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プロローグ
「君はいつだって、僕を見つけるね。」
彼は枯れがれの声で拙く答えた。
その声は、いつだって今だって
草木から零れる木漏れ日のように暖かい。
私は答える。
「私はあなたを食べようとしてるから
目を巡らせているのよ。」
彼はクスクスと笑って、
「その誰でも石にしてしまうその目でかい?」
私はムッとしながら、
見えない目で彼を見つめた。
彼は肩をすくめて、
「あぁ、こわいな。怖くて石になりそうだ。」
そんな言葉で私をからかう。
こんな日がずっと続けばいいのに、
なのに彼の命の灯りは微かに揺らいでる。
彼は私を見ているのだろうか。
私の姿を見ているのだろうか。
望んで盲目になったこの身を、
人を永遠に囚う呪われたこの身を、
彼の心は私の感覚すらも
花弁のようにかわしてく。
「望めるのなら」
彼は一言呟いて、
深い深い息を吐いたあと
「君の瞳を見せてくれないか。」
一言私に投げ掛けて息絶えた。