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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第四章 第二の厄災、天空の世界樹
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防衛目標

ーーーーーーーー佐倉涼太ーーーーーーーー


 最後に皇帝陛下に連れてこられたのは宮廷の地下だった。

 カリキュラムを終えて、後は明日に備えるだけとなった俺たちに、どうしても見せたいモノがあると、皇帝陛下たっての希望でここに赴くことになった。

 実際はまったくそんなことはないんだけど、スチームパンクな世界観を彷彿とさせる入り組んだ構造の通路の先にあったのは、地下にあるとは思えないほど巨大なフロアだった。

 まあ、パイプと歯車がたくさんついてたらスチームパンクっぽく見えるとか、蒸気機関まったく関係ない浅はかな思考でそう見えただけだから、色々な異世界の技術的要素が重なって、地球じゃ考えられない仕組みになってる建造物と捉えてほしい。

 とにかくそこには巨大な黒い球体状の物体が存在していた。


 「これがエルフたちが狙っているエネルギーの源だよ。我が帝国の電力の全て賄っている。いわば、発展の礎だ。最初に誓約を交わした異世界人が生涯をかけて開発した魔導コア。僕には構造なんてさっぱりだ。だが、これの中では膨大な量の魔力が生成され、僕たちの生活を支えてくれてる」

 「ここ半年の管理はあたしに一任されてるの! 偉いでしょ? 一応マニュアルはあんだけど、ここの連中全部は理解できてないんだよね。まー、概念の話から始めなきゃだし、そのへん端折ってるから仕方ないっちゃ仕方ないんだけど」


 一応、肩書きがこのフロアの責任者であるモニカも同伴している。

 皇帝陛下が、「えっくるの?」という顔をして渋々承諾したところを見るに、ロイアスだけにじゃなくモニカにも苦手意識を持ってるようだった。

 さすがは遠縁だが血の繋がりがあるだけある。皇帝陛下に逆らえるのはこの二人だけだろう。


 「これほどの規模の施設を地下に造って大丈夫なのか? 尋常ではない魔力が内包させている。こんなものが暴走したら上にある宮廷どころか帝都全てが無事では済まない」

 「ぐへへ、オーステアちゃんさすが! 目の付け所が違うね」


 いい加減慣れたのか師匠は涎が垂れてきそうなモニカの鼻の下を伸ばした顔を間近にしても動じた素振りを見せなかった。さすがである。


 「危険水準が限界に達したと判断された場合、自動的に内部に仕込まれた転移魔法が発動し、北にある荒野に施設ごと飛ぶようになっているらしいよ。といっても、作られてから今までそんなこと一度たりとも起こってないし。まあ、安全面に問題はないよ。それより今重要なのは、エルフがこのコアを奪い、世界の中心とやらに向かおうとしていること」

「その世界の中心がどこだか気になるけど、あの空飛ぶ世界樹がこれなしじゃ一週間かけても届かない場所にあるってのは確か。どういう原理で浮いてるのかワクワクするよね」

「なるほど、私たちの最終目標はこの魔導コアがエルフたちの手に渡らないようにすることか」


 皇帝陛下が師匠の言葉に頷いた。


 「そして、我が帝国の戦力では敵の頭を迅速に叩く他ない。君たちには嫌な役を押し付けてしまって申し訳なく思ってる」

 「なに、私たちが選んだことでもある。それに……正直なところ、私はこの世界での自分の立ち位置に悩んでいたところだった。最初は弟子たちの成長を見届けるだけのつもりだった。今の私はそれ以上を望んでる。この世界に少し愛着が湧いたみたいだ」

 「そう言っていただけるとありがたいよ。この世界の神様も、オーステア様のように愛らしくて優しい神様だといいんだけど」

 「えっ! 皇帝陛下もしかしてロリコンなの!?」

 「そういうことじゃないよね!?」

 「いいよー、いいんだよ、かくさなくて。あたしそういうの寛大だから、ぐへへ!」


 皇帝陛下にロリコン言えるのも、この変態生物モニカぐらいのものだろう。

 それにしても、ジークリットといた頃もそうだけど、師匠は段々とこの世界に惹かれていってるようだ。それが良い兆しなのかはわからない。俺はこの世界が好きかと聞かれたら、少し前なら嫌いと答えていただろう。今はちょっと分からない。だけど、これだけは言える。パーティーのみんながいなかったらこの世界のどこにも俺の居場所なんてない。

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