女の指示待ちだろう。
俺の吹き飛んだ身体の部位はすでに復元されており、篠塚にみっともないところを見せずに済んだ。
「みんな無事ですか? ゼフさん、覚醒したんですね」
「ん、ああ、そうだ」
ゼフは歯切れが悪そうに素っ気なく返した。
「もう魔力はすっからかんだが、とりあえずは生き延びることはできた」
「今の状態だと魔力が完全に回復するのってどのぐらいなんですか?」
「ふむ、そうだな。大体五十年後ぐらいだな!」
「ごじゅ……」
篠塚だけじゃなく、全員が絶句する。強力なスキルに見せつけられて魅入られた俺たちは、師匠への信頼が最高潮に達していたところだった。それだけに落胆の度合いは高い。
「何を落ち込んでいる。私をアテにするな。君たちが期待するのではなく、私が期待するんだ。最初に言っただろう? 好きなように生きろと」
「『心が揺らぎ、疲れ、染まってしまったら私が手を差し伸べよう。打ちひしがれぬよう、道を誤らず、違えず、まっすぐ足を踏み抜けられるように私が寄り添おう』」
師匠が俺たちと契約を交わした際の言葉をゼフは復唱した。
「そう、私たちは一心同体だ」
「……テューン、リョウタ、トモエ。ラフィカとマテを掘り出したあと全員に伝えたいことがある」
ゼフは一人ひとりの眼をしっかりと捉え、覚悟を決めた口調で口にした。そのゼフの様子を見るテューンはどこか寂しげで、彼女の抱いている感情が何なのか心身ともに未熟な俺には察することができなかった。ただ、おそらく彼女はゼフが何を言おうとしているのか薄々感づいている。だからこそ、テューンはそういう表情をしたのだろう。それだけは伝わってきた。
「あー……ラフィカとマテね。うん」
「どうしたんですか? 師匠」
なんだかバツの悪そうな表情で腕を組んでいるので何か良からぬことがあるのかと危惧した。もしや、あれに取り込まれてもう元の姿に戻ることができないとか、それどころか師匠の一撃で巻き添えをくらって消滅してしまったとか。最悪な事態がいくつも頭をよぎる。
「……すっかりこの骨の山に埋まってるの忘れてた。さて……皆の衆、もう一仕事してから休息をとるとするか」
ただ単に忘れてただけだった。
血の契約のおかげで位置が特定できたため、ラフィカとマテは所狭しと積み上げられた骨の山を隅々まで探すことなく最小の労力で掘り出すことに成功した。ただ原型を留めていないほど圧縮されていたので満足に動けるようになるまで相当な時間を労した。篠塚が吐きかけるぐらい見た目がグロテクスだった。
まあ、生きてるのだから何よりだ。




