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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第三章 獅子公ロイアスとカントのはぐれ者
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謎解き

――――――――ロイアス――――――――


 「がーっはははは! 速い! 速すぎるぞ! 妹たちよ!」


 リトゥヴァとジュウリは俺様を置いてさっさと面白いヤツのところですっ飛んでいった。寛大な俺様はこの程度では怒らない。あの二人にやられる程度の実力ならそもそも俺様が出向く意味はないからである。試金石になるからこそ俺様のものをつまみ食いするような行為を許しているわけだ。

 まぁ、あれが妹たちなりの忠誠なのだ。

 俺様は気の向くまま、思ったことを言い、思ったことをやるだけ。

 ジークリットを探すのはとっくに飽きていた。森林浴というのものは結局いまいち理解できなかった。不味いメシも我慢の限界だ。俺様なりに頑張ったものである。それもこれも旨いメシにありつくためなのだ。だが、俺は食事と同じぐらい好きなものがある。

 戦いだ。つわものとの戦だ。血がたぎるほどの命の削り合いだ。数え切れぬほどの戦いを繰り返して、命に刃を突き立てられたのはほんの僅か。その感覚を今一度味わうために俺様は繰り返す。


 「間違いない! 俺と同じ気配だ! 俺のオヤジと同じでもある!」


 本当はもう帰るつもりだった。日暮れまで待つつもりではいた。しかし、いざその時間に帰ると決めるとその瞬間に冷めた。ウマイ料理が待ってると考えると居てもたってもいられなかった。だが、それすらも吹き飛んだ。


 「がーっはははは! これぞまさに、興奮のるつぼである!」



―――――――――佐倉涼太――――――――



 たった三分。されど三分。俺たちは焦っていた。


 「アハッ! まだそんな無駄なこと続ける気っすか?」


 リトゥヴァにかすり傷一つ負わせられない。この三分間リトゥヴァは俺たちの猛攻を凌ぎ切った。

早くなんとかしないと!

 ラルフのほうも決定打を欠いていた。押されているわけじゃない。だが、ジュウリの剣捌きがラルフを寄せ付けない。面妖な術を使うだけじゃない。間違いなく一級の剣術士だ。


 「くっ、こいつちょこまかと!」

 「油断するなよ! 死に戻りしてる余裕はねえんだ!」

 「わかってるよ!」


 前のめりのニャルニをリュウガが叱る。明らかにニャルニは踏み込みすぎていた。何度も彼女の喉元をリトゥヴァの刃が掠める。その度に、ゼフやヤンがフォローに入った。

 だけど、気持ちはわかる。このままじゃ要領を得ない。丁寧に立ち回ったところで現状は変えられない。

 実体はそこにあるのに攻撃がすり抜ける。ラルフはなんとなく本質を捉えているようだが、俺たちに論じられるほどじゃないようだ。攻略法を分かっていたらもう手を打っているはずだ。以前よりラルフは戦闘において多角的な視点を持っている。まさに戦いの天才だ。

 そうだ。多角的に見る必要がある。

 実体はそこにある。そして、ラルフが言った『存在を肥大させている』という言葉。それが正しい表現なのかは分からない。逆に考えるなら、リトゥヴァは存在を小さくさせるスキルを持っているということになる。


 「あー、なんつーくそげーだ!」


 不意に聞こえたその言葉。リュウガの言葉に、パズルのピースが当てはまった気がした。

 リトゥヴァはゲームの世界から飛び出した存在じゃない。だけど、あえて常識的な思考を排除して、ゲーム的な発想を踏まえると、彼女のスキルの正体が浮かび上がった。

 生体召喚で出現したクマがリトゥヴァを押しつぶそうとした時、彼女は体の軸をずらして右腕だけを攻撃の範囲から逸らした。

 ジュウリにブリ大根が真っ先に狙われたのは、いい加減な理由なんかじゃない。この二人はブリ大根の能力を知っている。範囲攻撃に優れた召喚士であることを。

 ブリ大根はリトゥヴァの天敵なんじゃないか?

 そう、実体はそこにある。


 「そうか……当たり判定ってやつだ」

 「当たり判定?」


 近くにいたマテに俺の呟きが聞こえていたようだ。

 

 「リトゥヴァはヒットボックスを極限まで小さくすることができて、しかもそれを体の中ならどこで自由に動かすことができる」

 「ヒットボックス……?」

 「要はほんの僅かな隙間もない全身をすっぽり覆うような攻撃ならリトゥヴァを倒せる」

 「……そんな攻撃誰ができるの?」


 そこなんだよなぁ。

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