通路で反省させられる二人
ーーーーーーーーゼフーーーーーーーー
「おまえら何やってる?」
アジトの中をテューンと歩いていると、全身を縄で縛られて座らされたリュウガとブリ大根が懇願の眼差しを俺たちに向けていた。
「亀甲縛りで正座させられている。見たままだ」
「俺は無実だ。助けてくれ。冤罪だ」
さも当然のことのように主張するリュウガ。冤罪を主張し助けを乞うブリ大根。非常に悩ましい光景だ。こいつらが仕出かしたことについて知る必要があるわけだが、心底どうでもよかった。テューンも同じ気持ちらしく、渋い顔のまま二人に冷ややかな視線を向けている。
「正直なところ緊縛プレイというものに、さして興味があるわけでもなかったわけだが……いざ縛られてみると、これはイイものだな」
吐息まじりにリュウガが語る緊縛の初体験にどう反応してやればいい?
「どぎついな……縛り方が足りなかったせいだろうか?」
率直な感想を漏らすテューンだったが、
「そんな……これよりもっとすごいなんて……どうにかなっちゃいそう!」
と勝手に盛り上がるヘンタイに嫌悪感を隠しきれなくなった。
「で、なんでそうなった?」
「ああ、久しぶりに日本人を見て懐かしくなってな……俺たちはこの世界に来てからこんなナリだしよ。ニャルニ、あいつ耳ついてるし、中身ババアだし、つい覗いてしまったんだよ……お着替えのシーンをな……」
「つい?トモエの着替えを盗み見たのか?」
「気持ち悪すぎて無理だぞ、こいつら」
テューンが苦言を呈する。確かに同族うんぬんのくだりは俺も擁護できない生々しさで圧倒されてしまった。マゾヒストな一面も相まって、女であるテューンには受け付けないのも無理はない。俺でさえ軽く引くレベルではなかった。
「ま、待って!俺は冤罪だ!」
「言い訳するな。みっともない」
ブリ大根が必死で自己弁護しようとするが、テューンのドスのきいたどぎつい声に口を噤む。
「……はぁ、なんというか、こいつらを見てると気を張ってた俺がバカみたいになるな……」
「そう思うなら感謝して縄を解いてくれてもいいんじゃないか?」
「は?」
俺が何かを言い返す前にテューンの爪先がリュウガの脇腹にめり込む。激痛に体を曲げるが縛られているので、代わりに釣り上げられた魚みたいな動きをする。
「ゼフ、いこう」
「あ、ああ……」
「次なにか喋ったらおまえの大事な部分を蹴り上げる」
最高に冷え切った声色でテューンが最後に脅しをかけた。俺には関係ないことなんだが、少し自分の下半身がそわそわした。
その場を後にする際、
「俺は冤罪なんだよぉ……」
という嘆きの声だけが虚しく響いた。