伝説の証明そして駄々っ子二人
伝説の証明そして駄々っ子二人
「なるほどね・・・いいわ、なら証明してみて」
「はい!」
現在、自治区の屋敷に隣接する、謁見専用の建物にいた。
行商人や、代表者と自治長として会う時や、会議をするときなど、ある程度人数が多い場合は多用されている部屋だ。
イルの精鋭、数名と親衛隊10名が壁際に並び、警護しつつ、盗聴などを防ぐ。
かあ様が、中央奥の椅子に座り、隣にじぃことバリスタがいて、ギルバート様がバリスタの隣とイルの精鋭の間に立っている。
結局真夜中に呼び出された僕は、まずは健康について聞かれたが、問題ないことを答え、そして魔力について聞かれていた。
僕は、ストレート勝負に出た。
言い回しを考えても、嘘はつく必要がない。
隠蔽も自動発動のはずだし。
少しずつ本当のことを言っていく方針で固めた。
「命をかけ、死んでしまったと思った僕が目が覚めると、加護がついていました。
その影響で魔力が飛躍的に伸びたようです。
使える魔法が増え、特にすごいのは魂がなくなり、体も煙と化した僕を蘇生していただいた場所へ行った影響かはわかりませんが、転移が可能になりました」
と、騒然とした後、バリスタの咳払いで、いや、その咳払いの後のかあさまの目がマジだったことが一番か、シンと静まり、冒頭に至る。
僕は、謁見の間、入り口に立てかけてあるイルの旗をとってきた。
この部屋にも立てかけてある同じものだ。
大きさは僕の身長と同じくらい。
ゆっくりとかあさまのほうへ持っていく。
「どうぞ、入り口の旗です」
「あなたの気配が一瞬で消えて、隠しようがない旗を持ってきた。それに気配が入り口付近にあったわね、だれか確認してきて」
一番扉に近い人が走って見に行った。
もどってきて間違いないことをいうと
「信じるわ」
あっさりだった。
「信じてくれるのですか? 何度もできるから違うとこのも」
「いいわ、すごいわね。伝説級の魔法よ」
かあさまが僕に近づいたまま戻らない。
屈んで僕をなでた後、再び立ち、
「このことは、他言無用!」
場が再び騒然になりかけていたのをその一言で皆口をつむいだ。
そして、わなわなと手を伸ばしながらバリスタが旗を受け取りつつ、
「ば、ばかな・・・転移魔法ですぞ。失伝されたはず・・」
「証拠ならみたでしょうが? さすが私の子!」
「やはり、すばらしいな、才能があるとわしは思っていたのだ!」
はやいな! バリスタは満面の笑みだった。
少し、恥ずかしい。照れてしまう。
みんなが、すばらしいだの、どこにでもいけるのか?など、興味津々の眼差しだ。
前みたいに、忌みた目を向けるのでもなく、哀れみでもない。
単純な興味本位だけど、嬉しくなる。
かあさまが頭をなでてくる。
「なでないでください。恥ずかしいですし、僕はもう13です。」
「いや! もう誰がなんと言おうと反対しないわよね?」
かあさまが、びくっとしたと思ったら今度は開き直り断固拒否した。
「は、は! まだ抵抗はあるかもしれませんが、恩をあだで返すような恥知らずはこの村にはいま、いえ、いりません」
ルミエナ隊長・・・・
かあさまのその眼光が向けられ、直立不動、胸に手を当て敬礼までして答えている。
「よろしい・・・いたら報告楽しみにしてるわ。即・・な?」
「「「「ごくり」」」」
親衛隊の皆様がいっせいにつばを飲んだ。
でも、なんかこういうの嫌だ。
せっかくいい雰囲気だったのに、急に態度が改められるくらいなら、自然な形から認めてほしい。
それに・・・イメージが。かあさま?
「かあさま、たまに言葉が汚くなるのは、素なのですか?」
はっとした表情になっていた。
そしてしれっとバリスタに首後と向き、バリスタもぎょっとする。
「え? なんのことかしら? 精霊語よ、ね、バリスタ?」
「さ、さ、さようですぞ。わたしには聞こえませぬ、皆もソウであります」
絶対嘘だが、ここで精霊を出すっていいんだろうか?
精霊とは、勇者と同じくエルフの信奉厚いもの。だからだれか怒るかもって・・・
ざっ!
全員ひざを突き最敬礼していた。
駄目だと思う。こういうの・・・・怖いのはわかるけども。。。
想像以上にかあさまは怖いようなので僕も合わせるけど・・・こういうときはいつものバリスタ!
「じ、じぃ・・・うん、分かりました、じいは信用してるから」
じいが顔を上げ、悲痛の眼差しへとかわっていった。
あれ? どうしたの? 違った?
と思ったのは一瞬。
重かった。
一気に小さくなって、さきほどの茶番が消えていた。
「そのようなことは・・・わたしとて、どこかで・・小僧などと・・・言っていたのだぞ」
い、いやだ、その話はやめよう。
ずしりと、皆がかもし出す雰囲気が変わっていく。
かあさまの顔もだ。
い、今は!
「十分ありがたかったよ! 一人なら、みんなを守ることもできなかった、主に心理的にだけど後悔なんてしてないよ!」
重い!
重いよ。誰かしゃべって!お願い!
ふつふつと僕の中でわきあがる感情が・・・僕を嫌いにさせる。
パン!
手をたたいたのはやはりかあさまだった。
「聞いた? ねぇ、聞いたの? いい子すぎるわよ、聞いたわよね!」
明るくいってのけた。
助かった。
「は、はっ! さすがでございます」
バリスタも立ち上がる。
「リエンに会わせようとしなかったことは、水に流してあげるけど、今後もしそんなことしようものなら、な、いいな?」
今度はルミエナ様に振っている。
ああ、さすがの二人だなぁとありがたく、次の言葉を期待して僕もルミエナ様をみた。
「滅相もございません! わたしはそもそも反対など!」
「なっ・・・わ、わしたちだって・・・エリン様のためにと・・・」
だめだぁああ! あほ! ルミエナさまのあほ!
かあさまは舌打ちしていた。
バリスタは再び、下を向くし。
やめてよと僕は、ルミエナ様たちへ視線を向けて訴えるけど、ますます重くなりそうな雰囲気だ。
「やめたまえ。それ以上は、甘えるべきではない、ここは仕切りなおしだ。二人もですよ。無理があります」
「え?」
僕から変な声が漏れた。
十分だとおもったのだけど、今の流れ、ルミエナ様がどじらなければ。僕は十分持ち帰れた。
「手が痛むぞ。それほどのこと、まだ君には早い」
!?
僕のことだった。
手が握り締められていた。
広げてわなわなと震えている、赤みがさした手のひら。
ち、ちっちゃい・・・
「り、リエン、ごめんなさい。わたしが、わたしがこんなだから」
「「「「申し訳ございませんでした」」」」
「水に流せとは言いません。どうか、今後は、如何に大進攻がございましても、リエン様に禁忌を使わせることはございませぬ故、どうかエレナ様を御支え」
「ああ!っと! そ、それより! かあさま、そのことですが、わたしは、冒険者として、世界をみて回りたいです!」
いけない、もう、切り出すしかなかった。
油断すると自分の嫌いなところが生まれ出でるようだった。
言った! 言い切った!
けど・・・・そこまで驚くかな?
どうして?
「「「「「「!」」」」」
誰も予想できなかった?
けど、父様も冒険者だったし。
それに、訓練で人の戦争にまぎれたこともある。
困った時のバリスタをむくと・・・
全員がバリスタを向いた。
何今の、ちょっと面白かった。
「お、お待ちくだされ! このバリスタそういう意味で渡したわけでは!」
視線が集中したバリスタはそれどころではないようだった。
ひざを突き、こぶしを地面につく。
最重要事項の報告の仕方だ。
「じぃ・・・どういうことかしら・・・」
凍るようだった・・・
どうしてそこまで?
冗談の要素がまったく感じられない。
「このバリスタ、現在は神に誓ってリエン様を次期党首にと推薦奉るものであります!」
「「「「「「「・・・・」」」」」」」
先ほどとは違い、やはりなという視線だ。
空気が戻っていく。
「そういうことよ! それに」
「お断りします。やはり、妹に任せたいですし、わたしは皆様ほど寿命も長くないはずですし、なによりそのほうが納得も、利益もあるはずです!」
言葉を途中で切って拒絶した。
僕は決めたんだ。
そのためなら
「だ!」
「かあさま!」
言わせないというより。
駄目とはいわないで!といった気持ちのほうが大きかったかもしれない。
これ以上、僕の道を決められたくない!
「・・・・だ、抱きつかれちゃってるよよよよ~」
「「「「「すさまじいッ !」」」」」
何がとはもう思わないけど、僕は関係なく続ける。
「お願いです。わたしはずっとかごの中の鳥でした。いえ、兵器でした。ですが今は、人として、ハーフエルフとして、生きていけます。考えることも、悩むことも、笑うこともこやってかあさまに抱きつくことだって。わたしは今度は思う存分生きたいのです!」
「で、でも、この村、そして国からでるなんてことに」
「心配せずともわたしには転移魔法があります。嫌になったら戻ってきます。会いたいときも戻ってこれます。そしてそれは、この国の強みにもなります。一度いっておけば、わたしの魔法が成長したときには、牽制にもなりますし、他国への供えにもなるはずです」
「た、確かに!」
バリスタなら分かってくれると思っていた。
もともと冒険者のカードを作ってくれたのはじいだからだ。
他の知りもしない。
おもわず、バリスタに期待の目を向ける。
「・・・・しっッ! だまれ、じじい」
「「「「「ごくり」」」」
え・・・殺気?
抱きついた腕を離して顔を伺う。
取り繕うように柔らかい表情に変化した。
「今は大丈夫よ。魔物だって少ないし、妹! ほら、ミレイだって寂しがるわよ。おにいちゃん」
なんだか、似合わないような、甘いい方だ。
僕はそんなわなには嵌らない!
妹?
正直、嫉妬の対象でもあるし、将来の跡継ぎのことは当の昔にあきらめているんだし。
「ミレイというのですね、わたしのことは知らされていないのでしょう」
「今すぐ会いましょう!」
「お、幼いので、まだ、分からぬかとおもいます」
「ギルバート!!!あなた!?」
「そうではない! 断じて! ただ、この状況に引き合いに出すのはと進言している」
「かあさま、どうか、お願いします」
「・・・・・・・・・卑怯、卑怯よ! そんなの普通に見たら私が悪いみたいに!」
「悪くなどありません」
いけそうだ!
「だって、わたしはあなたをこれから可愛がっていくって決めたとこなのに、例え、あなたにまだしこりが残っていようとも」
それもある、なら認めてほしい。
どうして分からないの!
僕はうつむいた。
でも、憤ってもいる。
どう見えてるかな。
僕は譲れないけどかあさまはわからずや!
なんとしても・・・演じてでも! さっきの抱きつきはきいた。
「男児三日見ねばとはこのことですな」
「だまって、バリスタ、いまそういうのいいから」
「「「「「「「・・・・」」」」」」」」」」
「母様、そんなに僕は成長してないですか? バリスタ様は分かってくれるのに全部否定することしかしないの?」
「わ、わしは・・・」
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「夕飯までには戻ってくることそれが条件、そして私の反省とします」
長い沈黙だった、なのに! なんだその条件!
「「「「「な」」」」」
良かったみんなもそう思ったみたい!
「反省をされた・・・え?歴史が動いた?」
・・・・・違った。
「誰だ、今言ったのは?」
かあさまの性格がだんだん見えてきた・・・
負けられない・・・
僕は理不尽と戦う!
「いや、足りないとおもう!」
「「「「「!?」」」」」
「いいよった・・・」
じいが、驚愕していた。
みんなは小刻みに震えている?
大丈夫だよね?
「リエン! もう反抗期! お、怒りますよ?」
にこっ!
なんて恐ろしい引きつった笑いだ・・・
「バリスタ様! どうなんですか! これは過保護ではないですか!」
「確かに・・・お気持ちを考えてみなされ、リエンは本当に頑張って、そしてこうしておぬしまでに・・・」
「ツッ?」
おお・・・目で殺されました・・・
でも、じいが隣に意見を求めてる。
「「「「しら~」」」」
しょうがない・・・
「・・・・2日に一回、15歳まで、それ以降は自由でどうでしょう?」
「20歳まで、なら三日に1回でもいいわ。ただし、1年はこの国の中で旅をすること」
「20まで・・・・それはお断りです。15まで。ただし、15まではこの国の中で活動します。頻度は2日です」
「・・・・・・・リエン、わたしが誰だかわかってる?!」
「分かっていますよ、エレナ様でしょ?! ハイエルフの」
「あなたは子供よ。わ・た・し・の!!」
だんだんあつくなってきた!
何その言い方!!
「ええ、わたしは子供です。ゼンち・ち・う・えの!」
「ミレイのお、お兄ちゃんでしょ!」
「義・・・義理です!」
「リエンわたしは・・・譲らないわよ。なめないで、わたしは子育ても最強にしていくわ」
「ぼくは我慢したもん!! お母様こそそうやって力でねじ伏せて、僕は負けない!!」
「「「「「「「「がくがく」」」」」」」」
もう、何がなんだか分からないくらい、場がわなわなとしている!
その中で自然とにらみつけていた。
かあさまもだ!
絶対譲らない!!
「え、エレナ・・・さま、その・・・」
「あなたも賛成でしょ!! なに!反対とか言うんじゃないわよね!」
「それは、そうですが!ですが」
ギルバート様・・・使える・・・
僕は嫌なやつかもしれない、けど、今は悪魔になった気分だ。
にやりと笑っていないか心配だ・・・
「義理の父をとうさまとも呼びます」
びくり!効果覿面だ!!
勝った!
「すばらしい一手・・・」
「だ、駄目だそんなことでは、わたしはゼンに顔向け」
「ミレイのためです! 可愛い妹なら仕方なきにしもあらず!」
「え、エレナ・・・」
すっと離れて椅子に戻るお母様・・・
でも確信していた。
「い、いいわ。・・・あなたのせいよ! 馬鹿! そしてバリスタ!」
「はっ! 任せてくだされ、まだまだ未熟なリエン様を導くはわしをおいて」
違う・・・
「がは・・・・・!!」
本気だ・・・・本気だった。
本気の鳩尾に一撃・・・
「て、手当てを!」
確かに、本気で手当てが必要だね・・・
「ふぅーーーーーーーーーでは、それで♪」
どこか吹っ切れたようだった。
バリスタ、ありがとう!!
犠牲は忘れないって血!?
癒し手のかたが、必死に治療している・・・
本当にありがとう。
と、感謝しているとギルバート様が近づいていた。
「い、いいのかい・・・わたしは君の父を名乗って、ミレイを愛してくれるのかい、自らの意思と受け取って言いのか? 無理は」
「言いも何も、事実ですから。ギルバートと、父様」
うぐ・・・言っていてなんだけど、いや、言わない。
そこまで屑になりたくない。
見上げた状態からこくりと頷く。
「嗚呼・・嗚呼、わたしはゼンとの約束を守れたのだな・・・」
な、涙が?
手を目に当てて中を見ているから分からないけど、そんな雰囲気だ。
罪悪感で胸がいっぱいだ・・・
「ごめんなさい、今まで気づかない振りして避けて、本当はどうでもいいの一言に尽きますが」
「い、いいのだ・それでも、お主の意思なら・・だ、抱いてもよいだろうか」
「あなた・・・今は駄目、リエンこっちにおいで」
「「「「「「ええ・・・」」」」」
「かあさま・・・ここはその・・・」
「何?」
「すみません」
ばふっ!と強く抱かれた。
痛い・・・
「・・・・いいのだよ、あとで会おう。わたしはわきまえているし誇りも持って老いるからな」
「・・・・・これをお使いくだされ」
「すまぬ・・・が、これはバリスタどののほうが必要かと」
これにて交渉は終わった。
仕事でなかなかどーんと進められず><
でも明日は休み!
がんばりますので、応援よろしくお願いします><
次回、事件が起こります!