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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第四章 第二の厄災、天空の世界樹
158/384

実は偉いぞゴスロリ女

――――――――佐倉涼太――――――――


 ぼさっとしていたのは俺と篠塚ぐらいなもので、マテでさえ迅速に車から離脱した。最近周りの強さのインフレが激しすぎてすっかり忘れていた。みんな名こそ知れ渡ってないけど手練れの冒険者なのだ。危険予知はお手の物というわけで……俺は首根っこをゼフに掴まれて、篠塚はテューンにお姫様だっこされて危機を脱した。

 実はあれはジョークグッズで、俺たちをびびらせるための熱烈な歓迎なんじゃないかという淡い期待も虚しく、車は爆ぜ、火は燃え広がった。熱烈という意味だけだったら間違ってないかもしれない。

 

 「な、なんだ、敵襲か!」

 「ぬあー! バカモン! ほんとにぶっ放すやつがおるかー!」


 ロイアスの罵声が聞こえる。

 あのロイアスでさえこの狼狽えようである。


 「ぐへへ、異世界の兵器をどうしても試し撃ちしたくてね! ちょうどいいとこにロイアスくんが帰ってきたから試さないわけにはいかないっしょ! いやぁ、よくこんなもの思いつくよねえ!」

 「俺様には撃っていいが、妹たちを巻き込むのではない!」


 俺様には撃っていいんだ……。

 ロケットランチャーをぶっぱなしたゴスロリ女がまた気持ち悪い笑い方をする。金髪ツインテールに綺麗な藍色の瞳、そのうえ超絶美少女。なんというか、ギャップがひどい。


 「あれ? もしかしてお客さん? 増援?」

 「そうだ。俺様が連れてきた」

 「えっ、うそ!? ロイアスくんがまともに助っ人連れてきた! すごい! 信じられない!」

 「その通りである。俺様はすごいのだ!」

 

 得意げに胸を張るロイアス。さっきまで怒ってたのが嘘のように上機嫌になる。客観的には馬鹿にされてるようにしか見えないが。

 いきなりの歓迎を受け、呆然としている俺たちにゴスロリ女が駆け寄ってくる。


 「ふむふむ……超かわいい、かわいい、キレーイ、うわっ超絶かっこいい、ちっちゃ……いや、でか! 特になし、ゴリラ」


 師匠、篠塚、テューン、ラルフ、マテ、俺、ゼフの順に感想を述べる。

 俺だけ特になしってひどくない?

それに一人顔じゃなくて胸の感想になってるし。


 「ちょっと待ってくれ、ゴリラというのは聞き捨てならない」


 幼馴染に対しての悪口にテューンが文句を言った。ゼフはそんなに気にしてなさそうだったが、なぜかテューンのほうが気に入らなかったらしい。


 「え? じゃあ、ちょい渋ゴリラ。あたしのタイプじゃないもん」

 「それならまぁ……いい」


 いいんかい。

 少し顔を赤くしてるテューンは結局何が言いたかったのか。


 「ちょっと、ちょっと、ちょっとー! なんかすごい音したんだけどまた何かしたの!」


 騒ぎを聞きつけて、色々な人間が集まってきた。むしろお出迎えがなかったことが不思議だった。集まってきたところを見ると宮殿なのに閑散としているわけじゃなさそうだ。


 「勘弁してよぉ! 明日の準備で大忙しなんだからさ!」


 他の人より豪華な衣装を着た男がゴスロリ女に詰め寄る。黒髪黒眼で馴染みやすい人の良さそうな顔をしてる。


 「いいじゃん、減るもんじゃないし」

 「いやいやいや、減ってる減ってる! 弾と車と地面に、僕の精神がね!」

 「あぁー、皇帝くんの精神は勘定にいれてなかった」

 「他のも勘定に入れて!」


 ゴスロリ女に皇帝の地位は脅しにもならないみたいだ。悔しそうな表情を浮かべてるが、全然反省してない。

 というか、なんだか締まらない感じで皇帝陛下とご対面してしまった。


 「ロイアス、とりあえず君にとって不本意であろうが二人を紹介してもらえないか?」


 なぜ俺様がそんなことやらないといけないのだ、と駄々をこねられると思いきや、意外にも素直に応えてくれた。


 「そこのバカはモニカ。そこのなよなよとしたバカはアル……あーる……なんとかだ」

 「アルフォンスだ! いい加減覚えてくれないかなぁ……一応皇帝なんだけど?」

 「いちいち細かいやつだ」

 「名前は細かくないよね!? 別に長い本名覚えてほしいわけじゃないんだけどなぁ……」


 皇帝陛下は想像に反して苦労人みたいだ。

 ロイアスとこのゴスロリ女がいれば半月ももたず禿げ上がるかもしれない。


 「お初にお目にかかります。私はオーステアと申します。早速の無作法をお許しください。帝国の流儀には疎いものでして」

 「別にいいよ。僕も成り上がりだし。堅苦しいのは苦手だ。部下には威厳がどうとか口うるさく言われてるけど」

 「オーステアちゃん、よろしくぅ! ぐへへ、可愛い女の子は大好物だよ」


 ゴスロリ女は師匠がドン引きするほどの変態である。


 「君も異世界人なのか?」

 「あたし? そうだよー、しかもただの異世界人ではないのだー! なんと私は神を召喚した偉大なる異世界人なのだよ!」


 ロイアスに注目が集まる。遺憾の意を全身から醸し出していた。


 「このバカに召喚されたことが我が生涯で最大の恥辱である」


 え? むしろ適正では?

 神が召喚されたなら、神を召喚した人も存在する。当たり前のことを失念していた。だったら、師匠を召喚した人は今どこにいるんだろうか。そして、その人は誰なんだろうか。

 一瞬、そんな疑問が頭をよぎった。

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