11.密談せよ! 暗殺計画!
アイザック博士は錬金術ギルドから安全に僕を送り出してくれた。
何かあったら自分を頼ってくれ、ただしタダでは助けないが、とも言ってくれた。
ありがたいことこの上ない。
捕まってしまったのはお笑いだけど、大事な味方が増えたのは幸いだ。
さて、ギルド潜入の翌日。
僕の事務所に、『うわばみ』、『鋳掛屋』、『へっつい猫』が集まっていた。
フォーハンド卿暗殺計画の密談のためだ。
皆、それぞれが集めた情報を共有するべく、証拠品と一緒に声を潜めて話す。
「ブラッドライン博士がこの四挺のマスケットピストルを古道具屋で購入したのは確認していた。なるほど、ハルバード博士ではなかったということか……」
『うわばみ』が言った。『鋳掛屋』も、
「危ないところだったけど、無事で何よりです。ただ、フォーハンド卿はあの襲撃の黒幕でしょうか?」
と尋ねた。僕は首を傾げて考える。
できすぎな話に見えるのは確かだ。
証拠品からはこの線が強いが……。
すると、『へっつい猫』が手を挙げて、
「はいはいはい! 私知ってるよ! フォーハンド卿が絶対犯人だってこと!」
「? どういうことだ?」
『鋳掛屋』が尋ねる。『へっつい猫』は平たい胸を張って、
「実はフォーハンド卿の周辺を探ってきたんだ~♪ そしたら、そしたらね、なんと例の三姉妹+いけ好かない騎士気取りがフォーハンド卿に雇われてたんだよ!」
「! 『追い剥ぎ』組か! ……なるほど、奴らなら……。だがホムンクルスを使ったのは?」
『鋳掛屋』が言うと、『うわばみ』が、
「花を持たせようとしたのだろう。実のところ、件の貴族の一人、ハングドダック卿はブラッドライン博士の遠い親戚だ。ただ、フォーハンド卿自らが博士に依頼したのはなぜか、まではわからんがな」
と言った。
うーん、『追い剥ぎ』組か。
『追い剥ぎ』、『詐欺師』、『かっぱらい』の三姉妹と『両手剣』という騎士ごっこお兄さん――僕と同い年だけど――の四人からなるソイイーターの手だれたちだ。
フォーハンド卿はたぶん護衛にしているのだろう。
暗殺はちょっと大変そうだなあ……。
「よし、でもフォーハンド卿と対決する理由はできた。彼は僕らを舐めた。『追い剥ぎ』組を使わずホムンクルスで襲撃してきたことが明らかな証拠だ。皆、計画を練ろう」
僕が言うと、三人は頷いた。
さあて、久々のすさまじい血を見そうな仕事だ。
あやふやでも、がちがちでもない、絶妙な暗殺計画を立てるとしよう!