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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第四章 第二の厄災、天空の世界樹
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帝国が滅ぶまでの猶予

ーーーーーーーー佐倉涼太ーーーーーーーー


 やった! 初めて攻撃をまともに防ぐことができた! もちろん、その後の追撃で斬られたんだけどね。

 ラルフも防がれた時、目を見開いていたから止められるとは思ってなかったんだろう。


 「まずは第一歩ってところかな。成長してる実感をもてるのは大事なことだし……あー、まあ、おめでとう」


 なんというか、ラルフらしい褒め方だ。堪えきれずに笑ってしまった。

 自己表現が下手なだけで割りかし良いやつだ。元逃亡兵で仲間を躊躇なくぶった切ってくるけど良いやつだ。

 根に持ってる? いやいや、俺から稽古を頼んだのに、根に持つわけないじゃないですかやだー。


 「おーおー、やってんねー。男同士の友情っ……!尊いっ!」


 突然の来訪者にラルフは身を凍らせた。


 「モニカ……さん……」

 「あたしの名前覚えてくれてたんだー、うれしー! ぐへへ!」


 なんとか顔に出さないように努めるが、どうしても顔が引きつってしまうラルフに同情する。やはりというか、モニカはラルフに鼻の下を伸ばした。どうせモニカの俺への感想は、「特になし」だし。


 「なんだったらあたしとチューしてみない ?あたしの唇処女よ処女、んっばっ、んっばっ!」

 「ちょ……変な擬音語つけないでください……」


 唇を突き出しながらしきりに動かしてアピールするモニカ。顔が可愛いからまだ見られるけど、一歩間違えたら若い男性が魔物に襲われている図だった。

 頭にパンツ被りながらガニ股で突進してきても違和感がない女性だ。


 「冗談はさておき、息抜きがてらに見学させてよ。もー疲れちゃってさー、明日のことで」

 「こんな時間までお疲れ様です。息抜きになるかはわかりませんけど」

 「大丈夫だいじょーぶ! イケメンがいるだけで目の保養になるから、ぐへへ!」


 モニカの汚い笑い声を聞く度にラルフの表情が消えたり引きつったりするのがちょっと面白くなってきた。そのあとに平静を装うために愛想笑いを浮かべるまでがセットだ。

 昔はラルフもトイレ系面白キャラを演じてたはずなんだけど、どうもモニカとは合わないらしい。もしかしたらラルフのモニカに対する感情は同族嫌悪なのかもしれない。


 「まぁ……結局はロイアスくん及び、オーステアちゃんと愉快な仲間たちが頼みの綱ね」

 「愉快な仲間たち……」


 話がこじれそうなので突っ込むのはやめた。

 モニカはふぅっとため息をつき、ちょっとだけ真剣な目をした。


 「この戦争は電撃的に決着がつく。城壁は意味を成さず、エルフたちは空から一気に帝国の喉元に食らいつく。対空戦の用意がないわけじゃーない。それでも、帝国が異世界の技術と引き換えに交わした最初の誓約ゆえに、エルフたちが帝国の領空に侵入するまで武装してない戦闘機しか飛ばせないし、飛ばせるころにはすでに目と鼻の先にいる」

 「厄介ですね、その誓約って」

 「さすがに数万の兵を抱えた巨大な世界樹の城が、空飛んで攻めてくるなんて想定外だったわけ。元々この世界の『内側』の揉め事に備えた法みたいなものだし、まあ仕方ないよね」


 モニカは続けた。


 「それで、オーステアちゃんからいただいた情報と、ロイアスくんに似てなくてほんとに良かった可愛い妹たちの見立てを踏まえたうえで算出した結論を述べると……なんと、帝都は四時間を持たずに陥落しちゃうの」

 「は……? たった……?」


 ゲルシュ帝国に来てから耳にタコが出来るほど劣勢であることは聞かされてきた。それでも多少の抵抗は出来るものだと考えてた。それがまさか四時間で一つの文明が崩壊してしまうなんて誰が予想できようか。

 しかも、その文明は異世界の恩恵を享受し、他の国では類を見ない躍進を遂げているにもかかわらず、だ。

 

 「しっかり抵抗出来てこの時間よ。近づかれた時点で帝国に勝ち目はないの。おまけに、あの世界樹はエルフたちの生命を司る神様であるとともに、知識の化身でもある。今してるあたしたちの会話も筒抜けかもね。愚直とののしられようが腹を裂かれてでも、喉元に食いつかなければ勝機はない」


 いつもふざけた調子のモニカだったけど、最後のセリフに俺はロイアスの面影を見た。


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