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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

lineシリーズ

滅びを望む者

作者: 空野流星

夜刀(やと)

本作の主人公。 男性。 一人称は俺。

大神である天照に生み出された神の一人。

神ではあるが、天照が失敗作と呼ぶ妖怪に性質が近いため、兄弟から迫害されて生きてきた。

性格は冷静沈着で探究心が強い、その一方で兄弟や親への復讐を計画している。



玉藻(たまも)

女性。 一人称は妾。

かつて人の世を乱した白面金毛九尾の狐。

一度人間達に討伐されるが復活、以後は玉耀と共に力を蓄えている。

普段は天真爛漫でややドジだが、根は大妖怪であり、人も躊躇なく殺す。

夜刀に天照討伐に誘われるが……



玉耀(ぎょくよう)

男性。 一人称は僕。

陰謀により殺されたが、玉藻の尾によって人間から妖怪へと変貌し復活した。

人間の頃は宗仁(むねひと)と呼ばれていたが、玉藻と再開後はこの名を名乗るようになる。

いつも玉藻の世話を焼く事が多く、本人も割と喜んでやっている。

この世界は地獄だった。

いつだって俺は一人で、誰も助けてくれさえしない。

母親でさえも見て見ぬふりだ。

だから、ずっとこの世界が憎かった。

みんな消えてしまえばいい、そうすれば……


――満たされると思ったんだ。





滅びを望む者






俺は手に取った剣を握り直す。

後は足元の哀れなソレに、振り下ろすだけでいい。

ソレは未練がましくもぞもぞと逃げようと足掻く。

とっくに無駄だと分かっているはずなのに、なんと醜いのだろうか?



「母さん……」



そう呼ばれたソレはびくりと動きが止まる。

こちらを見ると涙を流しながら説得を始める。



「わしが何をした? お前はどうして!」


「何をした? 何もしなかったさ……」



そうさ、お前は何もしなかった。

助けさえもしなかった。

母親ですら無かったのだ。



「頼む、お前のためならなんでもする!」


「……」


「弟や妹も作ってやろう、お前のための世界を作ろう!」



あぁ、なんて……

でも、待ち焦がれた瞬間に心は踊らない。


俺はゆっくりと天叢雲剣を振り上げる。

ソレの形相が歪む。

もうそんな母親を、俺は見たくなかった。


この刃は慈悲なのかもしれない。

振り下ろした剣は、綺麗に首を切り落とした。


切断面から吹き出る血が俺を汚す。

しかし喜びも、悲しみも、何も浮かんでこなかった。






「ほう、あの天照を殺すと言うのか?」


「あぁ、だからこそあんたの力を借りたい。」



俺は大妖怪である白面金毛九尾の狐と対峙していた。

あの天照(ははおや)が言うには、妖怪は神々を生み出す時に出来た失敗作。

その中で頂点に君臨しているのがこの狐、玉藻だ。

他の妖怪に比べ、明らかに神気と同質の物を纏っている。


神を殺すのは神にしか不可能。

しかし、俺一人では明らかに数で勝てないだろう。

そう思い、この狐に助けを求めた。


玉藻はかつて一度人間に滅せられた。

あれは、玉藻の力を恐れた天照(ははおや)の策略だった。

しかし、現実に玉藻は生きている。

それどころか、自分に近しい力を持った者を新たに従えているのだ。

その人物は今も玉藻の横に控えている。

その瞳は、今にも俺を殺しに来そうな程鋭い。



「どう思う、玉耀?」


「僕は反対だ。 相手はあの天照、例え勝利しても無傷では済まない。」


「妾を心配してくれるのかえ?」


「当然だ。」



やはり、あの玉耀と呼ばれた従者は反対のようだ。

やはりここはアレを見せておくしかないか。

そう思い、俺は腰に下げた天叢雲剣を抜く。



「ほう、それがお主の打算か。」



玉藻はその剣を楽しそうに見ている。

しかし、俺はその笑顔に恐怖すら感じている。

額を一筋の汗が流れる。



「よかろう、手を貸してやろう。」


「ありがとうございます!」


「……」



玉耀は目を瞑り、沈黙した。

ともあれ、この二人がいれば天照の手勢を減らしていく事が出来る。

これが例え修羅の道であっても、俺は突き進む。

この手で奴を……






八尺瓊勾玉。

天照(ははおや)が生まれたばかりの俺に与えた神器だ。

自らの神気を増幅するものだが、半分妖怪である俺の力を抑えるためでもある。


恐らくは、ちょっとした遊び心だったのだろう。

多くの神々(こども)を生み出した天照(ははおや)

わざと混ぜて作る事で、余興としたかったのだ。

俺は天照(ははおや)のただの気まぐれで生まれたに過ぎない。

だからこそ復讐を、仕込まれた事だとしても、もう止まる事は出来ない。

奴に――死を。





この二匹の狐は強かった。

いとも簡単に兄弟達を屠っていったのだ。

玉藻が強さは分かり切っていだのだが、意外なのはこの従者だ。

その炎は迦具土を凌駕し、灰にする程であった。

あまりの光景に一歩も動けない。

まさに地獄絵図とは子の事を言うのかもしれない。


まるで虐殺を楽しむように玉藻は戦っている。

いや、これは舞っているという方が正しいのかもしれない。



「何を惚けておる、さっさと天照の首を取りに行かぬか。」



見惚れている場合ではない。

俺は二人を背に、宮殿の奥へと駆ける。


目の前に現れたのは大きな扉。

巨人が通るのではと思う程巨大だ。

この扉の奥に……


俺が触れる前に、扉はゆっくりと開き始めた。

誘っているとでもいうのか?


完全に開ききると、奥の玉座に天照が鎮座している。

俺は天叢雲剣を握り直した。






俺の身体は返り血で真っ赤だ。

天照(ははおや)だったソレは床に転がっている。


ガタガタと建物全体が揺れ始める。

おそらく、世界の軸を失い崩壊が始まったのだろう。



「終わったか。」



二人もここまで追いついてきた。

これで俺の復讐は成った。

しかし、何の満足感もない。



「お主、満足したかえ?」



そう玉藻が訪ねてきたが、俺は何も答えられない。

崩れ始める建物の中で立ち尽くしている。


これで本当に良かったのだろうか?

少しの後悔が広がり、脳を埋め尽くしていく。

でも、それでも、こうするしかなかった。

俺に自由なんてものは最初から無かった。

こうなる事が運命だったのだ。



「――あぁ」



遅れて、そう返答した。



「そうか。」



それ以上は何も聞いてはこなかった。

どうせこの世界が消えればみんな死ぬ。

俺も――


その時、急に床が光出した。

見た事無い紋様が浮かび上がる。



「まさかこれは! ありえぬ!」



玉藻は何か知っているようで、非常に驚いている。

玉耀は玉藻をかばうように覆い被さった。


輝きが更に増して、視界が埋め尽くされる。

その光は、まるで包まれるようなぬくもりがあった。






「おい、起きろ。」



玉耀の声で意識が戻ってくる。

体中が痛む中、ゆっくりと体を起こす。



「ここは?」


「さぁな……」



辺りを見渡すと、漆黒が支配した世界だ。

全てが闇に包まれ、光が何一つない。

これが地獄なのだろうか?


目の前には立派に聳え立つ建物がある。

石を積み重ねて出来た壁、巨大な扉。

まるで冥府の門だ。



「うむ、実に面白い事になった!」



楽しそうに玉藻が笑っている



「お前達もいつまで休んでいる? さっさと起きんか!」



そう言われてゆっくりと立ち上がる。

あの反応を見ると、どうやらあの世ではないらしい。



「ここに何がある?」


「そうじゃな、この世界の神でもいるのではないか?」



この世界? 神?



「妾達は、世界の壁を飛び出してこの世界に来てしまったようじゃ。」


「なんだそれ……」



突拍子もなくて呆れるしかない。

先程の光がその原因だというのだろう?


ならば、この3人はあの世界の唯一の生存者となるわけか。

一瞬、天照(ははおや)の顔が浮かぶ。

まさか、な。



「夜刀よ、折角拾った命だ、これからは存分に楽しまないか?」


「あぁ、それもいいな。」


「何、これから主が飽きない程色々起ころうさ。」



そう言って俺に差し伸べた。

俺はその手を、しっかりと握った。








突発的に書きたくなった短編です。

正直構想もそこまで確率していないので書きなぐり感覚で……


もしもがっつり読みたいって人が出たら正式に書くかも?

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