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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第三章 獅子公ロイアスとカントのはぐれ者
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黄金の裸

ーーーーーーーー佐倉涼太ーーーーーーーー


表現するならそれはまるでブラックホールのようなものだった。

ロイアスに着弾した瞬間、それはそのあたりに落ちた剣ぐらいなら易々と吸い上げる吸引力を発現させた。下手をすれば、俺たちまで引きずりこまれかねない。敵味方問わず全てを飲み込むまでとまらないんじゃないかと、そんな恐れを抱かせるほど膨大な魔力を込められたその黒い球体の直撃を受けたロイアスは、全てを受け入れる寛大さを示すがごとく両手を広げてただ笑った。

師匠の行動は迅速だった。

地に伏したままのゼフを回収し、範囲の外まで離脱する。あれが何なのか知ってるからこそ事が起こる前に動けた。師匠の世界にいた魔王がもつ『闇魔法』のスキル。その恐ろしさを師匠は身に染みて知ってるんだ。

黒い球体はロイアスの全身を包み込み、やがて近くの木ぐらいなら根ごとかっさらっていくぐらいに成長した。


「なんだこれ!めちゃくちゃだ!」

「大丈夫?安全なとこに連れてくからね!」


篠塚に担がれて、テューンがぐったり倒れてる位置までなんとか退避する。

離れていてもこれほどの威力なんだ。直撃をくらったロイアスだってタダじゃ済まないはずだ。

肥大化したどす黒い魔力の塊は段々と収束しはじめ、そこにあったもの一切合切を無に帰したことを俺たちに見せつけた。地面はくり抜いたように丸い穴を開け、断層をのぞかせる。そこにあった木々は姿形もないものとされた。ただ一人を除いて、そこには生命というものが存在しなくなっていた。

そう、ただ一人を除いて、だ。


「敬服に値する。俺様の生涯においてこれほどの絶技、堪能したことは一度たりともなかった」

「ありえない……」


笑うしかないのだろう。ラルフは戦意を失っていた。絶望を色濃く映した虚無的な笑いを浮かべて。

金の鎧が剥がされ丸裸になった男が、腕を組んで堂々たる姿勢でそこに立っている。分厚い鎧に覆われていた筋肉は想像を遥かに上回る質量を備えていて、おおよそ人間では到達することができない領域のものだ。

そして、下半身のモノを少しも隠そうとしない自信に満ち溢れたオーラがまばゆい。


「礼を尽くそう。俺様を殺しうるおまえにだ。十の英雄に挑まれようとも、百の英雄に挑まれようとも、勝利は揺るがない。たが、たった一人の英雄なら、その刃は心臓に届きうる。父と母より一つずつ貰い受けた加護だ。俺様には敵が多ければ多くなるほど強くなる加護がある。不滅の加護、母より賜りし贈り物だ。最初から一人で戦っていたら、勝利はおまえの手にあったかもしれんな」


なんということだ。初見殺しにも程がある。途中から急激に強くなったのはこういうことだったんだ。

つまり、俺は足手まといどころか、敵に手を貸してたと変わらない悪手を打ってしまった。そんなこと誰が予想できようか。

ロイアスが歩み寄り腕を上げ拳を作ってる間も、ラルフは抵抗する素振りを見せなかった。そして、ラルフの前に来た瞬間、その拳はラルフの肩に置かれた。


「殺しはせん。ここからは話し合いである。ようやくあの生意気な男に会わせても恥じぬ者たちに出会えたのだ。色よい返事を聞かせてもらおう、がーっはははは!」


これだけのことをしておいて色よい返事を期待してるとかどんだけ脳筋なんだこいつ。


「すまん、さすがに私も混乱しているんだが」

「む!よく見るとおまえ、魔力が枯渇状態ではないか!俺様と同等の気配に心を躍らせてきたというのに、これではこけおどしではないか!」

「私には私の事情がある。とりあえず、今重要なのはそちらの事情ではないか?」

「がーっはははは!そのとおりである!」

「それではまず、君は誰かの頼みでジークリットを探していたのか?」

「そうであって、そうではない。猫の手も借りたいというからそのへんの適当なやつを捕まえてこようとおもっただけだ。ご褒美もくれるというからな」


師匠が混乱している理由が段々俺にも分かってきた。そして、それをはっきりさせるために聞かなければならないことも。


「そのご褒美をくれる相手というのは誰のことだ?」

「なまえは覚えておらんな。なんといったか……ゲルシュ帝国皇帝という肩書きを持っておったな。かなりでない国の王であるな」

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