13.いざフォーハンド卿暗殺 中編
八人のソイイーターがぶつかり合うのは珍しいことじゃない。
基本的に仕事をする際には四人一組がメジャーなので、むしろいつも通りと言っていいだろう。
さて、『追い剥ぎ』組との戦いは覚悟してやらないといけない。
『両手剣』とかいう騎士気取りも意外と手強いんだ。
「忍法【殺大虫】!」
『うわばみ』が片鎌槍を吐き飛ばす。
しかし、それを見事な跳躍で『追い剥ぎ』が回避する。
そして彼女は背負った二挺の銃剣付き長銃を手に持つと、素早くバトンのように空中に投げた。
「忍法【勝虫・流】!」
投げられた長銃からは空気弾が飛ぶ!
甲高い風切り音が『うわばみ』の顔を撫ぜた。いや、彼は撫ぜさせたんだ。
絶妙極まりない回避!
忍法【勝虫・流】とは、『追い剥ぎ』がもっとも得意とする戦闘向きの術だ。
筒の中で空気の流れを圧縮し、かまいたちの如き真空の斬撃を飛ばす、恐ろしい術。
もっとも、当たらなければ何とやら。この攻撃は無効だ。
しかし、『うわばみ』の後ろの地面がめちゃくちゃにえぐられているところを見ると、かなり気合を入れて打ち込んだらしい。
おっと、あんまり他の人に気を取られちゃいけない。
自分自身の相手に――今回は『かっぱらい』――正対しなくては。
三人姉妹の三女が得意とする忍法は、
「忍法【地虫起】!」
それは木彫用のノミを地面に投げつけるだけの動作しか必要としない。
だが、その効果は、
ズアァァァァァァ!!
奇妙奇天烈な音を立て、敵の立ち位置目がけて下からの強大な突き上げを引き起こす!
勢いは高速だが、ギリギリまで粘れば回避は簡単――
「忍法【尺には尺を】!」
「ぬわあっ!?」
『両手剣』が横槍ならぬ横両手剣を入れてきた!
忍法【尺には尺を】はあいつの持っている両手剣を自在に伸ばすと同時に、鞭の如くしなやかにする効果を持っている。
凶悪な方の忍法だ。
僕は叫ぶ。
「おい騎士気取り! 今のは騎士道に反するぞ!」
「なんだと格好付け眼帯野郎! お前なんぞに言われずとも騎士の道は承知しているわ!」
「はあ!? この眼帯は左目が光に異様に過敏だから着けてるんだよ!!」
「なるほどそうか! すまん!」
「謝るなら横槍したことに謝れーっ!!」
我ながらなんか子供のケンカみたいだ……。
『へっつい猫』は真面目に『詐欺師』と戦っているというのに、僕らと来たら……。
あれ?
『鋳掛屋』は? あの娘はどうしたんだろう?
いつもの大技が見られないけど……。
「はいはい! 全員戦闘中止!」
声の方向を見ると『鋳掛屋』が大理石の像――あんまり腕のいい彫刻家ではない人が作ったらしい――の上に陣取っていた。
戦闘中止? 一体何で?
(後編に続く)




