9.潜入、錬金術ギルド 後編
「おわーっ!?」
そう叫びたい気持ちでいっぱいだった。
というのも。
何とかアイザック博士の家から逃げ出したものの、博士のホムンクルスたちによる猛追が始まったから。
アイザック博士の護衛は襲撃ホムンクルスとは違って身のこなしが違う。
索敵は下手だったものの、一度敵を発見すればしつこく追ってくる。
「……閃光弾を使うか」
念のため、三発のマグネシウム粉末爆弾を『鋳掛屋』から貰っていた。
そいつを使えば、何とか撒けるだろう。
「一発で終わりだといいけど!」
僕は一旦敵の方向へ振り向く。
四体のホムンクルス――やっぱり全員ハルバードを持って突進してくる――に向け閃光弾を投擲した。
地面に落ちた瞬間に爆発する手はずだから、山なりに飛ばし、すぐさま目をつぶって逃げる。
背後で、ポン、という音がした。
うまく爆発したようだ。
ホッとしたその瞬間、
「うぉっと!?」
一本のハルバードが飛んできた。連中の一人が投げつけて来たらしい。
何とか当たらずに済んだけど、頬のギリギリに石突がかすった。
うう、肝が冷える!
まさか、奴ら目視だけでなく聴覚でも追跡しているのか!?
いや、それならアイザック博士の尾行時に気づかれてもおかしくないはず……。
一体、どんな原理で、と思って振り向くと、
「やっぱり効き目は合ったみたいだ……」
四体のホムンクルスは目を押さえている。
どうやら、こちらが閃光弾を投げたのを見てハルバードを投げ返したようだ。
なら、一安心といったところ、
と、思った矢先だった。
「ええっ!?」
連中はすぐに視力を回復したかのように僕を再び追撃し始めた。
ぐぬぬ、さすがはアイザック博士といったところか……。
ホムンクルスの質が良い。しかし、ならなぜ襲撃してきたホムンクルスはああも弱かったのだろう?
考えていても仕方がない。今はとにかくギルド内部から脱出しなくては!
「とりあえず、もう一発!」
二度目の閃光弾投擲!
が、連中は腕で目を押さえてしまった。
「学習能力もそこそこか……!」
ぐぬぬ、ぐぬぬ、ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ……。
これだと捕まってしまう。どうしたものか……。
仕方がない、棒手裏剣を使うか。
鉄道用の釘を手にして、一本を投擲!
「あれぇ!?」
ハルバードで弾かれた。いや、強すぎない?
尾行してたときの百倍有能になってない?
うろたえているうちに、僕は連中とさほど距離を取れていないことに気がついた。
やばい。まずい。ころされる。
焦りが生まれ始めた。走る速度を上げようとしたその瞬間、
「うわぁっ!?」
足の間を、投擲されたハルバードが斜めに通り抜けようとしていた。
当然、足にもつれる。無意識のレベルで転倒に備える。
顔面をぶつけないよう、手をしっかり伸ばして前へ突き出す。
受け身に成功。怪我はない。
しかし。
「……あ、あはは……」
ホムンクルスたちは僕の四肢をガッチリと捕まえ、アイザック博士の研究室へと僕を連行し始めた。
あーあ、ドジッちゃったなあ……。
これからどうなっちゃうんだろ。