ブリちゃんは改名したい その2
ーーーーーーーー佐倉涼太ーーーーーーーー
「とりあえず今の名前を一部含んだ形のほうがいいですよね?」
「あ、そうだね。たぶん改名しても私はブリちゃんって呼び続けるし」
適当に思いついたことを言うとニャルニが賛同してくれた。
よし、じゃあ最低限の仕事はしたから後は任せた。そう言いたいところだけど、そういうことにはならないようだ。三人は未だ俺に注目している。
「じゃあ、ブリを含んだ名前ってことか」
「でも、ブリっていうと女性の名前しか思い浮かばないね。ブリジットとかブリトニーとか」
「おまえ……それホントの年齢バレるぞ……」
「はぁ!? なんでそんな話になるのよ!」
リュウガの指摘に慌てたように声を上げるニャルニ。ブリジットもブリトニーも知らない俺は首を傾げるばかりだった。俳優か何か有名人なのだろう。ここが日本ならスマホで検索していたところだ。
「別に人名にこだわる必要ないんじゃないかな。ニャルニさんだって違うわけだし」
「それもそうだ」
ブリ大根がうんうんと頷く。自分のことなのにまるで他人事のような振る舞いだ。
あんた考える気ないだろ。
「頭にブリってつける必要もねえな。ケツにつけてもいい」
リュウガがそう言うと、ニャルニが続けた。
「あっ、じゃー別の生物の名前と組み合わせてみるのはどう?」
「というと?」
「たとえばゴキ……」
「てめえ、ニャルニ! まじめに考える気あんのか!」
なにを言わんとしているか察したブリ大根はノータイムでブチ切れた。
心外とでもいいたげな表情でニャルニは立ち上がったブリ大根を見つめた。証言を求められれば、明らかに故意的だったと言うところである。
「はあ、自分から相談持ちかけといてなんなん、その態度?まじ萎えるわー。名前なんてどうでもええやん」
「えっ! このタイミングでそれ言う!?」
「なんか文句ある?」
「いえ……なにもございません」
怒鳴ったほうのブリ大根がいつの間にか叱られる立ち位置になっていることから、彼は尻に敷かれるタイプの男性なんだなと納得する。
結局、魔族領にたどり着いてから考えるという結論に至り、ブリ大根の改名は延期となった。