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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第三章 獅子公ロイアスとカントのはぐれ者
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ーーーーーーーー佐倉涼太ーーーーーーーー


「え?向かってくる?」


ニャルニの声のトーンがとぼけた調子になるのも致し方ない。そのぐらいさらっと師匠は重要な情報を口にしたのだ。


「師匠も人が悪いな」

「いや、私も焦っているつもりではあるんだが」


師匠は感情を表情に表さない時が多々ある。それが誤解を招いたり変に勘ぐられたりする傾向がある。俺やみんなも最初は師匠という人物がわからなくて距離感を測れなかった。今もそうであるには違いないけど、ようやく少しだけ掴みかけてきた気がする。


「オーステア様を信じます。向かってくるとおっしゃるのでしたら対策を打たねばなりません」

「察知されたのはおそらく私だけだ。私が単独で接触すれば何とかならないか?」

「それは難しいでしょう。ロイアスは欲の化身のような男です。確実にオーステア様を殺しにかかります。あれほどわかりやすい性格をした人物はそうはいらっしゃらないでしょうね」


たった一回出くわしただけでそこまで確信を持って断言されるとは、ロイアスとはどこまで単細胞で自分に素直なやつなんだ。いや、地球の多神教の神様たちもかなりいい加減な性格をしている場合が多いので、そういう視点から見たらロイアスはもっとも神様らしいのかもしれない。


「だったら俺らも残るか?元々客みたいなもんだ。失っても本来の予定からすれば痛手にはならないはずだ」

「なに言ってんだ。最低でも目的地にたどり着くまではあんたらも仲間だ。置いてくつもりはねえぞ!」


ゼフの提案をリュウガが却下する。

リュウガは普段はただの変態だけど、ここぞという時に頼りになる兄貴分になる。ニャルニとブリ大根が茶化しながらもリュウガに信頼を寄せているのも頷ける。


「だったら、二手にわかれるか?」

「その心配はないっすよ」


聞き覚えのない声に驚き、その方向に目を向ける。しかし、そこには誰もいない。代わりに、木の枝が擦れ合う音だけが耳を撫でる。

全員が沈黙を強いられた。ゾワっと背筋から汗が吹き出る。師匠も気配を辿れていないようだ。

咄嗟に手を伸ばした先の武器を抜く。心臓が動きを早め、体内の温度が上昇していく。今までにない異質な空気。敵らしき声の主が木の上にいるということだけが唯一の情報だ。


「ロイアスの気配はまだかなり離れているが」

「ジークリット、これは?」


とテューンが尋ねると、


「ロイアスには二人の従者らしき女性がおりました。この声はその片割れのもので間違いございません。しかし、まさか一瞬で距離を詰める術を持っているとは思いませんでした」


とジークリットは答えた。


「あの二人はのろいからまだまだ当分こないっすよ。でも、あたいが人数と顔を覚えたから、そっちの考えは無駄に終わったっすね!」


けたけたと子供じみた笑い声が響く。位置を特定できないのは最初の声とは違い、森全体がさざめくように鼓膜を揺らすからだ。まるで存在自体が朧であるかのように捉えどころがない。


「では、単刀直入に聞かせてもらうが目的はなんだ?」

「それはロイアス様の口からじゃないと聞かせらないっすねぇ。あたいはただ従うだけっすよ」

「ほう、ただ暴れたいだけではなく、何か目的があることは確定したな」

「……あー、あはははは!オーステアさんは面白い人っすね!うっかり口を滑らせたいのは山々っすけど、代わりに敬意を表して自己紹介させてもらうっす」


そう言うと、まるで霞のような存在が輪郭を持って姿を現した。

木の枝に足を引っ掛けて宙吊りになってるその子はあまりにも隙だらけで、子供のような無邪気な表情をしている。だけど、その目はまるでガラス球のように透明な翠で、白目の部分は一切ない。髪も同じ色をしていて全体的に容姿は幼い印象を受ける。

服もゆったりとした緑色を基調としたデザインで、シルクのような素材を使用している。わかりやすく例えるなら、彼女はまるで精霊か、そうじゃなければ妖精だ。


「あたいはリトゥヴァ。以後お見知り置きを」

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