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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第四章 第二の厄災、天空の世界樹
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パーティー再結成

ーーーーーーーー佐倉涼太ーーーーーーーー


 夜も深くなり、ラルフとの訓練を終えたあと、師匠に割り当てられた一室にパーティーの全員が集った。

 ゼフは難しい表情に拍車をかけていて、師匠のあのいつもの余裕の笑みは鳴りを潜めている。

 事の深刻さを物語っていた。骨の神様の時も、ドロテアの時も、ロイアスの時でさえ、悪く言えば師匠は他人事のように振舞っていた。もちろん、それは俺たちを信頼してのことである。師匠の軽い態度が、どうにかなるんじゃないかという気を俺に起こさせたこともあるので、俺自身はとやかく言うつもりはなかった。

 師匠がおもむろに口を開いた。

 その内容はモニカの口から聞いた内容と同じだ。戦闘が起こってから四時間未満でケリをつけないといけないこと、抵抗できたとしてもほんの僅かに時間を遅らせることができるだけで、帝国の技術を持ってしてもほぼ無力であること。

 そして、新たな情報を師匠が口にする。


 「私たちが搭乗する戦闘機が一機でも撃墜された場合、後方から援護射撃が飛んでくる算段になっている」

 「援護射撃? 別の戦闘機を飛ばすのか?」


 テューンの問いに首を振る師匠。

 撃墜、という言葉に渋みを増すゼフの表情。やむを得ない事情があるとはいえ、犠牲者をだす前提が不服のようだ。ゼフは俺たちのリーダーであり、盾を携え前線を維持する守りの要だ。作戦会議の場にも師匠の他にはゼフだけが出席した。だからこそ、意味を理解しているからこそゼフは顔を顰めさせたのだ。


 「モニカが言っていた大砲を撃つ。まだこの世界では試し撃ちすらしたことがないようだが、かなりの自信を持っていたよ。私たちを巻き込まないように世界樹に撃ち込む。しかし、想定している範囲が大きいため覚悟はしておいたほうがいい、とのことだ」

 「覚悟?」

 「直接の被害はなくても、かなりの衝撃が戦闘機を揺さぶる」

 「それだけの規模の砲撃をもってしても、戦況は覆らないんですか?」


 ダメ元で確認する。だが、結果は虚しく師匠は首を振った。


 「残念だが、砲撃はエルフたちにとっても想定済みの策である可能性が高い。期待は薄いだろう。だが、ないよりはマシだ」


 師匠の言葉にゼフが続いた。


 「……俺たちに対して配慮を欠いた強引な手だ。パイロットにも負担を強いることになる。それだけ帝国が必死なのも分かる。ツェーリやヤンのような手練れが何万と押し寄せてきたら、白兵戦では間違いなく歯が立たん。なんとしてでも俺たちを世界樹に辿り着かせる以外にないんだ。そのためなら、帝国はどんな手でさえも使う。だから……俺は帝国の案を呑むことにした。エルフが本当に世界を滅ぼすつもりなら、俺は故郷のために戦う。自分の生まれ育った国のために戦う。だからこそ、みんなに謝らなければいけないことがある」


 ゼフはバツが悪そうに頭を掻いた。その次に顎を撫でた。よっぽど気恥ずかしいのだろう。それがよく伝わってくる。


 「俺は前の仲間たちの復讐のために独断でパーティーを解散した。本当にひどいことをしたと思ってる。申し訳ないことをした。ジークリットと、復讐の相手と出会って、結局復讐を果たすことができなかった後からずっと考えてた。ここに全員が集まって、俺たちだけで集まって、顔を合わせた時、おまえたちとチームで戦いたい。そう思った。厚かましいのは承知の上だ。また俺とパーティーを組んでくれないか?」


 あんなにも頑なだったゼフがこうしてパーティーの再結成を望んでいる。嬉しくて仕方がなかった。俺がこの異世界にきて、心の拠り所となってくれたパーティーだ。解散したところでみんな一緒にいたことには変わりないけど、やっぱり気の持ちようが違う。

 断る理由がない。大賛成だ。


 「はいはい! 大賛成!」


 俺やテューンよりも早く挙手したのは意外にもマテだった。


 

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