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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第一章 囚われしサージェス
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強行突破

――――――――オーステア――――――――


 「ラフィカとマテの気配が途絶えた」

 「なんだって?」

 「私の弟子といた奴らも全員死んだと考えていい。ラフィカはあれでもこの世界では相当の腕をもつ冒険者だ。エルドリッチ殿と戦ったときはひどいものだったが。マテもすばしっこさにかけてはうちで右に出る者はいない。この程度の奴らに襲われても二人同時に討ち取られるようなヘマはしない。おそらくこのダンジョンの主が動いた」


 私は何体か切り伏せたゾンビをさして、自分の弟子がいかに有能であるかをプレゼンした。エルドリッチは無言でゾンビと刃を交じらせながら私の言葉に耳を傾けた。その表情はだんだんと険しくなっていく。

 傭兵ギルドと冒険者ギルドの面々は迫りくるゾンビの群れの対応に追われている。私たち二人を除けば、余裕があるのはエリニエスぐらいだろう。だが、エリニエスはこの会話には割って入る気はなさそうだ。エルドリッチに対して気をつかっているのかもしれない。


 「すまない。俺の判断ミスだ」

 「状況が変わっただけだ。ここは天然のダンジョンじゃなく、私たちを殺すための異世界のダンジョンだろう? 不測の事態はつきものだ」

「弟子の安否が不明なのに冷静だな……いや、忘れてくれ。感情的になってる場合じゃねえな」

「切り替えが早くて助かるよ。今は早急に状況を整理しなければならない」

「アニキ! ここは私にお任せください! 敵が仕掛けてきた以上、私たちには猶予がありません。敵の意図を汲み取るためにも二人で策を講じる必要があるはずです」

 「……ああ、そうだ。頼む」


 エリニエスが地面に触れると、瞬く間に人の形をした土くれが完成した。その姿は記憶の中のものとは違うが、私の世界でいうゴーレムというものに相違なかった。


 「これほどとは……さすがエルドリッチ殿の弟子だ」

 「ああ、俺の自慢だ」

 「あ、あにき、褒められると調子崩れますんでやめていただけます?」

 

 頬を赤らめるエリニエスを目にして私は昔を懐かしく感じた。

 私が最初に旅をしたパーティーはそれはもうロクでなしの集まりだった。私を牢獄から救ってくれた英雄なのだが、控えめに言ってもクソ野郎だった。そんな野菜クズの寄せ鍋みたいなパーティーでも世界を変えるほどの影響力を持っていたのだから始末が悪い。今では笑い話だけど、私はその英雄に恋をしていて、結局その恋は実らなかった。

 だからだろうか、私はこの二人を見ていると遠い故郷の風景を思い出した。

 

 「早速だが、敵の狙いについて考えを共通のものとしよう。時間があまりないから、敵が私という存在を確認してダンジョンを作成したという前提を踏まえて考察する。この前提から間違っていればそもそも私たちに勝ち目はないがそれを承知で続ける」

 「構わねえ。今はほとんど憶測で語るしかねえしな」

 「ダンジョンはいわば時間稼ぎで敵にとって防御を固めるための手段だったはずだ。だが、敵は攻勢にでた。一気に私たちを叩けば決着がついたはずなのに分隊を狙った。勝ちを目前にして驚くほどの慎重さだ。もしくは、サージェスの崇める神とやらがこのダンジョンの構造を入れ替えた時、大きなリスクを伴うから私たちを避けたか」

 「そうだとしても、それを思考に組み込むのは俺たちにとってもリスクがある」

 「その通りだ。だが、どのみち私たちはジリ貧だ。このまま亀のように縮こまっていたら外側からじわじわ食い尽くされてしまう。私の弟子もギルドの面々も。全員歩く死体に変えられる。その次はいよいよ王女様の番だ。だから、すぐにでも決着をつけなければならない」

 「外堀を埋められてる気分ってのは面白くねえな。だけどよ、手はあるのか? あんたの言い分じゃ奴ら奥に引きこもらずに自分らで決着をつけにきたってわけだが、向こうからの応答がない限り、俺たちにゃ分隊の位置を知る術がねえ。それにいつまでもそこにいるわけじゃねえだろ?」

 「その問題についてはすでに解決済みだ。私は弟子の状態だけではなく、位置も常に把握できている。ラフィカとマテの消息が絶たれた位置に、運がよければまだサージェスはいる。その証拠に、他のメンバーはまだ健在だ」

 「……遠回しに言ってるけどよ、要はがむしゃらに突っ込めってことだろ? いいね、分かりやすくて。乗った! 勝算はどれほどのもんだ?」

 「私のは限りなくゼロだ。もう我が弟子の覚醒も見込めんだろう。一人を除いてな。この状況だからこそ覚醒するやつが一人いる。私たちが奴らを引き留めている間に何とか覚醒くれればいいが」

 「奇遇だな。俺のほうも限りなくゼロだ。でもよぉ、結論は変わらんだろ?」

 「……まったくおまえといると昔の仲間を思い出して仕方ないな。そうだ、私たちは勝算もなく敵の懐に飛び込む! それこそが唯一の活路だからだ!」

 「エリニエス! ここは任せた!」

 「トモエ、ここで王女様を守ってやってくれ。私とエルドリッチはちょっと敵の本陣まで顔合わせをしてくる」


 ゴーレムを錬成した少女は、「はい! それでこそアニキです!」と景気よくエルドリッチを送り出した。トモエはその反対、不安でたまらない表情で、「お気を付けください。私が至らず申し訳ございませんでした」と後悔の念を口にした。


 「おまえたちなら私の位置を気配で特定できるはずだ。ここに戻ることがあったらすぐに私の元にくるように伝えてくれ」

 「はい、必ずそうします……すいません、こんなときにかける言葉が思い浮かびません」

 「その気持ちだけで充分だ。では、行ってくる」

 

 そうして、エルドリッチと私はサージェスのいる方向に駆け出した。


 「時間が惜しい。壁をぶち破っていく!」


 宣言どおりエルドリッチは召喚した剣を思いっきり振りかぶって壁を粉砕した。元となった王宮の造りはダンジョンになってもそのままだった。エルドリッチにかかればその強度は脆い。駆け出したスピードは衰えることなく私たちは最短経路でサージェスと対面した。

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