12.いざフォーハンド卿暗殺 前編
暗殺計画は練りに練った。失敗時の対応策も七つもある。
これで失敗したら自分の未熟さを恨むしか無いね。
暗殺の日取りは明後日。
フォーハンド邸に件の貴族殿たちが集まる日だ。
「さて、これで大丈夫だね。まだ心配なことがあるひとは?」
僕が尋ねる。
「ないな」「問題なしです」「大丈夫だよ、あとは実行するだけ!」
三人からそれぞれの答えが返ってきた。うん、憂いなし。
なら、あとは武装の調整に体調管理をしっかりやって、先祖や神々に祈りを捧げよう。
僕は事務所から三人を見送った。
そして、二日経った。ついに決行の日だ。
フォーハンド卿暗殺計画は次の通り。
四人の貴族殿は正午に集会を開く。それまでに現地へ集合。
まずは警備の突破。『へっつい猫』の調査では、フォーハンド邸はオックスヘッド民間警備兵派遣会社の警備民兵三十人で守られているそうだ。これに貴族殿四人それぞれの私兵を加えると五十人くらいの警護があるだろう。
これをどう破るか? 答えは簡単、東に声して西を撃つ。フォーハンド邸のそばにある空き邸宅に火を放つんだ。この空き家もフォーハンド卿のものであるから、財産に被害を出させないため何十人か警護兵を割かなくてはならないはずだ。
少しでも警備が薄まり、混乱が広がれば、侵入は容易だ。
あとは警備民兵を四人捕まえてから制服を剥ぎ取り、服を着替える。この作業のために、できるだけ武装は簡単なものにしておかないとね。
そして、警備民兵を装って、フォーハンド卿に接近、一気にお命頂戴、と、こういう手はずだ。
え? 『追い剥ぎ』組のことが考慮に入ってないって? うん、安心して。実は彼らを呼び出してある。
空き邸宅の庭に、彼らは現れた。僕らが特殊な投げ笛を使ったので、異常を排除するべくやって来たんだ。
僕ら四人と彼ら四人は対峙した。
「さて、暗殺は阻止しますぞ、『うわばみ』殿ご一行。この『追い剥ぎ』はやる時はやるのであります」
三姉妹の長女、『追い剥ぎ』が言った。
「そうですわ、わたくしどもを馬鹿にされているようなら、見識を改めてほしくってよ」
これは次女、『詐欺師』の言葉。
「ま、面倒くさいことはなし! さっさとやろう!」
三女の『かっぱらい』が言った。好戦的だなあ。
「いざ聞け愚昧なる敵どもよ、私の産まれはチキンズヘッド、父の名は『研ぎ屋』、母は『かささぎ』、受けし名は『両手剣』! 私の手にしたる剣は故深きものであり、その刃のサビとなるは貴様らの名誉と……」
……こいつが騎士気取り、もとい『両手剣』。面倒くさいやつでしょ? もう嫌になるよ、これ聞かされるの五回目だもん。
さて、僕らと彼らは戦いのきっかけを待っていた。長々と『両手剣』が口上を述べる以外は、静かだった。
一秒。
二秒
三秒。
近くの木から、一羽の鳩が飛び出した。それがきっかけとなった!
「「「「いくぞ!」」」」
八人のソイイーターがぶつかり合う。その戦いの果て、勝利するのはどちらだ!?
(中編に続く)