ツェーリとマーリン その2
――――――――マテ――――――――
「大丈夫、そんなことで友達やめないよ。むしろ、私なんかがツェーリの友達だなんて恐縮しちゃうぐらい」
「そんなことない!マテは小さくて可愛くて、あんまり積極的じゃないけど胸がでかいし!」
「そこで胸がでかいこと言っちゃう?」
こんなもの邪魔としか感じたことがない。うちのパーティーはラフィカがキョドりながらたまに目を逸らすぐらいで、ゼフは一切関心をもたないし、リョウタもお年頃だけど興味がないらしい。だけど、街を歩く時は視線がすごかった。それだけで疎ましくなるには充分だ。
私がファッションに少しだけうるさいのは貴族時代の名残だし、別に男性にちやほやされたいとかいう意図はない。というか、みんなが頓着しなさすぎなんだ。
「でもまあ、ほんとサイテーなやつだよ私は。ウルリカ様にも申し訳ないことをしたし……今にしてみればただの八つ当たりなんだと思う」
「どうしてそう思うの?」
「『夜よりも暗い闇』に飲まれて、私と血の繋がった人はみんないなくなっちゃった。心のどこかで、父親のことをまだ少しだけ父親だと思ってて、家族のことまだ家族だと思ってて……私はあの人たちとのいさかいに、決着をつけれていなかった。逃げ出したのは私だし、こんなこと言うのも身勝手だってわかってる。周りに当たり散らしてみっともなくて……ただだだ自分の未熟さと浅はかさに腹が立って仕方ない!」
自分の気持ちを言葉にしていくうちについ感情的になってしまった。自分の気持ちが整理できなくて、もやもやしたものが胸にうちにある。それが声にだすにつれて浮かび上がって、後悔が押し寄せてくる。
「自分が許せない。私は……嫌な人間だ……」
「ううん、マテは嫌な人間じゃないよ」
優しく、穏やかな声で何の躊躇もなくツェーリは言った。そして、ぎゅっと私のことを抱き締めた。抵抗しようとしたけど、手に持ってたカップのせいで成すすべなく許してしまう。
「マテが本当に嫌な人間なら、自分のことそういう風に言わないよ。そういう風に言えるってことは、両親からほんの少しでも愛を受け取ったって証拠だと私は思う。間違ってたらごめん。マテはきっと両親からの愛が欲しかったのよ。だけど、もう二度と叶うことのない願いだから辛いんだよね? マテ、私はあなたのことを嫌いになんてならない。だから、泣きたいなら泣いていいのよ?」
冗談じゃない。誰があの人たちのことで泣いたりするもんか。辛くて苦しい思い出ばかりで私はいつだって救いを求めていた。誰も助けてくれないと理解して、家を飛び出すまでずっとそうだった。
だけど、私の両目から頬を伝うものが流れた。認めなくなかった。だけど、どれだけ我慢しようとしても、一度流れたそれを堰き止めることはできなかった。
「私が……私が男だったら! 家族は私を愛してくれたのかな?」
ずっと胸の内に秘めていたものを私は抑えきれなくなって口にした。認めるしかなかった。私はあの家族に愛されたかったのだと。