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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第四章 第二の厄災、天空の世界樹
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マーリンの秘策

ーーーーーーーーツェーリーーーーーーーー


 一つ一つ策を丁寧に潰していく。

 距離を取れている間は私の優位は揺るがない。確かにマーリンの成長は目覚ましい。だけど、私はマーリンの必殺の間合いを知っている。そこさえ見誤らなければ対処できないわけじゃない。

 環境の差は歴然だ。私は『世界樹の担い手』の力を得て、完璧じゃないにしろ感覚を順応させている。対するマーリンは、覚醒したばかりで身に宿る魔力は付け焼き刃のようなものだ。私の見立てが正しければ、もうすぐマーリンの魔力は尽きる。そうなれば、マーリンは肉体に頼らざるをえず、その後の結末は誰の目からも明らかである。

 だから、マーリンは次の一手に全てを賭ける。


 「来なさい! どんな攻撃でも凌ぎきってみせる!」


 マーリンと視線が交差する。その目には殺意があった。だけど、それだけじゃない。私に対する敬意がある。出会った頃のマーリンじゃ絶対に浮かべることのない表情だ。

 この世界で彼女と友達になれて本当に誇りに思える。マーリンの成長が自分のことのように嬉しい。最初に殺す相手が最愛の友人だなんて……なんて残酷なんだろう。それと同時に、最初の相手がマーリンでよかったとも思う。

 恐ろしい矛盾を抱えている。それがみんなを破滅に追いやる危険性を孕んでいることはわかってる。でも……それでも、クレイオス様は私を受け入れてくれた。私のワガママを、私という存在を。

 マーリンが一直線に私に向かってくる。最初と同じ。でも、最初とは違う。何か仕掛けてくる。どんな小細工でも叩き潰す。

 鷹の精霊。この子はこの戦いを俯瞰してる。マーリンの一挙手一投足を見逃さず、つぶさに私に報告する。マーリンの『探究者』で解析したところでどうにもならない私の第三の目だ。

 突然、私に向けて四方からナイフが打ち出された。マーリンの魔術の痕跡がある場所からだ。この時のために仕込んでおいたものが放たれたのだ。当然折り込み済み。魔術を行使した際に何かしているのを私が見逃すはずがない。

 私は熊と牡鹿の精霊を展開した。今度は幻覚じゃなく本物の。あとは、ナイフを打ち落とせばいい。勿論、この程度で終わるわけがない。マーリンは他に何かを仕掛けてくる。それに対応できるだけの余裕を確保できた。

 襲い掛かる精霊たちを薙ぎ倒しながら迫るマーリン。もう精霊たちじゃ足止めにもならない。私がマーリンの魔術に対応できるようになったのと同じく、マーリンも私たちに対応できるようになってきたのだ。だから、最後の最後まで気を抜けない。

 そして、私は気づいた。

 確認できていたナイフの数より一本多い。一瞬眉をひそめ、すぐにその謎を解き明かす。

 幻覚だ。私に飛んでくるナイフの中に実体のないモノが混ざってる。不可解だ。それに何の意味があるというんだ。それに意味があるとする思考と、ないとする思考を並走させる。

 実体のないナイフを本物の中に混ぜる? 普通は逆だ。全てを受けきるつもりでいるのに偽物を潜り込ませたところで結果は変わらない。

 だったら、なぜ?

 次に鷹の精霊が霧散した。それもすぐに原因が判明する。水蒸気爆発を起こした際の蒸気の一部に魔力を滲ませて鷹の精霊に付着させていたのだ。ここぞというタイミングで八つ裂きにできるように。そして、まさに最高のタイミングでそれは行われた。もし同じことを私にしていたら鷹の精霊に見抜かれていたことだろう。

 私は一番必要な場面で第三の目を失った!

 そして、マーリンの意図を正しく理解した時、すでに私はすでにマーリンの間合いの中にいた。

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