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ラザーラ 南の幹 最も東の村

南、ソルとシンラの間を走る平行街道、南の幹も最後の村。

南幹のラザーラに到着したのは、孤児院でクエストをして大赤字となった翌日のお昼だ。

最も東に位置するこのラザーラは、当たり前かもしれないが、異質だった。

森を抜けるとすぐに見えてきたのは、裸山、ドワーフの国がある崖山が見える。

ガレーフといわれる崖山だ。ゴツゴツとしていながらも切り立ち、連なる裸山が南へ伸びている。北にも伸びているが、北へいくほど美しい尾根になっていて性質も品も全く異なっている。国境というより生域が森羅へ切り立つガレーフと分かれているのが見て取れる。

 あの崖は登れないな・・・。降りてくることも難しいだろうと思う。

村もまた異質だった。

今までの村が交易を中心に作られていたがここの雰囲気はどちらかといえば、要の村だ。

イルと似ている。

入り口こそ交易スペースが展開されているが、奥に行けばいくほど、武装した人が多くなる。目立たないようにはなっているけど監視用の木も結界も施してあるようだ。入り口から村の奥へ進むたびに逆三角形に広がっているようだ。

 さて、到着した僕とルミエナさんはまず宿を取る。

いろいろな意味で疲れた僕らは馬車で来た。

その時に聞いたお安いコブの宿で食事抜きの二泊を予定して聞き込みを開始。

 ルミエナさんもラザーラは久しぶりで、情報が必要な場所だそうだ。

ラザーラは国境こそ接しているが、事実上交通手段がないこと、魔獣の素材の変化やダンジョンがあるため、動向が変化する村だからだ。

南東への崖は登れない。北東は森羅の森と魔獣が生息している森が接していてこれがまた深い。魔獣危険度もBランク以下は餌としてしか生息していない。

東のスーへの直接の正規の道は今のところないそうだ。行くならシンラからいかねばならない。

 だが裏道は存在する。

この防衛と管理をしているからこんなに物々しいのだという。

僕らはまずそこへやってきた。

 ガレーフの崖山から少し村よりの場所は、森を円形に開拓してあり、兵舎や露天が展開していた。

 回廊ダンジョンの入り口なのだけど、

「これが裏道・・・ダンジョンなの??」

「そうらしい・・・ですが」

「しょぼいね」

「しょぼいほうが管理しやすいからです」

 僕らが突っ立っていると声がかかる。

軽皮鎧に矢筒、ショートソードを装備しているのは、村長さんだった。

ラザーラの幹ということだろう。

「名をミキ・クラザと言います。最近は警備の編成など変更して万事に備えています」

 この言い方だともうばれていることを確信できたし、なにより、目で話すタイプだ。

 ブルーの瞳に水色の髪。少し黄色の肌がエルフでも東のエルフと呼ばれる血脈を感じさせる。それもばれた理由なんだろうな。

やけに多い。当たり前といえば当たり前だけど。こんなにたくさんいると、各地に散って生きるエルフでも族、集落というものを感じさせる。

「ここは地の利が重要ですから、逆にシンラや他の村では私たちも同じ気持ちでしょう」

「そうですね、失礼しました」

「もしかして、双子のルムのお兄さんですか?」

「ルミエナ様ですね。妹がお世話になったようで」

「兄のほうは礼儀正しいようですね・・・その目、その髪でなければ分かりませんでした」

「あははは!さぁ、ご案内します、ここでは正体を隠されるより、賓客として扱わせてもらいます。そのほうが自然です」

「分かりました」

 なんというかできるお兄さんって感じだ。

 その後、色々説明していただいた。

ダンジョンの名前は全体では回廊ダンジョンといい、俗に言う裏道。この回廊という意味は、エルフの周りのところどころにあること、ダンジョンを通れば、途中途中にある転移の間や魔獣が沸かないセーフポイントがあり、特定のルールに従えば、転移の間からドワーフの国、東のスー、枝の最も東の近くへ出ることが可能だからだそうだ。

 可能性こそ少ないが、多種族の進入ルートになりえるという。

崖を伝ったり、森を行き来するのを警戒しないで済むなら、なぜこんなに兵が駐屯しているのかと疑問にも思ったけど、魔獣の素材の確保や万が一を考えれば氷解した。

各出入り口が別にあり、ここは大樹の表層という名前らしい。

「特にグリフォン対策と聞いたことがあるのですが」

「グリフォン!」

「おや、知りませんでしたか?あのガレーフの高い場所に卵を産み育てるのですよ。餌が目の前の魔獣の森に多いですから。それに北に広がる尾根は生育地域ですから」

「す、すごいぃ・・・見てみたかったなぁ」

「見れますよ、グリフォン隊もいますから、どうですか?」

「「え!?」」

「ルミエナ様まで知らないとは意外ですね」

「し、知りませんよ!いや、知ってはいますが!隊ができるほどではないと聞いています!」

「昔はそうでしたが、今は非常時。隊を編成しているところです。これは秘されたことでしたが、我々、東のエルフの血は調教スキルに長けるものが多く、常時では秘し、非常時の際はひそひそと隊を編成できるようにしているのですよ。といっても、肝心のグリフォンはまだ3体です」

「み、みたいなぁ!ど、どうやって育てるの!」

「ふふ。特別ですよ。子供に大人気でもみだりに近づけないのですから」

「はい!!」

「いいんですかぁ?そんなことでぇ」

「意地悪は無礼ですよ」

「!」

「い、いや・・・」

 鋭いまなざし・・・。険悪という感じではなく、敬虔な眼差し?といったニュアンスが近い。

「いいんですよ!ルミエナさんは従者だから!」

「しかし・・・私たちはあなたのあれを見て・・・」

「堅物なところはルムに似ている・・・」

「ゴホン・・・そうですか。それは失礼を。私たちはどうも血が濃いようですから」

「ぼくは・・・ハーフですよ」

「関係ないでしょう。我々ほど魔獣の恐ろしさを知っているエルフはいません!」

「それは聞き捨てならないな。イルの精鋭を差し置いてよくもぬけぬけと」

「ちょっとルミエナさん!」

「ほうほうぅ・・・やはり勘違いしているようですね。ルムの言うことも分かった気がします。イルは確かに精鋭ぞろい、それでもうちも精鋭だと張り合うつもり・・・とはルムですが。わたしは言いたいね。弱いからこそ恐ろしさはあなた方より経験が深いとね。それを考えれば、従者でしたか?・・・ルムのほうが向いているのではないかな?」

「なんだとぉ・・・」

「お、あれ?!冷静にね!さっきまでいい感じだったよね!」

「お優しい方だ。あなたは美しい。光栄です」

「妹があれなら兄は兄で仰々しいやつだ」

「行儀知らずよりましですがね、近接ばかはこれだから」

「矢ばかりで侮るからイルには負けるのだ、遠吠えだな」

「おおこれはこれは侮っていました。東のエルフは大地のエルフ。空の高さを知っていますが、あなたはシンラで育ちながらそのへんが足りないようですね。かわいそうなことだ」 

 ガシガシ・・・

前を歩く二人の距離がどんどん縮まっている・・・悪い意味で。

肩をぶつけ合い、僕の正面を取り合っている・・・。


お読みいただきありがとうございます。

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