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ウァンパイア物語3  作者: 衣月美優
6/7

救いの光


 明日は夏休み最後の日。つまり、赤い月の日だ。

 明日また、私の中のウァンパイアの力が目覚める。

 怖い・・・

 それしか考えられない。

 でも、明日が終わったら学校が始まってしまう。こんな状態じゃ、学校なんて行けるわけがない。

 だから、これは最後のチャンスだ。私が暗い世界から抜け出すための。




 夕方、私は友達にメールを送っていた。ずっと携帯を触っていなかったから、あれ以来メールが溜まっていた。

 私は当たり障りのないことを連ねていたが、また明日、という言葉を打つことはできなかった。

 それに、亮介にメールを送ることもできなかった。亮介には何を打ったらいいのかわからなかった。

 ひたすらに、携帯とにらめっこする。

 亮介だけは私に毎日連絡をくれていた。

 だから、ほかの友達と同じような文面は送れない。それでなくても、亮介をみんなと同じようには扱えない。

 そんなとき、亮介からメールが来た。今、家ノ前にいるというものだった。それにももちろん驚いたが、何より次に来たメールが衝撃だった。

 それはたった一行。


『会いたい』


 そう書かれていた。

 私は何が何だかわからず、フリーズしてしまった。

 そして、私の中の何かが重たくなってしまった体を動かした。

 私は勢いよく部屋のカーテンを開けた。久しぶりに日の光を浴びて思わず目を細める。

 私は太陽から目を逸らすように下を見た。そこには亮介が立っていた。

 亮介もこちらに気づいたようで、顔をあげていた。

 誰かと顔を合わせたのは久しぶりだと思った。それと同時に、恐怖が心を支配した。その瞬間、私はカーテンを閉めてしまった。

 また携帯が鳴った。今度はメールではなく、電話だった。もちろん相手は亮介だ。

 私はしばらく携帯を見つめていたが、思いきって電話に出た。

「・・・もしもし」

「よぉ、聖。久しぶりだな」

 亮介の声。久しぶりに聞いた。安心する声、私の大好きな声だ。

 私は目に涙を溜めていた。

「どうしたんだ?この間の登校日も休んで、部屋に閉じ籠ってよ。何かあったんなら言えよ。話くらい聞けるしよ」

 亮介の言葉に、私は何も答える言葉が思いつかなかった。

 しばらくの沈黙のあと、亮介は言った。

「ま、どうしても話せないなら無理に話さなくてもいいけどよ。明日は学校来れるのか?何があったかは知らないけど、俺は聖の味方だからな」

 味方、という言葉に私は反応した。

「味方・・・?」

「あぁ。俺はどんなときでも聖の味方だよ」

 亮介は力強く言った。

「ありがとう・・・でも、ごめんね。私、亮介のことはいつだって信じてるけど、今回ばかりは信じられないの。亮介だけじゃなく、ほかの誰であっても」

 私の言葉に、亮介は少々驚いたようだった。

「そうか。でもそれでもいいよ。お前に信じてもらえるように、俺が頑張るから」

 今度は私が亮介の言葉に驚かされた。

 まさかそんな風に返されるとは思ってなかった。

「どうして・・・?どうしてそこまで・・・」

「さっきも言っただろ?俺は聖の味方だって。俺は聖の味方でいたいんだよ。そのためには、お前に信じてもらわなくちゃいけないだろ?それに────・・・」

 亮介は躊躇うように続けた。

「俺は聖のことが好きだから」

 突然の亮介からの告白に、私は何て答えたらいいのかわからなかった。

 だけど、すぐにウァンパイアのことが頭を過って、私も好きだとは言えなかった。それどころか、否定的な言葉がたくさん出てきた。

「ごめん、なさい。きっと、本当の私を知ったら亮介でも離れていくと思う・・・私は亮介と付き合えない。付き合っちゃいけない・・・!私は亮介たちを信じられないんじゃない。私自身を信じられないの!今までどうやって過ごしてきたのか、わからないの・・・!私は私のことがわからない・・・!もう何が何だかわからなくてこわいの・・・っ!」

 泣きながら感情のままに言葉を放ったから、何をいっているのかよくわからなかったかもしれない。

 でも、ありったけの私の想いをぶつけることができた。

 だけど、スッキリするはずがない。

 亮介にこんな八つ当たりみないなことして、最低だ。亮介は何も悪くないのに。

 自分を責めていたときだった。


「大丈夫だよ」


 亮介がそう言った。それはお母さん言った言葉だ。

「そう言う時期ってきっと、誰だって少しはあるさ。俺は気にしないよ」

 亮介は続けて言った。

 私は亮介が何を言っているのかわからなかった。

「何言ってるの・・・?っていうか、私のはそんな単純な話じゃない。私は────・・・!」

 思わず、ウァンパイアハーフだということを言ってしまいそうになり、慌てて口を閉じる。

「じゃあ話してくれよ。何もかもを。どんな話だったとしても、俺は聖から離れたりしないから」

 私は何だかその言葉に安心してしまった。亮介なら大丈夫だと思った。

 だから、私は言葉にした。

「今日、何の日か知ってる?」

「え?」

 突然の質問に、亮介は困惑しているようだった。

 だけど、私は構わず続ける。

「今日は赤い月の日。ウァンパイアたちの力が強くなる日なの」

「それがどうしたんだ・・・?」

 亮介は私の言葉の意図が飲み込めないようだった。

「何が言いたいかっていうとね、私、ウァンパイアハーフなの。お母さんがウァンパイアなの。普通の人間じゃないの」

「は・・・?え・・・?ウァンパイアハーフ?」

 亮介はかなり混乱しているようだった。

 当然だ。急にこんなことを言われて、すぐに納得できるわけがない。私だってそうだったのだから。

「ちょうど日も暮れてきたし、少しはわかると思うよ。私の言っていること」

 私はカーテンを開けて、空を見上げた。

 だんだんと暗くなり、赤い月が見えてきた。それと同時に、私の目が赤くなるのを感じた。

「これが私だよ、亮介。これでも私の味方だって言える?私のことを好きだって言える?」

 少しの沈黙のあと、亮介が答えた。

「言える。ウァンパイアハーフでも何でも、聖は聖だろ?」

 嬉しかった。ウァンパイアハーフだと知っても、私を認めてくれたことが。

 そして何より────・・・

「ありがとう。私を暗い世界から救い出してくれて」

 私は呟くようにそう言って、窓を開けた。

 そして、最高の笑顔で答えた。


「私も、亮介が好き。大好き!」



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