第2章 始まる神がかり
「さすが勇者の国、覚悟が違う・・・」
「重大な秘密を知ってしまいましたぁ・・・危ない、色々危ない、けど手遅れな私で・・手遅れな気持ち・・」
「いいか、リエン様の恩赦があるから助かっているのだぞ、それを忘れるな、絶対に絶対に誰にも言うな」
「はいぃ」
「ってルミエナさんが言えることじゃないでしょ。大丈夫ですよ。フォンさんを信じますから。もしばれたとしても、口が割れちゃったとしても、問い詰められたとしても、正直に言ってくださいね。勿論、最悪な場合でも拷問とか耐える必要は無いですし、僕が必ず助けに来ますから、命のことだけ考えてください。いいですね!」
「いで、ですが・・」
「いいですね!」
「なんと慈悲深い!」
再び戻ってきた僕が一番最初にしたのは、フォンさんのケアーです。
完全に聞かなくてもいいのに聞いてしまったフォンさん。ご愁傷様です。
それもこれも・・・
「そういうのでごまかしても駄目だよ。もしばれたら、出所はルミエナさんって言ってくださいね。特にかあ様には」
「そ、それだけはご勘弁を!あ、あれでいいじゃないですか!自らがおっしゃったとか!」
「舞さんに迷惑かけるとかあり得ないからね。それに事実でしょ!」
「うぐ・・・」
ルミエナさんって本当に心配になる。
戦闘や指揮では頼りになることは間違いないし、信頼という意味でも人柄が素直で厚い。
けど日常生活は残念すぎる・・。今も仮にも親衛隊長がしていい姿勢ではない。
_| ̄|○の姿で本気で泣きそう。
『本当にお馬鹿だよねぇ。精霊も愛想が尽きるほど』
「しょんなぁあああ!」
あ・・・泣いた。
「僕の言葉より説得力あるね・・・。今度からフィナが叱ってよ」
『それはご遠慮したいですぅ。すりすり』
「せ、せ、せ・・・せいれ・・」
「あ、フォンさん。火の精霊のフィナです。こうやって勝手に出てくるんだ」
「けけけけ」
「顕現してるよ。不思議だよね、しかも触れるという」
こくこく!と首ごと同意してくるフォンさん。
力が抜けたのかペタンと床に腰を落とし、なんだか可愛らしい。さっきまでのお姉さんっぽかったのが子供っぽい様子に一転している。
うん、まぁルミエナさんはいつも通りだとしても、フォンさんもそうなるんだ。今思えば、親衛隊の人とかの耐性って結構あるんだな。戦闘多いし、魔力が高い人も多い、何よりかあ様がいるからかな。ルミエナさんはちょっと違うほうこうだとしても、納得とともに気をつけようと思いました。
『報告があるのですぅ、リエンしゃま』
「うん?かあ様になにかあった!?」
勝手に顕現している理由があるの!?って驚くのもおかしい気がするけど、あるとすれば!
『違うんでしゅ。少しお体、移動させていいですか?』
ほっとした・・・。顕現の時、何かしら緊急の時とかの合図とか決めたほうがいいかも。というか、しないでほしい。お話が必要だな。
「その語尾無理しなくていいよ」
『これは必要でしゅ!』
「そうなんだ・・・。まぁいいけど、どこにいけばいいの?内緒ってこと?」
『移動は私のほうでしますぅ!では、開けスピリッツロード!』
「こ、これは?」
目の前に扉が開いている!しかも、向こう側は・・・夜の空?のような感じだ!
『さぁ。いきましょ』
って!振り返ると驚いているだろう二人が!
「二人が固まってる!」
『時間の概念が無い場所を開いたからですぅ、大丈夫ですよ』
あれかな、星に願いをで地球とアルブを移動する僕と同じような状態?
『いいから来るです!』
あ、戻った口調。
『しゅ』
「無理しなくていいのに。えっと落ちないよね?」
『もちろんですぅ』
「綺麗なところだね・・・なんか夜のお空みたい」
『いい得て妙ですぅ、で、あそこが今回出来た場所です。わたしの道にできて光栄ですぅ』
夜の空に綺麗な砂浜の道が通っているような場所。
幻想的で美しい・・・そしてさっきまでルミエナさんたちがいたはずなのに、扉をくぐるともうそこに扉はなかった。代わりにあるのが、道の脇に見えるたくさんの穴。
穴の向こうには景色や人が写っている。
そんな道の途中で砂浜から続く洞窟?のような入り口。その先を見ると、
「え?はしょりすぎだよ、全く意味が・・・ってそれ。舞さんの私物?」
『はい、入ってください』
「お、お邪魔します・・・うわ!」
途端に真っ白な部屋についた。
入口はまた無くなっている。部屋にちょこんとあるのは舞さんの私物、装備くらいだ。
『最初から説明しますねぇ』
まず、さっきの空を歩いているような感覚の場所は、精霊など精神体が通る道らしい。道のところどころに穴があり、そこから下界をみているということだった。
かあ様が写っている穴もあった。固まってるけど、覗くように顔を出すと動き出す景色になり、完全に入るとその場所へ移動するそうだ。
舞さんが見える窓もあるけど、それは上、空の空?についていた。
『上の窓は初めてでしゅ』
と、フィナも入った白い部屋から首を出し、僕も倣って見ています。
指をさして説明している窓。どこかの部屋にありそうな、両開きの窓だ。
舞さんを召還した時にできたらしく、今いる部屋?というより空間のたまり場から一転し中は真っ白な部屋に僕らはいるのだけど、この部屋もその時にできたらしい。
舞さんと創造神様がここで話をしていたそうで、覗いたら強制的に引っ張ってこられたそうだ。
『めっちゃいたかったですぅ!』
と羽をさすって説明している。
『でもマイには、私は見えてなかったみたいです!あの創造神様なるものが、いえ!様様!が、私にリエン様へ伝えるためにってことをマイが出て行った後から聞いて、今、話してる流れですぅ!わかりますぅ?心当たりがあるはずといってました』
「うん、わかったよ・・・。創造神様、会った事ないのに、舞さん。さすが勇者の国。フィナもすごいね」
『えっへん!ってそうじゃないですぅ!』
「え?」
『創造神様曰く、リエンしゃまと創造神様がここに同時にきたら、ここが神界になってしまうかもしれないって!それくらいリエン様、器が大きくなる予定で、会うと感化されてこのたまり場が急激に広がる事故?みたいにならないようにって!』
「ちょ、ちょっと待って!それは言いすぎでしょ」
『創造神様・・・大げさかもしれないですしぃ、平気でわたしの首ちょんぱしそうで信用ないですけど・・・このたまり場は世界といってもいいですぅ』
「世界・・?ってなんなの?」
『世界は世界ですぅ・・・言うならば、リエン様が作った世界?のためにできた世界?のような場所でしゅよ。たぶん・・・』
「たぶんって・・・」
『と、とにかく!ここは召還するときにお着替えとかする部屋で、怪我とかないような感じで体も時間も保存される場所?みたいな部屋?世界になってます!なので、この武器?とかもマイマイが使えるものですぅ。向こうから召還されたらここでお着替えしていける?様な感じで使えばいいってことですぅ!』
!・・・なるほど、確かにフル装備だったのに戻ったら着替えてた・・。詳しくは舞さんから聞けばいいか。マイマイって舞さんのことだろうけど・・・。ま、いいか。
『わかったですぅ?』
「なんとなく。謎が解けたみたいな感じかな」
『じゃ、重要な話に移りますぅ・・・』
「うん・・・」
二人で外、スピリッツロードを覗くように話していたのをフィナがぱたぱたと白い部屋にもどっていく。
くるくるっと回ってこちらを見つめる。緑の羽根の軌跡が落ち着いてしばらくしても見つめてくるだけ。
「フィナ?」
んーーーーーーーーーー!と下を向いて!
『おめでとうございますぅ!!!』
「え?!」
一気に満面の笑み!万歳をしてみせるフィナ。くるくると僕の周りを回って踊る。
『なんとここ!私も使えるですぅ!そしてリエン様!あなたが神ですぅ!ここの拡張も利用もつれてくる人間も思いのまま!なんと連れてきた人間はわたしや契約した精霊とも契約できてこの世界に住むチャンスが与えられますぅ!死んでもおめでとうな感じで精霊体に改造することも精神体にすることも可能!さらに!変身!!ボン!!・・・どうですぅ?いい女でしょ!お勧めは精霊と、例えば私!この素敵な私とエレナを合体も可能!元がいいので超絶美人は間違いなし!でもでもエレナの好みが合わなければやり直しもOK!あ、生きてないとやり直しや解除は無理ですのでご注意を!・・・ってことで!ちょっと興味あったですぅ!えっち!もう!てへてへ!このこのぉ!女の子なのよ!言わせないで!私も世界の管理者へするためにはどう~してもなの!だから・・・初めては♪きゃーーー!なんちゃってぶへへ!』
「待って待って待って!途中から分け分からない!ってなにその体!大きくなって!」
『えっへん!リエン様、末永くよろしく御願いします!』
「意味ワカラナイヨ・・・えっときちんと説明して。わりと切実に!真剣に!」
『もう、恥ずかしいですけど・・・ええっと言われたとおりに最初から説明しますね。メモメモっと』
一つ、このスピリッツロード(精霊の通り道)は下界=アルブを見ること、移動するための空間。それに上界=地球が追加されたこと、これは快挙。
二つ、この白い部屋?は世界の種と言えるもので、リエン様がこれから作る世界である。リエン様と心のつながりが深い生命、物が召還されるとこの世界に呼び出され、加護として自動的に限定的に理解、保護される。保護は元の世界への帰還を意味する召還の機能だけで無く、その世界でも死にいたった場合でも保護される。その場合は精神体として保護される。さらに、召還した生命同士、物は体や精神を合体させることが一時的に可能になる。下界に下ろすことも可能。これは神にだけ許された行為・・・。
四つ、召還された生命が更に個別の条件を満たした場合、魂の開放、世界の管理者の一員になる。あらゆる概念が召喚されたものの意思だけで調整可能になる。管理者の一員となった場合、合体も召還されたもの同士で決定できるがこの場合の合体は永続的。管理者の引き合わせは要注意。リエン様の意思に関係なく勝手にできるから気をつけて!
五つ、リエン様との合体も可能。ただし一時のみで意思は完全にリエン様優先。
六つ、他の世界の神はおろか、創造神も介入しない。地球とアルブがある世界の神もちょっかいは禁止している。
七つ、この7つのことは同じ世界の管理者以上の存在になった者のみ知ることが出来る。なるまでは次元の狭間、召還されたものも部屋の認識で偶発的に遭遇することも無い。
八つ、この世界は拒否できない。拒否すれば共に、どちらの世界も崩壊する運命にあるため、地球、アルブの神からは懇願されている。創造神の慈悲にて出来たものであり、これ以上の譲歩はしない。
『と、最後に、君が成長し、世界が助かり、みんな幸せになることを祈ります。もし壊れたとしても、それは君のせいじゃなく、むしろ延命できることは保証されているので自由に頑張ってね。二つの世界の神から催促とかちょっかいは禁止してるからその辺は安心してほしい。君にとっては種族間の平和みたいな考えが、僕にとっては世界全て。その二つの世界の平和を君に託すだけだから、ちょっと広くなったと思って気軽にがんば!だそうですぅってむちゃくちゃですねぇ!』
「むちゃくちゃだしはちゃめちゃだよぉ!!」
『お、おこちゃや!ですぅ』
はぁ・・・はぁ・・・メモを読むフィナの横で息が上がっていった。
途中から間違いじゃないかとメモを覗き見しても、間違っていない・・。
「ご、ごめん・・・。皆ごめんなさい・・・。僕、頑張るけど、世界を救うとかそういうのは無理だと思うんだよ!!!」
『もちろんですぅ!世界はまぁいいじゃないですか!どっちにしろラッキーでしたし!一人じゃないですから安心していいですし、滅ぶ運命は本当ですぅ!精霊界では、あ~もうこの世界駄目だなって有名でしたので!いいですか!もっと喜んでくださいよぉ!わたしなんて鼻血でましたよぉ!神!もう!リエン様は神ですよぉ!まだ小さいですけど世界をもらったんですよぉ!』
「ええええ!?」
『ぶっちゃけ下界はもういいでしょぉ!何年たっても差別はするし、戦争はするし、作ってはぶっ壊すしで、神でもない人型とか入れたのは失敗だったと創造神様も他のところでは工夫してるらしいですぅ。それくらい駄目駄目だよぉ!歴史はどちらも古いから仕方ないのですけど、救いようがない。滅びるのも止む無しということですぅ。精霊神様なんて、俺たちに関係ないからいいんじゃねぇ?って感じで自分のスピリッツロードに精霊界つなげて引きこもりですよぉ!』
「・・・僕はね、前から思ってたけど、精霊って結構いい加減だよね!」
『いい加減なのは下界の生き物ですぅ!勝手なイメージこまりますぅ!』
「・・・・そういう考えなのか。はぁエルフって・・・可愛そう」
『ということで、エレナに言っていいですか?素材はいるので!』
「ど、どういうこと?・・・あるじゃない」
『もう、聞いてなかったんですか!私の個別の条件です!息が合う誰かと合体してみること!そしてリエン様とちょめちょめしないとここの管理者になれないですぅ!それがわたしの条件です!』
「うん、却下で!ってまだ状況も飲み込めてないから!」
『ほわああああっつ!』
はぁ・・・フィナ鼻血出てる。
軽く拭いてやりつつ思う。
むちゃくちゃ・・・だよ。それにちょめちょめってなに?何の隠語?えっち?って?
まさかと思うけど子作りとかじゃないよね・・・。まさかね・・・。流石にそこまで精霊腐ってないよね・・・。
「・・・。というか、かあ様来れるのここ?」
『これますぅ!今すぐ呼べますぅ!呼んでください!』
「却下で!そ、そうか、僕しか呼べないのは助かる。あ、それに呼んでも偶発的な遭遇は出来ない。ってことはこの部屋?世界であわせなければ、勝手に合体も出来ない・・・そういうことか、ここ世界というより部屋だし、ここは舞さん?の部屋?」
『うぐ・・・で、でも約束はたせますよぉ?エレナが上界の地球に行くには、わたしのように疎通できているものと合体していかないといけないのですぅ!言っておくと地球でアルブの人を召還は不可能です!創造神様に聞いておきました!』
「そうなの・・・頑張っても?」
『無理です♪改造したらいけます♪わたしと合体とか!』
「はぁ。ちょっと待って、この問題は後にしよう。それとそのメモもらっておくね。色々聞きたいことあるから・・・って誰に聞けば?」
『私で大丈夫です!色んなことが分かるように詰め込まれました!物理的不思議パワーで!フィンガーーっていいながらぎりぎり頭を握り締められて死ぬかと思いました!』
「そ、それは、なんかごめんね」
『いえいえ!超魔力上がったのでお買い得でした!』
「そ、そう・・・」
『それでどうでしょう!エレナは生きているし分かれることも出来ますぅ!お試しで合体キャッチアンドリリース!もちろん地球に行った後もどってきてちょっと一夜のなんとかですぅ!』
「むりぃいいいい!そういうこと言わないで!」
『いいじゃないですかぁ!わたしとしましょう!天井のしみを数えている間に終わりますぅ!改造合体するときに記憶とかは私に残してしまえばノン問題!キャッチアンドリリース!管理者条件クリア!これでわたしも世界の精霊です!』
「フィナ」
『う・・・・』
「そういうの、冗談でも止めよう。道具みたいにかあ様を言わないで。意図してないとしても・・・そういう冗談は聞きたくないよ」
『ふぁい・・・。調子に乗りました。でも、私、リエン様の傍でずっと役に立ちたいです』
「気持ちはちゃんと伝わったから。でも、それでも、僕は誰かを永遠にしばるなんて出来ないよ。まずは一人前にならないと。それはフィナもだよ。ここに書いてないけど、僕って死ににくいよね?というか死ぬの?」
『死にます・・・。その時に、管理していた人も死にます』
「至れり尽くせりというよりは、調整するためだけに生まれた世界って感じだよね?こんな僕に全部押し付けて、最後通牒みたいなものだよ・・・。いい?ここは確かにすごいことができるかもしれないけど、時間は限られているし、人数なんて僕ひとり、増やしていったとしても、死んだら終わり。残された人はどうなる?一緒に死ねる人はまだいい。でも死なないただの住人だったらこの部屋に取り残されて死ぬんだよ?・・・つまりね。これだけすごいことができるからやるだけ頑張ってみれば?って丸投げもいいとこだよ?」
『はっ!・・・あの神!詐欺です!』
「いろいろあとで聞かせて・・・とりあえず今は何も考えたくないよ。少なくても高位の神様がいて、その神様達も精霊も愛想が尽きた世界。それが僕らの世界だってことが分かってしまったんだから・・・」
『り、りえんしゃま』
「ね、気が狂わないだけでも褒めてほしいよ、御願いだから誰にも言わないで」
『言えないので大丈夫です。・・・わたし。頑張りますぅ、一人じゃないですぅ』
「ありがとう」
一気に話したせいもあって長い沈黙が続いた。
しっかり裏があった美味しい召還の力。舞さんもかあ様も知らず知らずに巻き込まれている。フィナだってそうだ。
召還した人と物をふっつける?合体させて戦わせたり利用してなんとかしろってこと?ふざけないでよ・・・そんなの悪魔じゃないか。僕にキメラを作れとでも言うの?
その世界はもうすぐ壊れるから見捨てて僕の世界に誘拐でもしろと?馬鹿じゃないの?
僕らの故郷だよ。それにもうすぐってどうせ適当だ。少なくてもすぐではない。神様単位だ。僕らだって自覚している、まだチャンスはたくさんある。
めりめりとメモがつぶれていた。
「僕は諦めないよ、アルブも地球も諦めない。精霊が見捨てても、創造神様が見捨てても。だいたい頑張っている神様がいるんだし。フィナも僕と契約した精霊なら、そういう考えは捨てて、じゃないと契約自体もなかったことにする」
びくりっ驚いた後、驚きすぎたのか、大人バージョンのフィナがいつものフィナにもどった。そして・・・涙をためて。
『ふぁい』
フィナはちょこんと座り下を向いている。
でも譲れない。再び沈黙が続いた。
しばらくして、すくっとたちあがり、とりあえずは緊急の時くらいしか考えないように結論を出した僕。
横からつんつんとつついてくるフィナも頑張るという。あともう見捨てないと強い意思をうるうるとした涙で伝えている。
「うん、いい過ぎてごめんね。頑張ろうね」
『はい!で、でもですね、覚えておいてください・わたしは、り、リエン様を本当に・・・あ。ああ。・・・・・・・あいしてるぅ~』
「そこは照れるんだねフィナ、あと顔真っ赤・・・まだまだ子供でしょ。僕もフィナも」
『う・・・ううーーー!いつもは大人ぶるのにぃ!いじわるですぅ!乙女が頑張って言ったのに最低ですぅ!』
「無理しなければいいのに・・。フィナって時々馬鹿だよね」
『むぅうううううううううううう!』
「もどろっか」
『ぷすんすか!自由にドーゾ!ぷっい!私は私の野望を考えるですぅ!』
「はいはい」
白い部屋、世界を出てもとの穴を探して、何の迷いも無く飛び降りる。
いつもだったら躊躇しそうだけど、なかばどうでも良くなっているのを自分でも感じる。
「「!?」」
「ただいま、今の反応見ると何か分かった?」
「いま、一瞬ですが、世界がぐらっときました・・・?」
「うむ、フォン殿と同じ感じです・・・フィナ様がいない!!」
「うん、なんか拗ねちゃって」
「拗ねて?」
「精霊様が拗ねるとか冗談きついですよぉ」
「いや冗談じゃないんだけど」
「フィナ殿を拗ねらせるその技量!わたしはリエン様について行きます!どうかおこぼれを!!」
「えええ・・・」
「何だ、その目は・・・エルフとして当然だ!」
「違うからね・・」
「まだ、少しの時間しか経っていないのに、世界の奥深いところを見た気がします」
びくりとフォンさんを見てしまった。
相変わらぺたんと床に座ったままでこちらを見つめ返すフォンさん。
「疲れちゃいましたか?」
「す、少し・・・お茶でもして、落ち着きましょうか」
「せっかくだから下で飲み物見繕ってきます。美味しいほうがいいですよね?」
「その間に僕はステータスを確認するね」
フォンさんの優しさが今までと違う感じに染み込んで行く。
染み渡る。こんなにいい人がたくさんいる世界を・・・・
「わたしはどうしたら!フィナ様は!」
『ちょっと鍛えてあげる』
「おおお!」
『こっちついてきて』
「ふぃ、フィナ?」
『殺しませんよ、にっこり』
「か、かあ様に似るのかな・・・やっぱり」
「リエン様。行ってきます!」
「うん、頑張って」
「?・・・わ、わたしは何をされるのですか!?なぜそんな諦めたような目を!?」
「あ、いや・・・。頑張ってね」
『だ、大丈夫だもん。約束、それに物理的に禁止!』
「リエン様?フィナ様?よ、様子が変ですよ?」
「いえ!な、なんでもないですよ!あはは、僕も疲れたみたいです!」
「ふぃ、フィナ様!なんか嫌な予感がします!今日はなんだかおなかが痛い気がしてきました!!」
『うるさい!・・・来るの!』
「や、やっぱりぃいいいい!なんかおかしいいいいい!」
ルミエナさんのいつもの事。
それも少し遠く感じる。重い・・・。
とても重い。
扉がばたんと閉まって誰もいなくなった部屋。
時間的には経っていないのに、一人だけ夜になったような感覚。
心の奥があまりに重い真っ黒な鉛で、底に底にと奥低が広げられていくようだ。
ここに立っていることも座っていることも表なのか裏なのかも分からない。そんな感覚。
暗い洞窟、守人の試練とはまた違う恐れ。絶対的な役不足・・・。
非常に長い時間の孤独を感じた気がした。
でも、もう二人が戻ってきていて、フィナもいて、僕も笑っている。
僕はその時、何かを失ったと感じていた。
そこから2年の月日が流れ、僕は冒険者に改めて登録しに着た。
圧倒的なステータス、固い意志を宿して。
「え、は、ハーフエルフでそのステータス。姿・・・万象の申し子、英雄リエン様ですね・・・」
「そうですが、受付御願いして良いですか?」
「よ、ようこそおいでくださいました。ギルドの非礼をお詫び申し上げます。どうか・・・ご勘弁を、こ、この通りです」
「万死に値する!!」
「ルミエナ、そういうの良いって言ったよね」
「はっちょっとおふざけしましてみました」
「・・・顔、上げてください。服が汚れてしまいますよ。みんな気絶しているだけです。マスターと会えますか?綺麗なお姉さん」
「はッ・・・」
「駄目といったでしょう!また、気付け薬が無駄になります!!」
「のろわれてるよね。僕」
「ある意味!さ、おそらくこっちです!行きましょう」
「強引過ぎない?」
「じゃあ魔力抑えてください!この仮面をかぶるのです!!」
「デザイン変えたら考えるし魔力は抑えてるはず」
「偽装しないと!勝手に振ってくるでしょう!!」
「したら捕まるでしょうが・・」
「馬鹿なのに!頭いいとかそんな子に育てた覚えはお姉さんにはありませんよ!」
「はいはい。・・・もうその設定は良いって言ったでしょ。さっさと行くよ」
「理不尽な・・でどうですか?」
『うん・・・まぁいいんじゃない?(というか、ぶっちゃけ精霊と契約させてないのリエン様なんだけどね~、ドエスぶりが神がかってきちゃった~)』
『何で聞こえないの?』『なんで~』
『しっし!』
「ひどい!まだ精進が足りないのですね!」
少し方向が可笑しく成長したルミエナさん、ことルミエナ。とフィナを連れて、急成長中!地球で2年、こちらでも2年。年齢詐称が心苦しいですが、背が伸びない呪いのおかげで助かってます・・。
本当にながながと!お読みいただきありがとうございます!
設定的なことが多かったですが、物語をどう発展させようと考えた末、こういう結論になりました!
なんかすみません><:




