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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第三章 獅子公ロイアスとカントのはぐれ者
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対面

ーーーーーーーー佐倉涼太ーーーーーーーー


アジトの中は意外と整理されていて、盗品だろう調度品で装飾されていた。大広間には大きなテーブルがいくつか配置されており、なかなかの大所帯であったと想像させる。

だけど、この環境を作った当の本人たちはすでにこの世にはいない。代わりに、四人の異人によって使われている。


「なるべく血は出さないように処理するつもりだったんだけど、そう簡単にはいかなかったのよ。ところどころまだ汚ねえけど我慢してくれ」


そう言ってどかっと椅子に腰掛けるリュウガ。言われて気づいたが目立たないけど確かに血の飛び散った跡が見られる。

やっと日差しの少ないところに来れたので、篠塚は日差し対策に着込んでたフードやら手袋やらを脱ぎ始めた。


「にわかに信じがたいけど、やっぱ日本人だな。あとで色々話を聞きたい。もしよかったら時間作れるか?」

「それはこれからの展開によると思う。俺は賛成だよ」

「わ、わたしも色々話を聞きたいです」

「ありがとな。あと二人を解放してやってくれないか?そいつらもここまで来た以上、どうこうするつもりはないから。そうだよな?」

「もしジークちゃんに何かあったら、リュウガあんたタダじゃ済まさないから」


険悪なムードを漂わせている。ニャルニもブリ大根も不満を露骨に顔に出していた。だけど、リュウガの言ったとおりもう戦う気はないみたいだ。


「ジークはもうしばらくしたらここにくる」


指示を仰ぐために師匠に目配せすると、師匠は二人の縄を解くよう促した。拒否する理由もないので俺は大人しく従った。ゼフは待望の瞬間を前に意識をそこには向けてなかった。縄を外すのに多少手間取ったけど、なんとか二人の手を自由にしてあげることができた。本当はゼフに手伝って欲しかった。でも、ゼフの気持ちを考えると仕方ないことだ。

絶望の淵に追いやられ、一度は諦めた復讐の相手が、闇に沈んだ真実が、ようやく手の届く場所にやってきたんだ。

そして……。


「お待たせ致しました」


関係のない俺でさえ緊張が走り心臓が早鐘を打った。当事者であるゼフはどれほどのものだろう。

その女性は全身を黒い布で覆い、鈍色の瞳だけを覗かせていた。レナート卿の証言どおりの外見だ。それだけでは彼女がジークリットであるという確証は得られない。

だけど、その女性の隣にはテューンがいた。


「テューン!無事か?」

「手荒なことはされてない。予め言っておくが、ジークリットには魅了の魔術の心得がある。私にはその魔術が向けられていないから安心してくれ」

「そう言われて安心できるもんかよ」

「まあ、そうだな」


ゼフの言い分はもっともだ。

魅了を使える人物の隣にいて魅了されてないから大丈夫なんて、どう考えても信用できるはずがない。テューンも自分が失言したことにすぐに気づいたようだ。


「そうですね。それではまず、自己紹介から始めましょう。私はジークリット。そして、感謝を述べさせていただきたい。どんな形であれ、ドロテア様を生かしていただいて誠にありがとうございます」


その言葉に少し俺は困惑した。

ドロテアの言動から、勝手にジークリットとドロテアが敵対関係にあると決めつけていた。だけど、明らかにドロテアを目上の者として扱っている。


「同じ魔族という以外に、貴方とドロテアにどういう繋がりが?」

「ドロテア様は私がお仕えする王の姉君でございます。魔族の中でも特に長命のお二人は、長きにわたり魔族の国の平穏を守っておいでです」

「今でも、か?」

「左様でございます。ゼフさん、あなたが私に尋ねたいことはたった一つだけ。どうして屋敷に火をつけて俺の部下を殺したのか?違いありませんか?」


剣呑な雰囲気を醸し出すゼフを威嚇するようにニャルニとブリ大根がゼフの視界に入るように位置取る。


「屋敷に火をつけたのは間違いなく私です。これから全てをお話しします。その上で、私の言い分が言い訳に過ぎないと感じるなら、この剣でどうぞ私を刺し殺してください」


ごとりとテーブルの上に鞘に収まったままの一つの短剣が置かれる。

少なくともジークリットには命欲しさに逃亡を図るつもりはないらしい。俺たちはゼフの返事を待った。

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