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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第三章 獅子公ロイアスとカントのはぐれ者
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魔王の資格

――――――――佐倉涼太――――――――


 「スキルの名は『闇魔法』。魔導の真髄に至ったとされる者でさえ到達できなかった深淵だ。そして、それはかつて魔王と呼ばれた男が持っていたものだ」


 ラルフのスキルの正体を師匠が明かす。ラルフに纏わりつくように蠢く黒いオーラはその『闇魔法』によるものなのだろう。その禍々しさは確かに魔王と呼ぶにふさわしい。スキルを使用することをラルフが嫌った理由が分かった。見ているだけの俺でさえ魅入られ溺れそうになる。さすが魔王が所有していたスキルというべきか。


 「面白い、面白いぞ! がーっはははは! 楽しみがまた増えたぞ。久しぶりだ。俺様の加護を突き抜ける攻撃を受けるのはなぁ!」


 驚くべきことにラルフの一撃はロイアスに届いたようだ。衝撃が加わった部分は凹むどころか微細な傷もない。だけど、勝利への兆しが見えた気がした。

 ロイアスの能力は、まるで全身が透明な壁に覆われた、と表現するのは正解じゃないだろう。攻撃が到達する間際に慣性を無視して停止するのだ。人智を超えた意思によって阻まれているかのよう……いや、ロイアスはそもそも神だ。ロイアス自身が人智を超えた存在なのだ。


 「俺様を倒せるとしたら、それは強大なパワーに他ならん! 孤軍奮闘し死地から生還する勇ましさこそが俺様の心臓を穿つことができる。さあ、もっとだ。もっと俺様を楽しませろ!」

 「あいにく付き合ってる暇はない。ラルフ、おまえのおかげで希望が湧いてきた。微力ながら再び剣を握らせてもらう。ゼフに突き刺さった槍も抜けたことだしな」

 「む、今の衝撃で魔力を送るのを怠ってしまったか。それにしても女、その槍を片手で持ち上げるとは、おまえもなかなか侮れんな!」


 テューンの手には黄金の槍があった。片手で軽々と扱ってはいるが、それを地面に落とした時のずんっという重々しい音が、普通の人間では抱えることすら難しいことを教えてくれる。

 胸の大きな穴は塞がりきっていないが、テューンの隣にはゼフの姿があった。痛みで顔を歪ませてはいるが、ゼフにも戦う意志が残っているようだ。


 「仲間をもつというのは素晴らしいことである! 存分に戦うがよい! それでも、やはり最後に立っているのは俺様以外にはあり得ないな、がーっはははは!」

 「その耳障りな高笑いを二度とできないようにしようか」


 黒いオーラを刃に走らせ、ラルフの一閃がロイアスを斬る。

 

 「牽制の斬撃など俺様には無意味だ! 全て全力で打ち込んでこい!」


 ロイアスの拳をかわし、後ろに下がるラルフ。その際に、ラルフは黒い霧をロイアスの全身に浴びせた。


 「小細工は好かん! 呪いなど俺様に効くわけがなかろう! だが、器用なことは褒めてつかわそう、がーっはははは!」

 

 ラルフに気を取られている隙にテューンがロイアスの背中に斬撃を見舞う。『魔鉄錬成』によって鍛錬された剣は、テューンの『原子操作』のスキルによってさらに強度を増している。

 だけど、ロイアスの鎧を突破することは叶わなかった。


 「ほう! おまえもか! 素晴らしいぞ! 望みは薄いと踏んでいたが、これはまさに大豊作である! がーっはははは! 楽しい! 楽しすぎるぞ! もっとだ、もっと俺様を滾らせろ!」


 どれほどの攻撃を浴びようとも、俺の『竜体化』のスキルで灼熱した剣を受けても熱がりもせず、ロイアスはその不遜な高笑いとともにただひたすらに暴れまわった。

 それをよそに、ラルフはじっと耐えていた。何かを仕込んでいるのが俺のいる角度からは分かった。ロイアスに決して気取られないように虎視眈々と反撃の機会を窺っていた。

 

 

 

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