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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第四章 第二の厄災、天空の世界樹
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エルフのおぞましき力

ーーーーーーーー佐倉涼太ーーーーーーーー


 正体不明の攻撃を受けて動揺するも、帝国のパイロットたちは恐怖に心を曇らせることなく任務を遂行する。俺たちを世界樹に送り届けるという使命を果たすために。

 だけど、具体的な対策があるかといえば、そんなものはなかった。


 『飛んできたのは矢だけだろ? 全部避けたらどうだ?』

 『おまえそれ本気で言ってる? 頭わいてんのか?』

 『それが出来たら何も苦労しないね! ほんとバカ』


 パイロット同士の罵り合いに近いやり取りが続く。検証しようがないのでそれらは全て不毛に終わるだろう。操縦の腕は一流だが、彼らには実戦の経験がないし、ましてや相手は異世界からの来訪者だ。この世界の常識は通用しない。


 『全ての矢を避ける必要はない。その中に混ざった本命の矢を見分ければいい。そのタイミングがきたら私が合図を出す。奴らを存分に翻弄してやれ。貴方たちはコレのプロだろう?』


 師匠の挑発的な言葉に一瞬パイロットたちは沈黙を余儀なくされた。バラバラだった心が一つになった瞬間だ。なかなか冷ややかな口調で煽ったので、向けられた相手がもし俺だったらと思うと居た堪れない気持ちになった。


 『……やったろうじゃない!』

 『さっぱりわからんが、何をするかは分かった。全速前進でぶっちぎってやる!』

 『誰が最初にゴール出来るか競争だな!』


 いや、レースじゃないんだから……と口にしかけたけどそういうノリも必要な時がある。思い詰めるよりもゲーム感覚で集中したほうが結果が出る場合だってあるのだから。今がその時だと信じたい……信じていいよね……?

 そんなことより、師匠が戦闘機を撃ち落とした矢を識別できるということは、その矢をもろに食らえば不死である俺たちも無事では済まない、ということに他ならない。

 種は分からない。だが、エルフの切り札は精霊の力だけじゃない。それだけは伝わってきた。当然だけど、俺たちには明かしていない何かがあるわけだ。

 だけど、不本意ながら一機墜落した以上、こちらもモニカの援護射撃を期待できる。


 『第二波、きます!』

 『頼むぜ、あんたが頼りだ!』


 降り注ぐ矢を注意深く観察しても、高速で飛行中に向かってくる矢なんてものは、全体として見ることは出来ても一本一本を見極めるなんて到底不可能だった。

 通信機の沈黙が全員の緊張を物語っていた。

 たくさんの矢を装甲が弾く。息をこらして合図を待つ。エルフたちの間を抜け、そしてその瞬間が訪れた。


 『今だ! 9時の方角、やや下からくるぞ!』


 その合図を受けて、パイロットたちは急旋回し、軌道を無理矢理変える。

 その矢が右翼の横を通過するのをこの目でしっかりと捉えることができた。はっきりと異質なものであると認識できる。禍々しいオーラを纏うその矢からは、ツェーリとヤンが使役していた精霊とはまったく違う力の流れを感じた。


 『やった! 避けれたのか?』

 『気を抜くんじゃないぞ。まだ先は長い』


 あれがなんであれ、攻撃を回避できたことに一同安堵する。だけど、俺の背中はまだぞわりとしたままだ。あの矢は間違いなく俺たちを殺せる。傷を負わせられるとか、回復が遅くなるとか、そんな生易しいものじゃない。手を射抜かれれば手を切断しなければ死ぬ。それも一刻の猶予もなく。そういう類のものだ。


 『な……なんだこいつ! ちくしょう! なんだってんだ!』


 慌てふためくパイロットの声が入る。


 『どうした? 何があった?』

 『エルフだ! エルフが剣を装甲に……』


 ラルフの声が聞こえたのも束の間、今度は俺の近くを飛んでいた機体が爆発する。おそらく、ラルフが乗っていた機体だ。その証拠に、ラルフからの通信が途絶えてしまった。

 次々と、一方的に墜落させられる状況に精神が追い詰められそうになる。

 頼む、モニカ。この状況を打開するために、援護射撃が必要だ。どれだけ注意を逸らせるか不明だ。奴らには援護射撃の存在自体読まれてる。ほとんど戦況に影響を与えないかもしれない。だけど、今はそれに縋るしかない。

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