14.いざフォーハンド卿暗殺 後編
像の上でツインテールを風になびかせ腕組みする『鋳掛屋』を僕たちと『追い剥ぎ』組はポカンとして見ていた。
何かあるのだろうか?
わざわざ戦闘をやめさせたからには、お花摘みに行きたいとかお腹すいたとかそういう変なことではないはずだ。
僕ら七人はじっと『鋳掛屋』が再び話し始めるのを待った。
ざわざわと木々の枝葉が擦れる音だけが響く。
そして一分経った。まだ『鋳掛屋』は何も言おうとしない。
おずおずと、『かっぱらい』が言った。
「あの、早く戦いに戻りたいんだけど……」
『鋳掛屋』の回答は短かった。
「ダメだ」
「ダメぇ!? だったら早く何か言えよ! 言いたいことあるんだったらさっさとしろ!」
『かっぱらい』は地団駄踏んで言った。相も変わらずの戦闘狂だなあ。
『鋳掛屋』のほうはまだ何も言うつもりもないようで、腕組みしている。
とうとう僕はため息を吐いてお願いした。そうするのが一番の解決法だと思ったからね。
「『鋳掛屋』さん、意見があるようでしたら、どうか僕たちにのたまっていただけませんか」
鹿爪らしく『鋳掛屋』は頷いた。
「それでは皆さん、ご清聴願いたい! まず、あなた方に問おう! ソイイーターたるもの何が大事か!」
「忍法だ!」
『両手剣』が答えた。
「違いますわ! 逃げ足の速さに決まっていてよ!!」
『詐欺師』は叫んだ。
「武器の扱いであります! これは間違いありませんな!」
『追い剥ぎ』が言った。
しかし、『鋳掛屋』は首を横に振った。
チッチッチッと、人差し指を振って、
「不正解! 不正解! 不正解! 正しくはこうです! 金! 金! 何を差し置いても金! これは天地ひっくり返ろうとも覆せますまい!」
確かに、ソイイーターは金が大事だ。依頼金が少なければ拒否したり脅して釣り上げさせたりすることも日常茶飯事。その点で、『鋳掛屋』は間違っていない。
「さて、『追い剥ぎ』一行四名にお聞きしたい! あなた方は一体BC何枚で雇われたのか!」
「騎士の心を侮辱するか! 金ではなく心意気で雇われ」
「黙らっしゃい! ……その問いはそのまま返しますわ」
気高そうな口を聞きかけた『両手剣』は『詐欺師』に遮られ。いくらで雇われたのか、という問いは『鋳掛屋』に戻された。
『鋳掛屋』は形の良い巨乳を胸張って強調しながら――『へっつい猫』と『かっぱらい』からは凄まじい怨嗟の目つきで睨まれていた――答えた。
「よいでしょう、私たちの依頼主は一万BCで暗殺を頼み込みました」
「「「「な……んだと……?」」」」
『追い剥ぎ』組が絶句する。やっと三姉妹の長女が口を開いた。
「……我々の二十倍の雇金ではないですか! 嘘ではありませぬな!?」
「私は真実を話している!」
「なんということだ」
「しかも前払いである!」
「「「「な……んだと……?」」」」
『追い剥ぎ』組が再び絶句。満足げにその様子を見つめた後、『鋳掛屋』は言った。
「ここでご一行に朗報がある! 私はあなた方を一人頭二千BCで雇う用意がある。受けるも受けぬも自由だが、悪い話ではないはずだ!」
僕は『うわばみ』を見た。勝手に話を進めていないかの確認だ。彼は小さく三回頷いた。どうやら承認は得ているらしい。
「さあいかがする!?」
「……承諾であります!」
『追い剥ぎ』が手を上げて『鋳掛屋』に近寄った。
「姉さま!?」
「こんな安金で真面目に仕事をやってられるかでありますよ! さあ、妹たち、裏切ってしまおうではないですか!」
「……そだね」「……仕方ないですわね」
三姉妹はあっさり裏切った。残るは『両手剣』だが……
「騎士は交渉に応じない……こともない! 承諾だ!」
騎士の風上にも置けん奴!
しかし、『追い剥ぎ』組は全員寝返ったわけだ。楽になった。
彼女らと『鋳掛屋』は契約の話をしばらく行い、無事成立したらしく、彼女らは僕らにお辞儀をしてきた。
こういうこともソイイーターの世界ではよくあることだ。
話をまとめ終えた『鋳掛屋』が僕の近くによってきて尋ねた。
「ところで私、かっこよかったですか?」
「……君、かっこつけたかったから、話し始めるのをあんなに溜めたの?」
「ええ!」
僕ら七人は呆れ果ててしまった。『かっぱらい』に至っては『へっつい猫』と仲良くずっこける真似をしていた。
ともかく、『追い剥ぎ』組を買収できたのは非常に大きな一歩だ。
これでフォーハンド卿もたやすく暗殺できるだろう。




