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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第四章 第二の厄災、天空の世界樹
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逆転の一手

ーーーーーーーーマーリンーーーーーーーー


 切っても切っても湧き出してくる精霊に舌打ちする。それらは全てツェーリの命令に従い、私の足を止めるために命を差し出してでも突っ込んでくる。この世界樹の中にいるかぎり、精霊を黙らせることはできない。

 少しでも動きが止まればツェーリの矢が私の心臓を射抜く。大袈裟じゃなく事実だ。そして、ツェーリの矢筒に入った矢は尽きることがない。折っても砕いても、どこからともなく精霊たちが新しい矢を運んでくる。吸血鬼である私を殺せるあの矢を。

 精霊を焼き払い、凍らせて、電撃を浴びせる。一つ一つと手を晒すごとに追い詰められていくのが伝わってくる。

 ツェーリはこの世界にくるまで命をかけた戦いをしたことがない。それなのに、歴戦の戦士のようなバランス感覚で戦いの流れをたくみに操ってくる。このまま手の内を出し切ってしまえば敗北は必至だ。でも、ツェーリの攻撃を捌ききったところで、がむしゃらに突っ込むだけじゃ近づけもしない。

 私も覚醒したばかりだ。手持ちの魔力もすぐに底をつく。元々使わず腐ってたモノだ。仕方ないといえば仕方ない。だけど、今はそれが頼りだ。

 過去の記憶に潜り、打開できる魔術を必死に探した。『探究者』のスキルがあれば、ほんの僅かな知識からでもそれらを完成形に導くことができる。より最小限の魔力で最大の効果を発揮する。それでも、ツェーリに届かなければ意味がない。

 魔術を組み合わせて撹乱することも試みた。水球を作成し、急激に温度を上げて爆発させた。水浸しになったところを雷撃を撃った。初見なら回避不能のはずの攻撃をツェーリは全て避け切った。

 同時に、私は自分の浅はかさを呪った。

 確かに連携こそ初見でも、ツェーリは一つ一つの魔術をすでにその目で見ている。それだけで、ありとあらゆる可能性を考慮し、その対策を迅速に練り上げたのだ。そのセンスはまさに天才的。そして、それを完璧に補助する世界樹の知識も、私たちの世界じゃ遠く及ばない先を行っているのだと痛感させられる。

 打開するには、全く予想だにしない攻撃を繰り出すか、あるいは、読んでも回避しようがない攻撃をするか。

 ふと、私は思い出した。幻覚に惑わされたことを。あれは狐の精霊の仕業だった。あの時はかなり際どかった。今の私なら同じことを出来る。あの狐のおかげだ。

 魔力の残量も少ない。だったらもうやるしかない!

 ほんの一瞬でいい。一瞬だけでもツェーリの思考を上回る。次が最後だ。この一撃が決まらなかったら私の負け。決まれば、やっと勝ち取ることが出来る、私の間合いを。

 ツェーリ、この瞬間に私の全身全霊をぶつけるよ。私が信じた仲間のために、私を信じてくれた仲間のために。そして、マーリンという人間を作り上げてくれた過去全てのものに賭けて。

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