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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第三章 獅子公ロイアスとカントのはぐれ者
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ジュウリの斬撃

ーーーーーーーー佐倉涼太ーーーーーーーー


「エルフを随分目の敵にしているようだけど私たちはあなたの主人に迷惑をかけるようなことをしたのかしら?」

「私の知り及ぶところじゃないです。しかし、何やら因縁めいたものがある節はあります。なぜなら、ロイアス様は私たちの世界においてエルフを根絶やしにしました。だから、私は結論づけるんです。エルフはどの世界でも悪虐非道である、と」


憎しみを込めるわけでもなく淡々とエルフを殺す理由を述べるジュウリの瞳はまるで人形のようで現実味がない。あの細腕で、あの脆そうな小剣で、どうやってブリ大根を斬り伏せたのか。


「回復は間に合いそうにねえか……」

「リュウガ、俺の遺言……聞いてくれるか?」

「縁起でもねえこと言うな。どうせ復活するんだからよ。とりあえず聞くけどな」

「俺、新しい名前をキアブリーヌスにしようと思うんだけどどうかな?俺の好きな俳優から文字った」

「……どうでもよすぎてたまげたなぁ、おい!」


ブリ大根はそう言い残して、光の粒子となって飛散した。話によると、ああなるとリュウガたちイグニスオンラインのプレイヤーは、この世界に転移した最初の地点に戻されるわけだ。ブリ大根の戦線復帰は望めそうにない。

最後に言い残した駄洒落みたいなくだらない遺言のことはそっとしておこう。


「初対面でここまで敵意剥き出しって初めての経験ね。これが人種差別ってやつなの?」


言葉とは裏腹に興味津々な様子でツェーリがマテに尋ねた。まるで異文化交流で物珍しそうにしている留学生みたいだった。

逆に聞かれたマテのほうが返事に困っていた。マテはさっきまでジュウリのエルフに対する極端な思考に今にでも食ってかかりそうな顔をしていた。言われた張本人がこうだから毒気を抜かれたんだろう。尖った口が緩やかなものになった。

まあ、それで問題が消えたわけじゃない。


「ジーク、すまねえが……女性たちを連れて先に逃げてくれねえか?どうにも雲行きが怪しくなってきた。俺たちならパーティー機能でどんだけ離れてようが後を追える。心配しなくていいからよ」

「リュウガ、私はそういうことを心配しているわけでは……」

「わかってる。そういうとこも含めて俺ら三人はあんたのことが好きなんだ」


いつもの本気なのか冗談なのかわからない演技じゃなく、真面目な顔でリュウガはジークリットにお願いをした。

一緒に行動する以上、俺たちは仲間だ。

リュウガの言葉はジークリットの思いでもあった。だからこそ、ジークリットはみんなを置いて逃げたくなかったんだろう。


「彼女を逃がすわけにはいきません」


その一言とともにジュウリは小剣を緩やかに振るった。一見、何気ない動作。だけど、ぞわりと身の毛がよだつ感覚。危険だ。何かがくる。

それを防いだのは、ラルフだった。

ジュウリとジークリットに挟まれる位置に立ったラルフは確実にその何かを防御した。それはジュウリとリトゥヴァの表情からも見て取れた。


「おそらくリトゥヴァとは逆の性質だね。存在を肥大させている、というか……彼女のもつ剣はその本来の間合いよりも遥かに長く、そして鋭く、頑丈だ」


ラルフは続けた。


「こっちは俺一人でやれるから、リトゥヴァのほうをなんとかできない?」

「えらく大きく出ましたね。たった二振りで、何が見抜けたというのですか?まったくもって、不愉快極まりないですね」


一人でやれる。そう断言したラルフにジュウリが怒りを露わにする。対するラルフは表情を崩さず涼しい顔でジュウリと対峙する。


「任せたぞ。こっちは俺たちがやる」

「……ありがとう、リーダー」


ラルフの提案をゼフが承諾する。初めてのやり取りだった。ラルフは今まで指示に従うだけだった。ゼフに言われたとおりにこなすだけ。自分から進んで物事を行う人間じゃなかった。

やはり偽名を捨て、本名に戻したことが絡んでいるんだろう。

そのあたりのことを今度聞いてみるのも良いかもしれない。でも、今はラルフと話すのは気まずい。俺自身の問題を片付けなければ、俺自身が納得する答えを見つけるまでは、きっと俺はラルフとまともに話すことはできない。


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