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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第四章 第二の厄災、天空の世界樹
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誓約

ーーーーーーーー佐倉涼太ーーーーーーーー


 俺たちは車の中にいた。巨漢のロイアスも座れるほど大きなキャンピングカーだ。

 地球にいた頃でさえ乗る機会がなかったのに、まさか異世界に来て初体験するとは……しかも、運転手がジュウリであることにさらに度肝を抜かされた。


 「この車は土禁だ」


 まさかのロイアスの土足厳禁発言にアゴが外れそうになる。泥だらけの靴のままベッドに足を投げ出すという勝手なイメージが崩壊する。


 「汚すと俺様のメシが減らされるのでな、がーっはははは!」

 「すっかり飼いならされてるっすね」


 それもこれもメシのためのようだ。それを笑うリトゥヴァの手にはポテチののりしお味があり、それをさっきからボリボリ食べている。

 あまりの情報量の多さに頭がパンクしそうだった。

 みんなも最初は車に乗ることに戸惑ってた。今も揺れる車内で五人がそわそわしてる。馬車より早く流れる風景に釘付けだったり、その風景の中にある色々なものに目移りしたり、師匠なんかは年相応の子供のように見えた。


 「これだけ他国と技術力に差があれば世界を手中に収めることも絵空事ではないだろうに」

 「俺様も同じことをヤツに言ったぞ。どうも最初にこの国を繁栄させた異世界人と誓約を交わしたようだ。この国の平穏を約束する代わりに、今後一切領地を広げてはならんと。植民地は当然、属国もダメだ。許されておる戦闘行為は帝国を害する個人、または組織に対してのみに限られる。実につまらん国だ。そんなもの破ってしまえばよいのだ」

 「だが、できないのだろう?」

 「がーっはははは!本当に察しがいいな!」


 スムーズに会話が進むことに気を良くしたロイアスは鼓膜が破けそうな大音量の笑い声をあげる。師匠と話している時は一際うるさい。随分気に入ってしまったらしい。


 「もう少し加減できないのか?」

 「人間が俺様に気を使うことがあっても、俺様が人間に気を使うことなどありえんな、がーっはははは!」


 テューンが果敢にもクレームをいれるが、聞き入れてもらえるどころか追加が入ってしまう。


 「最初の異世界人と交わした誓約は、ただの口約束や落書きの類ではない。魔法がかけられた誓約書である。俺様の力で破っても、すぐに復元されてしまったわ。あれがある限り、この国はおのれから戦争をふっかけることができんのだ」


 そういえば、フリージアもチラッとそういうことを言ってたような気がする。さして重要なことでもないような調子で暴露していたから記憶に薄かったけど、国家機密レベルだよねそれ。


 「この国は文明だけは発展しておるが、俺様からすれば退屈極まる国である」

 「その割には、妙に肩入れしているではないか」

 「当然である。メシがうまい国に悪い国はないのだ!」


 あまりに稚拙で子供じみた理由に師匠は目をパチクリさせる。そして、吹き出した。


 「とんでもないやつだが、君のことが少し気に入ったよ」

 「がーっはははは! 他のやつなら小突いてやるところだが、俺様もおまえが気に入った。何やら底知れぬ強さを秘めてるところもそそられるぞ。力を取り戻したら必ず俺様と戦え。身体中の血が沸騰する戦いを期待できそうだ」


 そんな会話をしているうちに、車は宮殿へとたどり着いた。

 これほどの文明を持ちながら宮殿で内政を執り行っていることがあまりピンとこなかった。たぶん、地球じゃ国境も跨いだこともなかったせいだ。俺がいた時代でも王政が健在な国はあったはずだし、しっくりこないのは単に俺がモノを知らないだけだ。

 でも、宮殿の入り口でゴスロリを着た少女がロケットランチャーを担いでこちらを狙いすましている光景に関してはやはり現実味がなかった。


 「確かあれ、アールピージーって言ったっけ……」


 そんな俺のとぼけた調子は弾が発射されるまで続いた。

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