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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第四章 第二の厄災、天空の世界樹
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皇帝陛下の苦悩

ーーーーーーーー佐倉涼太ーーーーーーーー


その後、俺たちは円卓を囲んで詳しい事情を聴くことになった。

ゼフたちからすれば、調度品の一つをとっても物珍しいようで、車にいたときよりも落ち着かない様子だ。それもそのはず、俺たちの世界からしたら帝国と王国は千年以上の文明の開きがある。

それを成したのは、異世界人。

地球に似た発展の仕方をしている部分もあるけど、やはり細部は異なっている。

大きな違いをあえて述べるなら、魔力がそこかしこで運用されている点だろう。まさに科学と魔術の融合である。

この世界でのカテゴリーでは、道具を用いる魔術全般が錬金術に割り当てられている。道具を頼った魔術は未熟者の烙印を押されて蔑視の対象となる風潮があるのだ。だから、トリュン王国では錬金術がそれほど発達していない。

だけど、ゲルシュ帝国は違うようだ。

フリージアが錬金術に傾倒していたことからも分かり切ったことだった。しかし、改めてこうもふんだんにその要素が盛り込まれているとさすがに驚きを隠せない。


「がーっはははは!これだ!これを待っていたのだ!」


俺たちは食卓を囲んでいるわけじゃない。なぜかロイアスの前に山盛りのチャーハンが置かれた。


「こんな食い意地をはったやつがあたしの世界の神様だなんて耐え難いことね」


モニカが嘆いた。


「メシは食える時に食うものだ!がーっはははは!おまえらも食ったらどうだ?俺様のはやらんがな!」


異世界でチャーハンにお目にかかることができるなんて!

感涙の極みのはずなんだけど、吸血鬼になって味覚が変化したせいか、むしろ香ばしい匂いが鼻についた。

今はとにかく肉、肉、肉!生に近いほど尚いい。そもそも食欲が人間だった時ほどない。まだ覚醒してない篠塚とマテはまだそういう欲求が色濃く残ってるみたいだ。


「礼儀のカケラもない男のことは放っておけ。僕は君たちに大いに期待してるんだ。世界の存亡の危機というやつさ!まったく、いきなりスケールでかすぎか!」

「なんか……あんまり皇帝っぽくないね、この人」


隣に座っていたラルフにマテが耳打ちしたんだけど、俺たちどころか皇帝陛下にもばっちり聴こえていた。


「申し訳ございません。ロイアス様の食事の音がうるさくて邪魔になってはいけないと思いまして、会話が聞こえる範囲を操作しました」


ジュウリは特に反省してなさそうな表情で頭をさげた。

どうやら彼女は攻撃の範囲を自由にカスタマイズできるだけじゃなく、音の聞こえる範囲を拡げることもできるらしい。想像以上に便利なスキルだ。音割れもなく、まるで耳元で囁かれたようにマテの失言を拾うことができた。

涙目になって俯くマテ。


「別に気にしないでいい。僕だって皇帝になるつもりなんてさらさらなかったんだ!穏健派の日和見主義者でいたかったんだよ!それがどうだ。急進派のやつらは毎日毎日戦争戦争、どうせ誓約のせいで無理だってわかってるのに飽きもせず同じことばかり口にして。あげくに誓約を破棄するための研究に国費を使いこもうとしやがって、いい加減僕はキレてしまったのさ!あいつら一族郎党一人残らず処刑して根絶やしにしてやったわ!」


早口でまくしたてる皇帝陛下。あまりの白熱具合にロイアス以外はしんと静まり返った。

いや、だってさらりと恐ろしいこと口にしたよ、この人。

その中で、すっと師匠が挙手する。


「穏健派と言ったが、過激派の間違いではないか?」


もうちょっとまともなフォローの仕方なかったんですかね、師匠。

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