調教士
「すみません、わざわざ来ていただいて」
「いえいえ!こちらから願ったことですから」
鴈舎から宿に戻るまでに村長クラダさんから色々な話を聞く。
ダンジョンについては明日教えてもらうことにして、村についてのことや、今後立ち寄るかもしれないこと、探して欲しい方のリストも忘れずに渡した。
そして早めの夕食、というよりおやつ替わりにサンドイッチをだしたころに、クラダさんに頼んでいたお願い事、調教に詳しい方、つまりファンさんとの面会が叶った。明日以降でいいといったのに気を遣っていただいたようだ。
「これ、食べながらでも」
「お、おいしゅうございますね!」
なぜか緊張していたのも弛緩してサンドイッチに舌鼓を打っている。
ルミエナさんは、うるさいので調教練習として、サンドイッチを大量に出し一口ごとに30回の咀嚼を命じて守れていたら全部食べていいといったら黙々とそれをしている。
ちらりとルミエナさんをみて安心?と呆れ顔をしていた。
ほろりとフォンさんの白い前髪が垂れ下がる。
ルミエナさん、馬みたいだから気になるんだろうね!
むしゃむしゃと聞こえる咀嚼音をバックに話を進める。
「気を遣わせてしまったみたいですみません!」
「いえいえ!」
「髪が濡れていますけど拭くものを出しますね!急に言われちゃったみたいですね、気をつけますっと」
「あ!ど、どうも!」
いつも朝の顔を洗うため準備していたタオル。ベットにかけていたものを渡す。
「愚かな」
「ルミエナさん、失礼でしょ・・・はい、一個没収!」
「ああああぁっ!」
「すみません、これは自分でその勘違いして。も、もちろん急いできたのが一番ですが!」
「え?ああ、すみません。クラダ村長さんの性格を考えると、ちゃんと明日がいいといえばよかったです」
「ふも・・・ふかふか」
「あ、それあげますよ。グリフォンのファムちゃんにはかなわないけど!」
「良いにおい」
「あまりかがないで欲しいです!洗ってはいますけど」
「え!?ああ!ええっ」
「私のだからな」
「あああ・・・」
「?」
「むしゃ・・・嘘では・・、むしゃ・・・ないようだな。ハムサンド最高・・・」
「まぁいっか」
なんだか良く分からないけれども、僕は聞きたかったことを聞いた。
召還に関してのことだ。
基本的なことはルミエナさんに聞いたけど、専門にちかい方に聞いたほうがいいだろうと思ったからだ。
「以上が基本的なことですが、詳しくお知りになりたいことはなんでしょう?」
ルミエナさんと同じことを聞いて少し安心したあと、聞いたことがないものを召還すること、それも極端に短く、はるか遠い場所、精霊よりも遠いかもしれない場所の召還について逸話がないかなどをきいた。
特に知りたいのは、相手の意思と危険性について。これを第一に考えて事故や事件、噂などで悪いことはないかを聞く。
「心配ございませんよ」
僕が真剣に話したせいか、目を見ながら即答してくれた。
暖かい眼差しで。
「コホン・・・ごちそうさまでした」
「あ、うん。ゴミはこっちに捨てるんだよ・・・でも本当に良かった」
「そ、そうですね。あ、ただ、3分というのは気になります。これはあくまで推測なのですが、リエン様であればお話したほうがいいかもしれません」
時間制限についてだ。舞さんのことを異世界からの召還と素直には言わずに、遠まわしに聞いたときに、時間制限が極端に短いことを言ってみたのだ。
でも結局問題はなさそうだ。
「というわけで・・・勇者様の逸話、それもあまり聞いていて気持ちいいものではありませんが、つまり悪いことではありません。相手にとってはですが。どうでしょう?ご心配はなくなりましたか?」
それはあまりに強かった勇者様がしたといわれる召還だった。まるで生き物のような武器の召還、生き物は生き物でも悪魔のような召還。どれもこれも人間の間に伝わることで、エルフの間では神獣の牙や、力だけを召還したこと。などなどだった。
悪いように伝わった中でも何度も呼び出していたことや、復活することで恐れられて至りと、召還されたがわには、ふりはないようだった。むしろ、ちがう世界や環境で無理やり使えるのではなく、無理のない程度で使役したとエルフの間では言われているそうだ。
話を聞いて僕は立ち上がった。
手のひらが温かくなっているのが分かる。想像以上に安心する話だった。
「すごくありがたいです!逆に安心しました!なら!」
「り、リエン様!まさかと思いますがするつもりですか!」
「???」
「うん!得意な人がいたほうが安心でしょ!」
「それはそうですが・・・」
「大丈夫ですよ!極秘なのですね!その、ま、ま、まさかの精霊召還ですか?それとも珍しい召還なんでしょうか!」
事態を察したのか、興奮気味にキラキラとこちらを見つめてくる。けど・・・何それ?
「それは?」
フォンさんの手にはいつの間にか握られていた鞭?
「万が一のために、わたしの愛用のウィップです!マジックアイテムでもありますから伸びちじみに縛り!先ほどのようにこの美しい緑は服にも似合います!自慢の商売道具です!」
そういえば、綺麗なワンピースに装飾されていた緑の模様、花がない。
すごいアイテムだなぁと感心する。
「なるほど。さすが調教師・・・ん?まさか貴様・・・のりのりではないか」
そこで顔を真っ赤にするフォンさん!まさか!
「いたいのはやめてね!」
「もちろんです。万が一ですし!そんな趣味はありません!」
「趣味だと、やはりフォン殿は・・・自ら白状したな!あのすけこましめ!そうだったのだな!だが、貴殿もいけないぞ!そんな」
「いえいえ!ほんとにわたしいつもこれを持ち歩いているので!今日お会いした時もベルトにしてましたよね!」
そういえばそうだったきもするけど・・・痛くしないならいいんじゃないのかな・・?
それにウィップは殺傷能力が低い武器だと思うし?
「???いいんじゃない?頼もしいですよ!」
「そ、そ、そうですか。え!あ!お、お好きですか!」
「綺麗だと思うよ!」
「ますます怪しいぞ・・・・ま、今は!それよりも」」
「で、どんな!」
「異世界の人を召還します!」
「え?」
「あ、でも夜に舞さんと話してしたいな・・・じゃあ精霊召還をちゃんとできているかとか聞こうかな!」
「ええ!?」
「まぁ順当でしょう・・・おわずけですが楽しみです」
「あ、明日にしなきゃ!今何時!?」
「えええ!?」
「あ、危ないところでした。まだ1時間あります!早くお帰り下さい!」
「うん!一応確認が色々できるね!」
「はやく!!」
「わかったよ!じゃ、ルミエナさん事情は説明しておいて!」
「はやく!危なかった・・・サンドイッチ恐るべし」
「じゃ、また明日。フォンさん。転移!」
「ええええええ!?・・・・」
かんぜんにフォンさんを置いてけぼりだけど・・・僕は丸投げして急ぎ転移した。かあ様のまつイルへ!
危なかった。
「おかえりなさい。今日は早かったわね」
「もちろんです!かあ様との約束ですから!」
「よろしい。夕飯食べた?」
「いえいえ!」
「よろしい!」
約束の二日に一度の帰宅を果たしました。
早く15になりたいです。
お読みいただきありがとうございます^^
次回、久々地球。




